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セルゲイ・グラジエフ:ロシアは人類を保全する為に戦っている(要点)

以下は2022/06/01に RUSSTRAT 研究所と REGNUM 通信社が主催した円卓会議でのセルゲイ・グラジエフ氏(EECの統合及びマクロ経済担当理事/大臣)の講演の要点。何かもう勝手な妄想に耽ってばかりの西側の知識人とは次元の違う、本物の卓越した知識人だと云う感じがする。彼は西側の歴史家が触れたがらない部分にも光を当て、所謂グローバリスト勢力の陰謀にも公然と挑戦している。彼は日本のメディアでは「プーチンのブレーン」と呼ばれることが多いが、彼の高い見識がロシア政府に十分に反映されていないことが私としては残念でならない。
Member of the Board - Minister in charge of Integration and Macroeconomics
Sergey Glazyev: Russia is fighting for the preservation of humanity


 ウクライナでの特別軍事作戦は世界的なハイブリッド戦争であり、様々な世界観が対立する文明戦争であり、善と悪の戦争であり、最終的には人類の生存の為の戦争だ。グラジエフ氏の働く科学アカデミーの科学者グループは2022年のこの戦争を予測しており、対立のピークは2024年と見ている(この予測が行われたのは10年前。現在の軍事作戦どころか2014年のクーデターよりも前)。

 この予測の根拠は2つの世界同時的な革命的事象である:
 1)技術革命(特にAI。50年に1度の変化)
 2)世界経済パターンの変化(1世紀に1度の変化。世界大戦を通じて発生するプロセス):世界経済関係や労使関係制度、社会経済開発を管理するシステム全体の根本的な変化、世界経済の中心の変化。

 技術革命、社会経済革命、社会政治革命が同時発生し共鳴すると、テクノロジーだけではなく発想方法、イデオロギーが変化する。前回の例では、19世紀末には英国が開発の可能性を使い果たし、より高度な管理システムを備えた国々(露、独、墺=ハンガリー、米)がこれに追い付いた。英諜報部は第一次世界大戦を起こし、これにより英国は世界の指導者になったが、たった20年で終焉を迎え(1947年)、大英帝国は崩壊した。

 戦後の新しい世界経済秩序は史上初めて、地球の略全域をカヴァーしたが、これは3つのイデオロギーから成っていた。
 ・科学と産業の連携によるソ連共産党主導の社会主義システム。
 ・多国籍企業とドルの無制限発行に基付くアメリカの膨張システム。
 ・ヨーロッパのファシズム。
 後者2つは共に帝国を形成していた。

 現在の世界経済パターンの移行はソ連の崩壊から始まり、今は米国の崩壊を目にしている。金融危機を乗り越える為にドルを溢れさせた所為で金融システム全体が崩壊してインフレが増大し、米国もEUも持続的な経済は発展が出来ていない。他方中国とインドでは、戦略的中央計画と市場競争を組み合わせた根本的に異なるガヴァナンス・システムが登場した。このプロセスは不可逆的だが、それが明らかになればなる程、旧世界の経済システムが中心に留まり続ける力は弱くなり、より攻撃的になる。

 前世紀の戦争とは異なり、現在の戦争は主に人々の意識を支配する為の戦争だ。最も重要な前線は情報と認知の前線であり、従ってイデオロギーの問題がメインになる。2番目に重要な前線は、米国と欧州連合が依然として支配している財政と金融の前線。そして3番目に漸く戦車、ミサイル、飛行機が来て、これらは実際にはハイブリッド世界大戦の枠組みの中で敗者を罰すること、つまり怖がらせたり、抵抗したいと云う欲求を打ち砕いたりするのが目的だ。

 大英帝国が第一次世界大戦を解き放った様に、アメリカの支配エリートは世界ハイブリッド大戦を開始した。中国に対しては貿易戦争を仕掛け、ロシアに対しては制裁戦争を仕掛けている。

 旧い帝国主義的経済システムと違って、新しい世界経済システムでは、主要国が他のあらゆる国々に自らのモデルを押し付けたりはしない。中国とインドで形作られている社会国家は、法の支配によって統治されている民主主義国家であり、同時にまた主権国家でもある。新しい世界経済秩序では、世界経済の主権が復権されつつあある。この新世界経済秩序の中で、国家は道徳的価値を復権させている。それは人道的な国家であり、公正で、知的で、責任が有る国家であり、イデオロギー的に言えば社会主義国家だ。

  中国とインドの管理モデルは非常に近いものだ。銀行システムに対する国家の管理、生産拡大への無制限の貸付、市場競争の経済効率を目的とした市場の利用。厳格な通貨管理が行われ、資本移転は許可されていない。

 既存のワシントン・コンセンサスと違って、経済の目標はカネを稼ぐことではなく、公共の福祉を高めることだ。だからこその戦略的計画であり、カネはその為の道具に過ぎず、社会正義を確保する為に累進課税と実際的な措置が行われる。福祉国家の要件とは、無料の教育と医療であり、可能な限り最大限に人的資本の再生産を確実にする必要が有る。税制は「夜警国家」の役割だけでなく開発に焦点を当てることになる。価格は、経済的再生産の望ましい割合に基づいて規制される。労使関係では協力が重視され(国営企業とは労働者が所有者でもある企業のことだ)、労働と資本の対立は完全に消滅する。

 「包囲された要塞」の環境で成長し、社会と国家を救う為に動員機構と個人の自由の抑制を必然的にに伴ったソビエト社会主義とは違って、中国とインドにはその様な制約は無く、両国は自国の繁栄に集中出来ているが、それでも今後共産主義ソ連と民主主義アメリカとの間に起こった様な対立が起こるだろう。それは「民主主義の西側」、共産主義の中国、民主主義のインドの間で展開されることになる。問題は我々が何処に居るのかと云うことだ。

