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実質ゼロ経済/炭素帝国主義

バイデン米大統領は「米国で化石燃料を終わらせる」と、石油産業の終焉を宣言し、クリーンで、再生可能で、持続可能なエネルギー源を推進している。だがそれらはタダで実現出来る訳ではない。例えば洋上風力エネルギー・プログラムはその第1段階だけでも、11万トンの再生不可能な銅に加えて、数百万トンのコバルト、リチウム、ニッケル、アルミニウム、鉄、マンガン、希土類元素、プラチナ、プラスチック、コンクリート等を必要とする。それには前例の無い規模の採掘が必要で、それら全体のコストや環境に与える負荷はリスク評価には含まれていない。風はタダだし再生可能だが、実用的な風力発電網はそうではない。
Saving America from Planet-Threatening Fossil Fuels

大気汚染による様々な被害を改善する手段として、WEFが提案するのは例えば自動車交通の規制や化石燃料の使用中止。SDGs詐欺は部分的には言っていることは全くその通りなのでタチが悪い。
This Is Your Brain On Air Pollution

2022/11/04、世界経済フォーラムのCM「1.5℃の地球温暖化制限を軌道に乗せる為の7つの重要な行動」:
 1)脱石炭を6倍速くする:年に平均サイズの石炭発電所を925閉鎖する。
 2)公共交通システムを6倍速く拡大する:世界の炭素排出量の多い都市をターゲットに。
 3)セメント製造からのCO2排出を10倍速く削減する。
 4)脱森林化率を2.5倍速く削減する。
 5)より持続可能で植物ベースの食事へ5倍速く移行する:これは先進諸国の人々は1人当たり1週間で2個以上のバーガーを食べないのに相当する。
 6)商業建築に於ける建設エネルギー効率を5倍速く改善する。住宅建築に関しては7倍。
 7)化石燃料への補助金を現在の率の5倍削減する:公的資金を年毎に690億ドル削減する。

 つまりどうあっても現行の産業を破壊したい様だ。
7 Crucial Actions To Get On Track For A 1.5°c Global Warming Limit

ニュージーランドは2025年から家畜群から発生するメタンガスと亜酸化窒素ガスの推定に基付いて農家に課税することを計画しているが、2022/10/20、農家のトラクター群がこれに抗議する為に街頭を練り歩いた。参加者達は追加費用によって自分達が倒産するだけでなく、より効率の悪い他国の農家がその穴埋めをすることで、温室効果ガスの排出を削減するどころか増加させるだろうと主張している。例えば環境負荷の少ない有機的畜産業を奨励して環境負荷の高い大規模工業的畜産業に課税するなどと云う考えは、アーダーン政権は抱いていない様だが、まぁ当然だろう、そんなことをしたら大企業が儲からないし、そうなれば政治献金も貰えなくなる。
Farmers protest ‘cow fart tax’

2022/09/26の報道に拠ると、元イングランド銀行総裁マーク・カーニーが率いる「実質ゼロの為のグラスゴー金融同盟(Glasgow Financial Alliance for Net Zero/GFANZ)」から初の離脱者が出た。オーストラリアの年金基金 Cbus と年金事務所 Bundespensionskasse で、正確にはGFANZAの一部である「実質ゼロ資産所有者同盟(Net Zero Asset Owner Alliance)」から脱退した。脱炭素化に対する厳格な要件により、「法的に脆弱になる」可能性が懸念されているらしい。
Former Bank of England Governor’s Net Zero Asset Alliance Crumbling

★元イングランド銀行総裁マーク・カーニーに焦点を当て、炭素を口実に金融再編を図るグリーン・ファイナンスがエコ・ファシズムと呼ぶべきものに他ならないことを解説した記事の要点。
エコ・ファシストのマーク・カーニーはグリーン・ファイナンスを通じて世界をコントロールしようとしている(要点)

