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ロシア革命再考

★マシュー・エレット氏によるボルシェヴィキ革命の再解釈の抄訳。「ボルシェヴィキ革命は実際には反革命だった」と云う解釈。
プーチン大統領がボリシェヴィキ反革命を批判した理由:トロツキー、パルヴス、そして文明に対する戦争(抄訳)

★2023/06/24、ワグナー・トップのエフゲニー・プリゴジンによる武装反乱未遂を受けての、元ロシア大統領候補セルゲイ・グラジエフ氏のテレグラム投稿(私はロシア語は不得手なので、自動翻訳を多少調整した)。外部の介入が有ったに決まっていると云うのは些か先走りではないかとは思うが、プリゴジンの行為を戦時に於ける裏切りとしてボルシェビキ革命と同列に並べている点は興味深い。
プリゴジンによる武装反乱未遂を受けたセルゲイ・グラジエフ氏のテレグラム投稿

★2023/06/24、プリゴジンの武装蜂起未遂を受け、プーチン大統領は国民に向けて演説したが、その中で彼は今回の反乱を第一次世界大戦中のボルシェビキ革命に準え、プリゴジン個人への言及は避けたものの、今回のクーデター未遂を明確に「裏切り」と位置付けた。従来からプーチン氏は帝政ロシアが斬新的な改革ではなく急進的な革命を経験したのは誤りだったと主張しているが、ロシア革命は「祖国を背中から刺す」様な行為だったと位置付けている様だ。
民間軍事会社ワグナーのクーデター未遂の最中、プーチン大統領の国民向け演説の要点(要点)

“Storming the Gates"の著者ブライアン・ベッカーのインタビュー。1917年のロシア革命は何故世界史に於て画期的な出来事だったのか。ソ連については大量の嘘と陰謀が渦巻いている為何を信じどう評価すべきか迷うところだが、今後の研究で歴史は書き換えられるべきだろう。
Empire Files: What the Russian Revolution Proved Possible


ソ連政府とロシア正教会の対立を解説したRTの記事。政教分離は国家が近代化する上で必ずと言って良い程経ねばならない過程ではあるが、ボルシェビキ革命による正教会の迫害は余りにも急過ぎて暴力的なものだったと今日感じているロシア人は多い様だ。この記事もそうした世論を背景にしてのものだろう(同様に、皇帝一家の殺害も不必要だったと考えているロシア人も多い様だ)。公平を期すなら、西欧での政教分離の過程はソ連よりも遙かに暴力的で、期間も長かった(例えば三十年戦争を見て見ればいい)。
‘There is no God here’: How conflict between the Orthodox Christian Church and the Soviet Union helped define modern Russia

★ロシアと帝国主義との関係についての短いエッセイを全訳してみた。ボルシェビキ政権がロシア帝国を多数の共和国に分割した措置については、ウクライナの領土問題と絡んで最近多くの批判を耳にする。
ロシアの帝国主義?

プーチン大統領が急激なラディカルな変革を目指す「革命」に反対していることは、2021/10/21のヴァルダイ討論クラブでのスピーチでも確認出来る。ここで彼は「女性の共同所有」などと云う反共プロパガンダまで持ち出して、文化や伝統そのものを引っ繰り返そうとしたボルシェビキを、今日のキャンセル文化や逆差別主義と同列に置いている。「健全な保守主義」者であるプーチンとしては、穏健な改革を段階的に時間を掛けて積み重ねて行く方が好みなのだろう。
Valdai Discussion Club meeting
Vladimir Putin Meets with Members of the Valdai Discussion Club. Transcript of the Plenary Session of the 18th Annual Meeting
 プーチンがボルシェビキ革命をCIAの文化戦争と同列に置いているのであろうことは、マシュー・エレット氏がこの動画で解説している。


RTのアレクサンドル・ネポゴディン氏による、ドネツク=クリヴォーイ・ローク・ソヴィエト共和国についての解説。ドネツク・ロシア本国・ウクライナの関係は複雑怪奇で、昔から国境線の再編を巡って何度もすったもんだが有ったらしいが、この記事は問題の発端を、農民ばかりのウクライナに産業プロレタリアート人口の多かったドンバス地域を与えてモスクワからのコントロールを強化しようとしたレーニンの措置に求めている。ブレスト=リトフスク条約によるロシア帝国の分割が果たして当時の人民の意思と利益を反映していると言えるものだったのかどうかについては私は何を語れる程の知識も持ち合わせていないが、現時点に於てノヴォロシアの復活が適切なものであるかどうかは、現在の現地の人々の意思が決めてくれることだろう。

How Lenin's Bolsheviks placed Russia's new regions on a collision course with Ukraine, 100 years ago

