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靖国のジレンマ 〜何故それは許されない存在なのか〜

 以前にもちと触れたことが有る話ですが、大事な話で、これを結構解っていない人が多いんじゃないかと思うので、改めて昨日ツイートした内容を纏めてみます。

 先ず国家神道と云うものの簡単なお浚いから。大日本帝国憲法の下でも信教の自由と云うものは認められていたのですが(第28条:「日本臣民は、安寧秩序を妨げず、かつ、臣民としての義務に背かない限りにおいて、信教の自由を有する。」)、国家神道は戦前・戦中は「これは宗教ではないから信教の自由を侵すものではない」と云う名目の下、他宗教(他宗派)を弾圧し、天皇崇拝を強要しました。ところが敗戦後は一転して「これは宗教だから信教の自由の下に存続を許されるべきだ」と云う名目で存続を図りました。詰まり信教の自由(基本的人権のひとつ!)を否定した所に君臨していたのが国家神道であったのですが、それが状況が不利となるや180度態度を豹変させて「信教の自由が有るから靖国も認めて下さい」となった訳です。恥も外聞も無い、見事な手の平返しですね。

 次に、政教分離のお浚いです。欧米の場合に考えなければならない具体的な状況は「宗教(即ち特定の宗派の教会)が政治に口を出すことは罷りならん」と云うパターンなのですが、日本型の政教分離と云うのは「国家が宗教に手を出すことはあってはならん」と云うパターンな訳なのですのね。所謂マッカーサー憲法が作られた時には、草案の作成に携わった日米スタッフの双方共に、この違いを認識していませんでした。この言うなれば「相互誤解」の上に作られたのが日本国憲法なので、一応日本の学校で政教分離の原則を教えはするけれども、そうした具体的な歴史の話を抜きにして語ろうとすると何だか話が噛み合なくて混乱することになる訳です。多分この辺のリクツで躓いて、何で政教分離じゃないといけないんだ、とか、国家神道は宗教じゃないんだから政教分離の原則なんて関係無いんじゃないか、とか頓珍漢なことを言う人が出て来る素地が作られてしまう訳です。靖国を支持する人達の多くは、恐らく自分の主張が実質的に祭政一致と同じことであると云う事実に気が付いていないのではないかと思います。

 多分今回も「信教の自由に口を出すのか」「靖国参拝は心の問題だ」と云う言い分を主張する方が出て来ると思うんだけれども、その場合、その方は「国家神道は宗教ではない(裏を返せば祭祀と云う形式である)」とした戦前の思想を否定することになることに気付いていない。そして逆に「靖国は宗教なんかじゃない、国の為に死んだ人を祀る当然の施設だ」と主張する人達は、それが戦後の「靖国は一宗教法人に過ぎない(だから存続も許される)」と云う理屈と矛盾することになることに気が付いていない。

 どっちにしても靖国は矛盾の塊、どっちに転んでもケチが付く訳です。戦後の国体解体がなぁなぁで終わってしまったことのツケの象徴のひとつです。

 まぁ穏当な解決策としては、靖国から脱退する権利を戦没者(またはその遺族)に認め、千鳥が淵の様な、宗教(宗派)性の薄い国立の追悼施設を造ることだろうけれども、今のところ実現の可能性は正直言って低いでしょう(千鳥が淵で追悼されているのは「国の所為で死んだ人達」ですが、靖国は「国の為に死んだ人達」と云う名目ですから、その形式的なヒロイズムに酔ってみたい人達は後を絶たないでしょう)。だから私達が今民間レベルで出来ることと言えば、「自分とは違う思想・信条・信教の人と一緒の国で生きるとはどう云うことか」をきちんと冷静に議論して行く、それしか無いと私は思います。逆に言えば、「日本に於ける信教の自由とは何か、政教分離とは何を意味するのか」と云うことをきちんと考えて国民的な議論を深めない限り、靖国問題は100年だって続くでしょう。現にもう68年も続いているんですもの。この辺でそろそろ前に踏み出しても良い頃なんじゃないでしょうか。






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川流桃桜

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