米軍やCIAの内情に詳しいフレッチャー・プラウティ氏による、「何故石油は化石燃料と呼ばれるのか」の解説。ロックフェラーは石油の価格を釣り上げる為に、「希少性の神話」を作り上げた。1972年にジュネーヴの科学者会議で「有機物とは何か」が話し合われた時、水素・酸素・炭素によって構成されるもの(通常は生きたもの)が有機物だとされた。ロックフェラーはその時「石油は水素・酸素・炭素から成っているので、生きたものの残骸に違い無い」と云う見解を利用して、会議終了後に「化石燃料は生きたものの残渣である」と定義した。ここから「化石燃料」と云う言葉が生まれた。但し化石は地下16,000フィートまででしか発見されていないが、石油は地下30,000フィート前後の深くから汲み上げられているので、石油は実際には「化石」ではない。石油は地球で2番目に豊富な液体だ。所謂「エネルギー危機」の最中に政府が4年間主催していた「エネルギー・セミナー」に参加した時には政府や諜報部高官等のお歴々がズラリと出席していたが、その時彼等に「化石燃料」のプロパガンダが吹き込まれた。そして(ロックフェラー人脈の)キッシンジャーが言っていたのは「世界の石油価格を作り出す」ことだった。
Fletcher Prouty Explains Invention and Use of Term "Fossil Fuels"


「温室効果ガスの排出を止めなければ!」と云う物語には、「現行の農業形態は問題だ!」と云う主張も含まれる。二酸化炭素は地球の生態系に偏在するので、「気候変動を止めたければ生態系全体を適切に管理しなければ!」と云う話に繋がる。
Agriculture, Climate Change and Carbon Sequestration

天候に依存する「再生可能エネルギー」の欧州での100年間の生産性記録グラフ。過去10年間の再エネ設備の公称設備定格で年間発電量を割ったもの。
Weather-Dependent “Renewables”
 こちらはEIA(米エネルギー情報局)が出した資本&長期コスト比較。米国のガス発電と欧州の再エネ発電を比べており、再エネは4〜15倍のコストが掛かると結論付けている。但し天然ガスの欧州価格は米国のフラッキング技術を使ったガスの約4倍。
 European price for Natural gas fuel
A Few Graphs Say It All for Weather-Dependent “Renewables”

メタンは二酸化炭素の84倍の温室効果を持つ強力な温暖化効果ガスで、最大の発生源は湿地だが、国連の報告書『家畜の長い影』は、メタンガス排出の18%は家畜からのものだと主張している。クリーン エネルギー研究財団がこれに対して提示している解決策は、GMOの利用。例えば陸上植物を遺伝子操作することでメタン・モノオキシゲナーゼ (MMO)酵素を合成させ(これを合成することに進化上の利点は無い) 大気中のメタン濃度を削減し、下がり過ぎないように自殺遺伝子も組み込んでGMOが増え過ぎないよう間引きする。或いは、大気中の窒素固定能力が高く屢々水田で栽培されているアゾラ植物(原始的なシダ植物)の中に生息するアナベナ菌を形質転換し、アゾラにGMOシアノバクテリアを感染させる。この遺伝子組み換えバクテリアはアゾラに完全に依存しているので、淡水路や海で勝手に増殖することは無い。「空気中からメタンを除去することは、空気中から二酸化炭素を除去する機械よりもはるかに低コストで地球を冷やす有益なビジネスになり得る」らしい。遺伝子組み換えは地球に優しく、且つ凄く儲かる商売だと云う訳だ。

Genetically Engineered Plants To Reduce Atmospheric Methane and Global Warming

10分で解る、「プラスチックのリサイクル」の嘘。そもそもプラスチックの大量消費を流行らせたのがプラスチック業界なら、草の根の環境運動を乗っ取って、実際には殆ど無意味でしかない(環境保護には殆ど役に立たず、リサイクル業者を儲けさせることにしかならない)プラスチックのリサイクルを流行らせたのもプラスチック業界。プラスチックを分別すると何か環境にいいことをしている様な気分にはなれるだろうが、実際には企業利益に貢献しているだけだ(リサイクルと破棄の過程で余計なエネルギーを消費する分、環境には寧ろ負荷が高いかも知れない)。本当の環境主義に目覚めたかったら、先ずこのマッチポンプのカラクリに気が付いて、プラスチックの大量消費自体を再考するところまで考える必要が有るだろう。
The great recycling LIE (what really happens to plastic)


西洋のエネルギー帝国主義を弾劾する記事。欧米発のグリーン・ロビーはアフリカ諸国の原発や化石燃料による発電に対して圧力を掛けているが、メルカトル図法では欧州が実際以上に大きく見えるので、多くの人々がアフリカ大陸の巨大さを理解していない(下図参照)。アフリカのエネルギー・グリッドは西欧のそれとは全く異なる。電力線を構成する金属の抵抗特性によって、電力線が長くなればなる程、利用可能な電力は減る。西欧では水力発電は理に適っているが、アフリカではダムは都市部から数千km離れているので、極めて非効率的。南アフリカではアフリカで唯一の原発が閉鎖された為、電力の80%は石炭で賄っているが、これをグリーン・エネルギーに置き換えることは非現実的で、太陽光や風力は原発や石炭によるベースロード電源のバックアップを必要とする。再生可能エネルギーでは工業経済を支えることは出来ないが、ハイテク部品、トラクター、機械工具、家庭用品、パン等を製造することが出来なければ、サハラ以南のアフリカ経済が生産的な雇用を提供し、経済成長を可能にすることによって貧困を削減することは出来なくなる。