カナダの異色の歴史家マシュー・エレット氏もまた「ロシア革命はカラー革命だった」と云う見解を取っている。プーチンのボルシェビキ批判にも通じることだが、彼は今日のグレート・リセットとボルシェビキ革命を、共に進歩派によるクーデターであり、人間社会の自然な発達を無視したものだと酷評している。
 画像左はボルシェビキに資金提供した米英の大物達:左から日露戦争にも資金提供したウォール街の大物ジェイコブ・シフ、セシル・ローズの管財人アルフレッド・ミルナー卿、FRB理事副議長ポール・ウォーバーグ、NY連邦準備銀行理事ウィリアム・ボイス・トンプソン。
 画像左はトロツキーと組んでいたパルヴスが参加していた汎欧州連合の他のメンバー:左上から創設者リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー伯爵、オーストリアのオットー・フォン・ハプスブルク大公、ナチの地政学者カール・ハウスホーファー、ムッソリーニ、ナチスドイツのライヒスバンク総裁ヒャルマル・シャハト、ウォルター・リップマン、ドイツの銀行家マックス・マウリッツ・ヴァールブルク。
 Pan-European Union founded by Count Richard von Coudenhove-Kalergi
Why Putin Criticized the Bolshevik Counter Revolution: Trotsky, Parvus and the War on Civilization
 エレット氏の次の著書にもっと詳しく書いてある。
共存共栄の多極化世界へ向けた心構えの指南署


1922年に米国に亡命したロシア出身の社会学者、ピティリム・ソローキンの回顧録より。貧しい人々の要求に端を発した無血革命になる筈だった1917年の民衆運動は、ドイツに支援され、出所不明の大量の資金を持ったボリシェヴィキ勢力が帰国したことで乗っ取られ、惨めな結果になった、とする見方をしている。ここでもまたボリシェヴィキ革命にカラー革命の要素が有ったことが示唆されている。
Idealistic Russian Describes Grim Reality of Revolution (1917) // Diary of Pitirim Sorokin


Stalin - The Enduring LegacyRussia and the Fight Against Globalisation 等の著作の有るケリー・ボルトン氏による Wall Street and the Russian Revolution: 1905-1925 の書評。スペンス氏の著作はボルシェビキ革命の性質についてのアントニー・サットンの所謂「陰謀論」な仮説に対する、一部は補完であり、一部は反論となっている。現実の歴史は往々にして複雑で微妙なものであって、還元論的な見方を拒否するものだ。 
WALL STREET AND THE RUSSIAN REVOLUTION,
 

★ロシア革命は外国資本が仕掛けたカラー革命だったのか?と云う問いに対する、取り敢えずは穏健な答え。
ウォール街とロシア革命———リチャード・B・スペンスのインタビュー(要点)

M.R.ジョンソン博士の記事。欧米エリート達は1918〜1921まで一貫して赤軍(トロツキー)を支援していた。目的はロシアに於ける利権の確保。西側から支援を受けていない白軍(議会&ケレンスキー派。大ロシア派)は統制が取れず失敗した。
Western Media and Elites Supported the Bolsheviks in the Russian Civil War - the Ugly Truth Emerges

ボルシェビキ革命は反資本主義を謳っていたが、実際にはロシアの豊富な資源は(1990年代の様に?)欧米の金融界やビッグビジネスに対して開かれていた。日露戦争の立役者ジェイコブ・シフ他大勢の資本家達がイナゴの様に群がって革命を支援・宣伝していた。
WALL STREET AND THE MARCH 1917 RUSSIAN REVOLUTION

サットンのテーマを更に掘り下げたのがこの本。「ウォール街のロシアに対する大小様々の陰謀は実在したが、背後で統一した意図が働いていた訳ではなく、或る程度の成果(経済的侵略)は収めたものの、スターリンによって頓挫させられた」と結論付けている。


「1917年のロシア革命はウォール街が仕組んだ」と云う説の出所はA.C.サットンのこの本。この分野の基本文献なのだが個人的な感想としては点と点が繋がっていない感じ。


オーストリアの歴史家Elisabeth Hereschに拠れば、20世紀初頭の欧州外交では他国の革命の支援はよく行われ、メンシェビキが優勢だったロシアに於けるボルシェビキのレーニンの台頭とウクライナ独立はその一環で、レーニン、トロツキー、パルヴスは独墺の支援を受けていた。
The Bolshevik Revolution and the Ukraine crisis: What can they possibly have in common?

レーニンがロシアに戻って来る際にドイツ諜報部の支援を受けていたことが当時から知られていたことは、ジョン・リード(彼自身米国政府の支援を受けていた非正規の工作員だった)も目撃している。


プーチンは2022/02/21の演説で1917年のボルシェビキ革命をソ連崩壊と同列に置いて非難し、革命よりも内発的改革を支持している。何故反帝国主義の旗手である筈のプーチンが反革命派なのか? その問いに答えるには、ロシア革命の再解釈が必要になる。
 プーチンはウクライナのファシストを非難すると同時に、ボルシェビキ政権によるウクライナの独立措置を「最も危険な時限爆弾」と呼んで主権の濫立を許したレーニンをも非難している。革命により領土的には「ロシア」は弱体化した。
Address by the President of the Russian Federation on the events in Ukraine
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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