生態文明
★「エネルギー・気候・環境センター」の所長であり、ハーバート・アンド・ジョイス・モーガン・フェローであるダイアナ・フルヒトゴット・ロス氏の記事の抄訳。中国は脱酸素化の道を進むが、慎重に段階的に行く。米国は実現不可能な道を無理矢理突き進む。中国は西洋から、イデオロギーによって動いている国だと描写されることが多いが、脱炭素化については中国は寧ろ健全なプラグマティズムによって軌道修正を図っており、イデオロギーによって破滅的な道を歩んでいるのは米国の方だ。
中国はパリ協定を破棄。米国の努力は辛く無意味なものに(抄訳)
中国の生態文明構想の現状について、2022年末の時点での纏めとしてこの記事は非常によく纏まっている。だがグリーン・ファイナンス(自然を金融化しよう!)の問題点については全く論じられておらず、中国当局がこの問題に今後どの様に取り組むつもりなのか、そもそもこの問題を把握しているのかは不明。これは天然資源が豊富なグローバルサウスに一帯一路構想を展開して行く上で必ずいざこざの原因になると思うので、今後の展開がはっきり言って心配だ。
On the Development of China’s Environmental Policies Towards an Ecological Civilization
2022/07/18、世界経済フォーラムが開催する「ニュー・チャンピオン・ダイアローグ2022」のパネルで話し合われたのは、「自然融資の力を解き放つ」こと。「中国の最新の5ヵ年計画では、8,800億人民元を生態系の保護と回復の資金に割り当て、民間部門と市民社会からの多様な投資メカニズムをこれらの取り組みを強化するよう強く奨励している。」つまり「持続可能性」の名目の下、生態系そのものが投資対象となり、無責任な投機家達が弄ぶ金融商品と化すと云うことだ。「グリーン・ファイナンス」とはつまりは「地球環境を民営化せよ」と云う話であって、本物の環境主義とは真逆の結果を齎す可能性が有る。中国経済に於て無責任な金融経済の力学がどれだけ働いているのか、十分に警戒すべきだろう。
Unlocking the Power of Nature Financing
IEAは「太陽光は今や歴史上最も安い電力である」と宣言しているが、太陽光発電開発の最先端を走っている中国は、発展途上諸国は貧困削減努力の為に炭素排出量について優遇措置を受けるべきだと主張している。太陽光発電が本当に最も安い発電方法なら、発展途上諸国は石炭やガスを諦めて太陽光発電開発に傾注すべきだと云うことになるが、気候変動への懸念を表明している太平洋諸島ですら、中国の見解に同意している。

China Demands Preferential Treatment on Climate Change
中国はGDPの単位あたりの炭素排出量を2005年のレヴェルから半分に削減(50.3%減)。石炭から供給される総エネルギー消費量は、2005年の72.4%から2021年には56%に減少。再生可能エネルギーの設備容量は10.6億キロワットに達し、国の総エネルギー生産量の44.8%で、風力発電と太陽光発電は共に3億キロワット時に達し、共に世界一。中国の大気中の有害粒子の量は2013年から2020年までに40%減少した。中国は炭素削減グリーン経済路線のトップを走っている。
現在の再生可能エネルギー技術はとても現実のニーズに耐え得るものではなく、環境への負荷や経済的ダメージも大きいので到底持続可能とは言い兼ねるものだが、路線を継続した上で多少なりとも改善の可能性が期待出来るとしたら、大規模なR&Dによって技術の質を飛躍的に高めることだ。R&Dより自社株買いに多くの資金を投入している様な西側企業や、新自由主義&新植民地主義路線で大企業の目先の利益ばかりを優先させる西側政府にはこれは期待出来そうもないが、中国はブレイクスルーの起こる可能性が最も高い国だ。資源の罠等は一帯一路構想が資源豊富なグローバルサウスに展開して行く上で必ず直面する課題だと思うので、中国がこれからどう舵取りして軌道修正して行けるかは要注目だと思う。

China’s air becomes cleaner now, as carbon dioxide emissions per unit of GDP fall by half from 2005
再生可能エネルギーの最先端を行く中国では、クリーンエネルギーの浪費が問題になっている。内モンゴルの風力タービン発電の約12%、青海省の太陽光発電の10%が消費量が追い付かず無駄になっている。日当たりが良く吹き曝しだが人口が疎らな甘粛省では風力と太陽光発電の利用率は、2021年の97%近くから今年は90%を下回る可能性が有る。中国は産業を再エネに頼る様な自殺行為はしていないが再エネ市場の拡大が急過ぎる。実用化に耐える為には効率向上や電力貯蔵技術のR&D等が必要だろうが、2017年に採用された割当て制(グラフ参照)の様な半強制的な手段はそう何度も使える様なものだとも思えない。