 南アフリカは現在物的経済への投資が不足していて悲惨な経済状況に在るが、この儘では2030年までに既存の製造・産業プラントは電力不足により閉鎖に直面することになる。電力不足の所為で新しい製造工場に投資するインセンティヴも無い。電気はあらゆる経済発展の基盤なので、エネルギー貧困は貧困を持続させる。サハラ以南に住むアフリカの10億人は、世界の累積炭素排出量に1%未満しか貢献しておらず、エネルギー消費量は西欧に比べて遙かに低い。エネルギー消費量の多さと生活水準の高さは比例するが、グリーン・エネルギーをメインにしようとすると、アフリカ大陸には貧困が継続する未来が待っている(「原子力技術はクリーンエネルギーのあらゆる要件を満たしている」と云うこの著者の主張に私は同意はしないけれども、原発利用問題を考える上でグローバルサウスの貧困削減の課題は避けてはいけないだろう)。

Putting Coal Into the African Perspective

長周新聞の記事。原発を止めても電力の供給不足は起こらなかったのに、何故今になって電力不足が叫ばれているのか?

 「昨今の「電力不足」は、実際に電力供給能力がないのではなく、「電力自由化」や「再エネ推進」といった政府の政策に根源がある。」

 「電力自由化によって、日本社会における電力の安定供給に責任を負う主体が存在しなくなった。政府がまずその責任を放棄したことが最大の犯罪だ。」

 自由市場は社会全体に対しての責任を果たさない。それをやるのは政府(公共セクター)の仕事であって、その為には資本主義や新自由主義ではなく社会主義路線を堅持しなければならない。

なぜ電力不足が起きているのか? 「儲からぬ」と火力を休廃止 再エネに必須なバックアップ電源なし

新しいマッキンゼー報告書に拠ると、実質ゼロ経済への移行は年間約3.5兆ドルの更なる出費を必要とする。こんなのまともに主張したら一般庶民は誰も支持する訳が無いので、「気候変動は恐ろしい。放置したら大変な経済的損失を被るぞ」とか宣伝している訳である。
The Cost Of Net-Zero Is In The Trillions, According To New McKinsey Report

「一言で言えば、COP26はグローバルサウスの国々やコミュニティに対する死刑執行令状です。」

 「実質ゼロ」のトリックは温暖化ガス排出量の少ない貧しい国々に最も負担を強いることになる。変えるべきはこの資本主義=新植民地主義システムであって気候ではない。
COP26: Middle East climate activists slam deal as 'epic' greenwashing failure

発展途上諸国は先進諸国にもっと多額のカネを出せと要求している。低炭素経済路線は彼等に「経済発展するな」と言っているも同然だが、実際、更なる搾取無くしてクリーンエネルギーへの移行は先ず不可能だ。

To Strike a Climate Deal, Poor Nations Say They Need Trillions From Rich Ones - The Wall Street Journal

2021年5月の国際エネルギー機関の報告書:「クリーンなエネルギーへの移行」を実現するには、これまで以上に膨大な量の鉱物資源を必要とする。その為には貧しい国々に経済的負担を掛けねばならず、当然環境破壊も進む。



 「クリーン」エネルギー形態への移行を実現する為に必要な鉱物資源の産出と消費は国によってバラつきが見られる。従って地政学的な勢力図の再編が求められることになる(その為には搾取の為の仕組みを整えなければならない。例:チリ、インドネシア、コンゴ)。


The Role of Critical World Energy Outlook Special Report Minerals in Clean Energy Transitions

COP26は「炭素帝国主義」とでも呼ぶべきものの祭典だ。「クリーンで持続可能な再生可能エネルギー」はタダでは実現出来ない。それは主にグローバルサウスの発展を阻害し搾取を拡大することで成立する。貧しい国々はエネルギー不足、貧困、失業、死に直面することになる。
Lethal carbon-imperialism in Glasgow and DC

