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ファシズム:我等が共通の敵(全訳)

以下はユーゴやルワンダ等数多くの戦争犯罪事件を手掛けたことで知られる国際刑事弁護士クリストファー・ブラック氏の Fascism: Our Common Enemy の全訳です。深く頷ける部分が有ったので訳してみました。



 行動には原因があります。それが哲学と、世界の在り方を理解する上での基本点です。ウクライナでのロシアの行動には原因があり、それはそれらの行動を必要としました。偏見を持たない観察者であれば、それらの原因が何であるか、そして何故ロシアの特殊軍事作戦が必要な結果であったかを知っています。ロシアは数ヶ月前にその原因と、それに対する行動が何になるかを明確に示しました。それでも、「西側/西洋(the West)」と呼ばれるもの、即ちNATO同盟を構成する国々に住んでいる場合、原因は人々から隠されており、ロシアの行動は謂れのない「悪」として描かれています。

 NATO諸政府とそのマスメディア内の下女達が用いている、世論と感情を操作する為のこうした事実の抑圧、歪曲、集中的なプロパガンダにもまた、特定するのが難しくない原因がありますが、それは16世紀に於けるヨーロッパの技術的な、従って軍事的な力の拡大の帰結として発生した、植民地主義の歴史の深部にルーツを持っています。それらの力は搾取すべき市場と資源、盗むべき富、命令すべき奴隷を探して、船で長距離を移動することを可能にしました。

 世界に優越する存在としての自己中心的で無知なヨーロッパ人の自己像は、世界についての無知とカトリック教会の教義から発生し、その後集団としての社会ではなく個人こそを重視し、万物や自然との一体感を否定するプロテスタントによって促進されましたが、それは他者を外部の存在、自分達とは違う存在であって、曾て彼等が地球全体を利用し搾取した様に、利用し搾取すべきモノだと見做す社会を作り上げました。

 メキシコの征服とそこに居た数百万人の虐殺に始まって、南北中央アメリカ、アフリカ、インド、アジア、オーストラリア、そしてあらゆる海の島々の人々の隷属と絶滅に至るまで、急速に広がったヨーロッパの破壊行為は、1500年から1770年代にかけて、最初はスペインとポルトガルが、次にイギリスとフランスが、オランダが、それから他の国々が主導しましたが、それは運悪く彼等が欲しがるものを持っていた人々の上に、一群の悲惨となって降り注ぎました。

 イギリスの植民地プロジェクトは、個人を至上視し富を人生の目標とするイギリスの入植者によって建国された、アメリカ合衆国の創設に繋がりました。彼等は人の命を蓄財の為の道具か、排除すべき障害物に過ぎないと見ていました。この社会は、創設されるや否や直ちに、大陸全体で征服と殺戮の戦争を開始し、19世紀にはカナダ、次にメキシコ、そして他の地域の諸国を支配下に置こうとしました。

 植民され得る世界の殆どが植民地支配下に置かれ、イギリス、ドイツ、フランス、ベルギーがアフリカからインドシナに更に多くの植民地を獲得した後、米国はライヴァルの帝国主義勢力に手向かいました。最初の相手はスペインで、その植民地は1898年の米西戦争で押収されましたが、これはアメリカの戦争が通常そうである様に、もっともらしい口実で始められました。

 20世紀が幕を開けた時のアメリカ合衆国とヨーロッパ植民地勢力との競争圧力が引き起こした1914~1918年の世界大戦で、西洋の帝国主義は頂点に達しました。当時合衆国が植民地-帝国主義的勢力の最大勢力として台頭する一方で、イギリスがドイツのアフリカ植民地を乗っ取ったにも関わらず、イギリスとフランスは破産しました。

 1930年代には、地球の大部分がこれらの大国によって植民地化され、日本がアジアの植民地大国として台頭し、イタリアがアフリカの一部の支配を取り戻そうとし、そしてその全てが社会主義という新しい政治的現実に直面しなければなりませんでした。西洋の資本がロシアやアジア全土を搾取する能力を阻むソヴィエト連邦が創設され、世界的不況が始まると社会的な不満が高まったのです。

 過剰生産によって市場は飽和し、生産と流通は急落し、共産主義は労働者と抑圧された者の擁護者となり、あらゆる所で資本の支配を脅かしました。暴力的な反応が始まりました。西洋諸国の産業金融資本にとって、戦争は彼等のジレンマから抜け出す唯一の方法であり、彼等の歪んだ論理によれば、再建の為には破壊が必要であり、劣化した社会を救うための数百万人を大量殺戮せねばならなかったのです。ファシズムは不満から生まれたものですが、それは人民の進歩主義的勢力に対抗するよう不満を誘導する手段であって、資本の支援を受け、その目的を達成する為であればあらゆる暴力が容認されました。道徳は内面から来るものです。行動は性格に従うものです。ひっくるめた西洋全体、その社会全体には道徳心がなく、将来もないだろうことが、1930年代と1940年代に明らかになりました。彼等は自分自身にしか関心がなく、自らの意志の力を前進させる為であればどんなこともでやってのけるのです。