 第3のイデオロギーとして、人種差別やナチズム、ナチ西洋の続きが有るが、この人間不信タイプのイデオロギーは今やポストヒューマニズムでその空白を埋めようとしている。電子強制収容所では誰もが隊列を組んで行進し、世界保健機関やその他の世界政府的機関の要請に従うことになる。人々は操作のツール、操作の対象と化し、社会はアトム化されることになる。主要なイデオロギーのベクトルは、人々からあらゆる集団的アイデンティティを剥奪することに向かう。国民的アイデンティティや、性的アンデンティティ、人間としてのアイデンティティ一すら含めて、人間性の抹殺が進行中であり、これは世界の人工寡頭制管理のニーズに応じて振る舞うよう人々に強いるものだ。ポストヒューマン社会を集団的自己破壊にまで導くことを可能にする手段が開発されており、彼等が何等かの毒を持つワクチンを打ち始めたら、既にそうしたメカニズムが存在すると云うことだ。

 我々はこの過渡的な世界に於て周辺的位置を占めている。我々の金融政策は依然としてIMFとワシントン・コンセンサスの規則に従っている。だが制裁措置によって突然資本の流出が止まり、ルーブルは強化されて購買力は1.5倍になった。つまりルーブルの為替レートはこの8年間全て操作されて来たことが明らかになった訳で、これまでの中央銀行の目的は、通貨投機家を豊かにすることだったのだ。だが今や障壁が設けられており、新しい管理システムへの切り替えを余儀無くされている。

 この新管理システムがどうあるべきかは、中国とインドを見れば分かる。それは混合管理システムであり、公共の福祉を改善することを目的としており、国家は戦略的計画に取り組んでいる。我々の見積もりでは、アイドル状態の生産設備を使用し、経済にカネを行き渡らせ、企業が最終的な借り手に対して最大2~3%で融資を受けることが出来る様にすることで、年間少なくとも8%の成長率を達成出来る可能性が有る。従って我々はロシア当局の「マイナス8%」やワシントンの「マイナス10%」と云う予測には賛同しない。外国企業が去って行くなら去らせておいて、我々自身の産業でそれを埋めれば良い。ユーラシア連合での協力、アジアのパートナー諸国との関係を発展させれば良い。

 カネがそれ自体目的ではなく生産の為の道具となる様な経済発展に対処すれば、今年は全く景気後退無しに進むことが出来る。それどころか、今回の危機とヨーロッパの競争企業の離脱を経済ブームに変えることが出来る。我々は公共の福祉を高めるという目標を実行する必要が有るが、それは単純な現金注入ではなく、新しい産業、新しい雇用の創出によって行われなければならない。大統領はこの件について何度も発言してはいるが、実際にはCOVID-19の小さな規制解除の継続しか行われてはいない。輸入代替投資を増やし、長期的な開発プログラムを実施する本当の機会は訪れていない。

 未来のイメージは一目瞭然だ。アメリカのハイブリッド戦争は恐らく今世紀中に終わりを告げるだろうが、彼等はマッキンダーからブレジンスキーに至るまで、アングロサクソンの地政学に固有の反ロシア主義の所為でそれが認識出来ていない。今回の対立は、西側世界のイデオロギーと経済の中核であるアメリカとイギリスの支配階級のエリートの遺伝的反ロシア主義、「ロシアを解体する」と云う考えの所為で避けられないものだった。彼等ははっきりと我々を抹消しようとしており、誤解の余地無くそれを公言している。これを過小評価してはならない。

 彼等はロシアが世界支配の鍵であると考えている。世界を支配するにはユーラシアを支配する必要が有り、その為にはロシアを攻略し、分裂させ、破壊する必要が有る。次にイランを破壊し、中国の隔離することで、彼等は支配と覇権を維持出来ると考えている。だが彼等は戦争に負けるだろう。彼等は世界通貨の発行と云う切り札を既に使い果たし、政治的、イデオロギー的、経済的に、最早誰も彼等を信じていない。ドルからの大脱出が始まった。西側の金融経済システムを構成する巨大な金融バブルの崩壊はそう遠くない。

 我々はユーラシアの統合において国際法を復権させ、自主性、主権の尊重、相互利益、透明等の諸原則を厳格に遵守しようとしている。言い換えれば、我々は新世界秩序の魅力的なイメージを作り出そうとしている。だがこれはより速い経済成長が無ければ説得力を持たない。大ユーラシア・パートナーシップのリーダーになる為には高度な経済発展を確保する必要が有るが、その為には共通の大義や共通の善のイデオロギーが必要だ。その答えが社会主義であり、即ち国家の主な意味は社会への奉仕である、と云う思想だ。これが無ければ新しい生き方は不可能だが、これは既に普及しつつある。社会主義は、東南アジアの世界経済システムの中核である支配的イデオロギーとして再び復活する筈だ。

 西側の新しい技術秩序は、ポストヒューマン文明への移行を可能にすると云う意味で、全人類に挑戦している。寡頭制の世界政府による支配を許せば、人類はお終いだ。我々はハイブリッド戦争の最前線に居るので、西側との戦いは人類の運命を賭けて行われていると断言することが出来る。今の西側には未来のイメージが無い。普遍的なチップ化、人工知能と人間性の抹殺、LGBTの人々、家族の破壊、あらゆる形態の人間のアイデンティティの抹消———これは未来ではなく、死のイメージだ。

 我々のイデオロギーは伝統的な価値観に基付くべきだ。キリスト教社会主義、イスラム社会主義、仏教社会主義———私はこれを社会的に保守的な統合と呼ぶ。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
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