ロックフェラー財団は2017年に「惑星の健康に焦点を当てた経済評議会」を設立。「自然のシステムが損なわれると、世界中の個人、家族、コミュニティの健康も損なわれる」のだそうだ。肉体の支配と環境の支配はリンクしている。
The Rockefeller Foundation Launches Economic Council Focused on Planetary Health
 ロックフェラー財団が2015年にランセットに発表した報告書「人新世の時代における人間の健康の保護」。SDGs詐欺を推進する上で必要な世界観を「地球の健康」と云う概念で説明している。
 ・「地球の健康を促進する為には「自然と経済が誤って分離させられないようにする」ことが第一に重要。自然は何よりも先ず資本であると云うことだ。
 ・「予防的アプローチを通じて病気の環境的・社会的ルーツに取り組むことに焦点を当て、健康への治癒的、生物医学的、分子的アプローチを補完する。」つまり自然療法等はお呼びでない。基本は対症療法や生物工学。
 ・「長期間に亘って規定の人口の厳密な健康・社会経済・環境データを収集する統合された監視システムを構築する。これにより新たな感染症の流行や栄養状態や非感染性疾患の負担の変化を検出し………政策とテクノロジーの効果を評価する。」
 ・「SDGsの機会を利用し、惑星の健康に関連する指標を統合的に監視し、国内及び国際的な進捗状況を報告する。」
Safeguarding human health in the Anthropocene epoch: report of The Rockefeller Foundation–Lancet Commission on planetary health

偽善的なパリ協定の立役者クリスティアナ・フィゲレスが2017年に開催した「ミッション2020」の報告書に拠れば、気候変動を遅らせる為の「実質ゼロ」の取り組みは、2050年までに19兆ドルの利益を生み出す可能性がある。これは超巨大ビジネスなのだ。
The importance of being optimistic – Christiana Figueres leads the charge to limit global warming to 1.5°C
 「ミッション2020」が掲げる、「実質ゼロ」を実現する為に必要な6つの計画。エネルギー、インフラ、輸送、土地の使用、産業、金融。つまり現行の世界の在り方を丸ごと改革しなければならない。>
M2020 WE HAVE A PLAN

ブラックロックやネスレが推進しているタイプのカーボンオフセットによる二酸化炭素排出量「実質ゼロ」や「自然に基付く解決策」は環境破壊を減らすどころか寧ろ悪化させる。グリーンウォッシングによる搾取によって、大勢の人々の生活や環境が破壊されることになる。
Corporate greenwashing: "net zero" and "nature-based solutions" are a deadly fraud

カーボンオフセットによって実現される二酸化炭素排出量「実質ゼロ」は、排出量削減を意味しない。単に或る場所から別の場所に置き換えるだけで、その過程で排出量の少ない低開発国等が食い物にされる。これは環境主義ではなく、資本主義延命の為の新たな搾取戦略だ。
Offsets: Feeding the Illusion of a (Sustainable) (Green) (Carbon Neutral) (Nature-Based) (Net-zero emissions) Capitalism

IKEA財団とロックフェラー財団(言うまでも無く石油で財を成した連中)は10億人に分散型再生可能エネルギーを提供する構想に10億ドルを注ぎ込み、10億トンの温室効果ガス排出量削減を目指している。
New $1 Billion Global IKEA-Rockefeller Platform To Fight Climate Change With Clean Energy

英国空軍は世界初の「ゼロカーボン航空機」を擁する軍を目指すと発表。「地球環境に優しく持続可能」を売り文句にする侵略軍って一体………。
British Air Force aims to be world’s first service with certified zero-carbon aircraft

『Fit for 55』(2030年までにCO2を55%削減する)なるEU版グリーンニューディールが発表される。これにより輸送、鉄鋼、セメント、石炭とガス燃料による発電業界が大打撃を受け、大規模な産業空洞化が予想される。20世紀に産業の根本的な再編を行なったのは戦争だが、21世紀には偽のパンデミックと偽の気候変動がその役割を果たすことになる
“Fit for 55”: The EU Green Deal and the Industrial Collapse of Europe
Fit for 55-EUグリーン・ディールと、ヨーロッパの産業崩壊

カーボンオフセット市場は2030年までに500億ドルにまで成長すると見込まれている。「温暖化ガス排出量ゼロ」と「実質(差し引き)ゼロ」は全くの別物。市場が大きくなれば、無責任で嘘吐きの投機家達の遊び場がそれだけ増える。彼等は地球そのものを金融商品化したいのだ。
Carbon offsets gird for lift-off as big money gets close to nature
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
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