 支配階級を支え、労働者が彼等の主人に反抗するのを防ぐ為に植民地の財産から奪われた莫大な富については、十分に文書化されています。植民地の財産は彼等の富と力を維持する為には不可欠でした。それらを失うことは災厄であることが繰り返し証明されました。スペインは植民地を失いました。イギリスはインドを失った直後に帝国が崩壊しました。フランスは1940年代に世界の人々の自由の為に戦ったと主張した後でさえ、帝国を維持しようと冷酷な戦争を戦いました。ですが御存知の通り、1941年にナチスがソ連に侵攻した時、フランスはSS内に師団を持っていました。

 30年代の帝国勢力の支配階級は社会主義の信用失墜キャンペーンを開始し、戦利品を分け合う彼等選ばれた仲間内で世界を切り分けるべく、幾つもの計画を立てました。1930年代にイタリア、次にドイツ、フランス、スペイン、そして米国と英国でファシズムが台頭したのは、彼等が世界支配を確かなものとする為にあらゆる手段を用いると決めたからです。ムッソリーニ、ヒトラー、フランコは、ヨーロッパの産業資本と金融資本から支援を受けました。日本はロシアと中国を攻撃するように奨励されました。ファシズムは、崩壊に瀕した西洋がそれに対して自らを救おうとする捨て身で無益な試みであり、それは今日まで続いています。

 少し回りくどい話をしてしまった様ですが、私が言いたいのは、今日NATOの攻撃から自らを守っている、そして2014年のNATOのクーデターによってウクライナで権力を持つに至ったファシストからドンバス共和国の人々を守っているロシアに対して向けられている、憎悪、偏見、プロパガンダは、何世紀も遡る西洋の歴史の延長線上にあるということです。それは挙げればきりのない地域戦争とふたつの世界大戦の破壊へと至った軌跡であり、それは今また次の大戦を起こそうとしています。

 戦争への道は西洋にとっては行き止まりです。それはどちらの大戦でも、彼等の状況を解決も緩和もしませんでした。そして主に赤軍の働きによる1945年のファシスト勢力の敗北は、西洋に於けるファシズムを終わらせはしませんでした。それは単に水面下に潜っただけで、暫くは流行しませんでしたが、カナダ、米国、イギリス、フランス、そしてドイツ、オーストラリア、日本、ラテンアメリカの暗い隅に身を潜めていました。
 
 西洋は数十年の間、自らを「民主主義的」と偽って来ましたが、実際はその間諸国の主権を弱体化させ、人民の自決権を否定し、以前の彼等の植民地の財産を軛に繋ぎ続ける為にあらゆることをやってのけ、そして支配を維持する為に自らの市民達を欺いたのです。ですが今や、西洋は経済的に凋落しつつあります。それには多くの要因があります。例えば度重なる戦争や窃盗による安価なエネルギー資源の喪失や自国民の貧困化、植民地に貶めることの出来ない経済大国としての新国家の台頭、ヴェトナム戦争の間に起こった米国の破産と、それを受けてカネを印刷するだけで債務を払えるように金本位制を放棄したこと、その結果として私達は今インフレ・スパイラルに直面している訳ですが、西洋の金融産業エリート層は今一度必死で自らを救おうとしています。彼等はその性格に忠実に従って、ファシズムと軍事主義の勢力を公然と解き放っています。

 多くのコメンテーターが、少なくとも2014年以来続いているウクライナの戦争は、米国とその同盟諸国によるロシア弱体化の試みであると主張しています。しかし崩壊を止めようとする必死の試みであることは本当ですが、それは寧ろ崩壊を加速させています。それはロシアを弱体化させていません。中国に対する圧力が中国を弱体化させていないのと同じです。弱く、無力で、道徳的に破産し、知性を持った指導力が欠如しているのが露になって来ているのは西洋の方です。、

 それが明らかになればなるほど、彼等はより捨て身になり、向けられる憎悪と敵意はより激しくなります。彼等が資源と市場に関してロシアを屈服させ、それによって世界を支配しようとしていることには疑念の余地がありません。ヒトラーはその様な夢を抱いていました。西洋は彼を支援しました。彼等は今ウクライナや自国にいるあらゆるリトル・ヒトラー達を支援していますが、彼等の末路は同じです。

 ファシズムの新しい波は、進歩と道徳的品位の岩を乗り越えることは出来ません。ロシアの人々の、中国の、キューバの、シリアの、ヴェトナム、ヴェネズエラ、イラン、インドと南アフリカの、エジプトとアルジェリアの、中東とラテンアメリカ全体の、中東とラテンアメリカ全体の、アフリカの人々の意志が立ちはだかっています。植民地主義と帝国主義に倦み疲れ、世界共通の課題に立ち向かう為に立ち上がった今、彼等は西洋の時代は最早終わったと見ています。西洋を支配しているファシスト達を打倒する為の闘いは困難を伴い、私達は共に破壊のリスクに直面することでしょう。ですが彼等は成功しません。彼等は消耗戦争でロシアをすっかり出血させていると主張していますが、違います。彼等の決定と行動によってすっかり出血しているのは、米国とその同盟諸国自身です。これが彼等を危険にする可能性があります。ファシストは常に危険だからです。彼等は阻止されねばなりません。彼等は我等が共通の敵です。ロシアが彼等を阻止します。私達はその闘いを支援せねばなりません。私達自身の未来と幸福がそれにかかっています。


ラフマニノフ:「晩 祷」(徹夜祷)
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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