China’s Renewable Energy Fleet Is Growing Too Fast for Its Grid
中国の生態文明構想についての私のTwitterスレッド。
川流桃桜@UnmasktheEmpire @kawamomotwitt
中国はパリ協定を破棄。米国の努力は辛く無意味なものに(抄訳)
中国の生態文明構想の現状について、2022年末の時点での纏めとしてこの記事は非常によく纏まっている。だがグリーン・ファイナンス(自然を金融化しよう!)の問題点については全く論じられておらず、中国当局がこの問題に今後どの様に取り組むつもりなのか、そもそもこの問題を把握しているのかは不明。これは天然資源が豊富なグローバルサウスに一帯一路構想を展開して行く上で必ずいざこざの原因になると思うので、今後の展開がはっきり言って心配だ。
On the Development of China’s Environmental Policies Towards an Ecological Civilization
2022/07/18、世界経済フォーラムが開催する「ニュー・チャンピオン・ダイアローグ2022」のパネルで話し合われたのは、「自然融資の力を解き放つ」こと。「中国の最新の5ヵ年計画では、8,800億人民元を生態系の保護と回復の資金に割り当て、民間部門と市民社会からの多様な投資メカニズムをこれらの取り組みを強化するよう強く奨励している。」つまり「持続可能性」の名目の下、生態系そのものが投資対象となり、無責任な投機家達が弄ぶ金融商品と化すと云うことだ。「グリーン・ファイナンス」とはつまりは「地球環境を民営化せよ」と云う話であって、本物の環境主義とは真逆の結果を齎す可能性が有る。中国経済に於て無責任な金融経済の力学がどれだけ働いているのか、十分に警戒すべきだろう。
Unlocking the Power of Nature Financing
IEAは「太陽光は今や歴史上最も安い電力である」と宣言しているが、太陽光発電開発の最先端を走っている中国は、発展途上諸国は貧困削減努力の為に炭素排出量について優遇措置を受けるべきだと主張している。太陽光発電が本当に最も安い発電方法なら、発展途上諸国は石炭やガスを諦めて太陽光発電開発に傾注すべきだと云うことになるが、気候変動への懸念を表明している太平洋諸島ですら、中国の見解に同意している。

China Demands Preferential Treatment on Climate Change
中国はGDPの単位あたりの炭素排出量を2005年のレヴェルから半分に削減(50.3%減)。石炭から供給される総エネルギー消費量は、2005年の72.4%から2021年には56%に減少。再生可能エネルギーの設備容量は10.6億キロワットに達し、国の総エネルギー生産量の44.8%で、風力発電と太陽光発電は共に3億キロワット時に達し、共に世界一。中国の大気中の有害粒子の量は2013年から2020年までに40%減少した。中国は炭素削減グリーン経済路線のトップを走っている。
現在の再生可能エネルギー技術はとても現実のニーズに耐え得るものではなく、環境への負荷や経済的ダメージも大きいので到底持続可能とは言い兼ねるものだが、路線を継続した上で多少なりとも改善の可能性が期待出来るとしたら、大規模なR&Dによって技術の質を飛躍的に高めることだ。R&Dより自社株買いに多くの資金を投入している様な西側企業や、新自由主義&新植民地主義路線で大企業の目先の利益ばかりを優先させる西側政府にはこれは期待出来そうもないが、中国はブレイクスルーの起こる可能性が最も高い国だ。資源の罠等は一帯一路構想が資源豊富なグローバルサウスに展開して行く上で必ず直面する課題だと思うので、中国がこれからどう舵取りして軌道修正して行けるかは要注目だと思う。

China’s air becomes cleaner now, as carbon dioxide emissions per unit of GDP fall by half from 2005
再生可能エネルギーの最先端を行く中国では、クリーンエネルギーの浪費が問題になっている。内モンゴルの風力タービン発電の約12%、青海省の太陽光発電の10%が消費量が追い付かず無駄になっている。日当たりが良く吹き曝しだが人口が疎らな甘粛省では風力と太陽光発電の利用率は、2021年の97%近くから今年は90%を下回る可能性が有る。中国は産業を再エネに頼る様な自殺行為はしていないが再エネ市場の拡大が急過ぎる。実用化に耐える為には効率向上や電力貯蔵技術のR&D等が必要だろうが、2017年に採用された割当て制(グラフ参照)の様な半強制的な手段はそう何度も使える様なものだとも思えない。

China’s Renewable Energy Fleet Is Growing Too Fast for Its Grid
中国の生態文明構想についての私のTwitterスレッド。
川流桃桜@UnmasktheEmpire @kawamomotwitt
- 関連記事
-
-
「陰謀論だ!」? 2023/09/11
-
COVID-19懐疑論 2023/09/11
-
生態文明 2023/09/11
-
偽の環境主義運動 2023/09/11
-
マリ 2023/09/11
-
スポンサーサイト