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西洋はアジアのこの地域を分断統治する為にロヒンギャ問題を蒸し返している(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/04/04、ロシアのワシリー・ネベンジア国連常任代表は、英国がミャンマーに関する安保理の公開会議を招集したことを非難したが、西洋はテロ組織を支援する一方で、難民問題を口実としてこの地域を分断統治する為に危機を引き起こそうとしている。
The West Is Returning To The Rohingya Issue In An Attempt To Divide & Rule This Part Of Asia



ミャンマーの難民危機が蒸し返される

 2024/04/04、ロシアのワシリー・ネベンジア国連常任代表は、英国がミャンマーに関する安保理の公開会議を招集したことを非難し、英国が拘る「『メガフォン外交』モードでは議論出来ないことが有ります」と述べた。

 この会議は主にミャンマーのラカイン州の状況に焦点が当てられていた。ここは2017年の紛争でバングラデシュ出身のロヒンギャの殆どがバングラデシュに追い返されるまで主に居住していた場所だ。

 当時の分析はこうだった。

 ・2017/09/05:The Rohingya Crisis: Reality, Rumors and Ramifications
 ・2017/09/07:The Rohingya Crisis: Conflict Scenarios And Reconciliation Proposals

 当時「アラカン・ロヒンギャ救世軍」に対するミャンマー国軍の対テロ作戦からバングラデシュに逃れた大多数の人々は、未だにミャンマーに帰還していないが、これはバングラデシュとミャンマーの関係に於て依然として大きな問題となっている。

 ミャンマー内戦は既に何十年も続いているが、2021年のクーデターにより再燃してからの過去3年間で、ラカイン州の大部分が「アラカン軍」の支配下に置かれた。それ以降の展開は以下の通りだ。

 ・2024/02/08:ミャンマーの3年に及ぶ紛争は一見した程単純ではない(抄訳)
 ・2024/02/23:米国はミャンマーへの更なる介入に備えて、世論を条件付けようとしている(抄訳)
 ・2024/03/05:American Meddling Could Disrupt Myanmar’s Fragile Chinese-Mediated Peace Process
 ・2024/03/18:Myanmar’s Rebels & Their Foreign Supporters Really Dislike Thailand’s Four-Point Plan
 ・2024/03/28:TASS’ Interview With Myanmar’s Leader Had An Interesting Connectivity Tidbit

 アラカン軍も参加している新たに結成された「三兄弟同盟」は、2023/10/27に全国規模の攻勢(「1027作戦」)を開始して成功を収めた。これは中国の仲介によって2024/01/13に停戦に至った

 三兄弟同盟の進出により、インドのカラダン回廊の終着点であるシットウェ港と、中国・ミャンマー経済回廊の終着点であるチャウピュー港を通る輸送が妨害される可能性が有る。従ってここでラカイン州(2枚目の地図の緑の部分)の状況が重要になって来る。
Kaladan Corridor




テロ組織は西洋のハイブリッド戦争の道具だ

 ネベンジアは安保理会合で爆弾発言を行っている。

 「我々は昨年末以来、ラカイン州に於ける過激派グループ、特に所謂アラカン軍の活動の増大に対するミャンマー当局の懸念を共有しています。この民兵組織(及び武装反政府勢力全般)が西洋諸国によって支援され、新植民地主義的目的を達成する為の道具として利用されていることを示す多くの証拠が有ります。

 同時に、公式の声明の中で、米国、英国、及びその同盟諸国は、難民の帰還を促進する為にミャンマー指導部への圧力を強めるよう要求しています。

 そうする一方で、彼等は自らの子分達の行動がラカイン州の状況を更に不安定にし、国内避難民キャンプの状況を悪化させていると云う事実を無視しています。

 言い換えれば、この地域に於て自分達の地政学的利益を促進することだけを考えている西洋諸国の措置により、ミャンマー当局に対する要求を満たすことが不可能になっているのです。」




 ネベンジアはつまり、西洋がテロ組織と「大量移民兵器」を利用して、ミャンマーに対してハイブリッド戦争を仕掛けていると非難しているのだ。

 ロシアは、西洋がアジアのこの地域を分割統治する手段として地域の過激派を武装させ、政治的にけしかけているのではないか長年疑って来た。テロが成功しようがしまいが、地域を不安定化すると云う目的は達せられる。

 西洋がラカイン州を「南アジアのコソボ」に出来れば、中国とインドの直ぐ近くに、西洋の新たな属国が誕生することになる。若しその試みが失敗したとしても、難民危機を引き起こしてバングラデシュとミャンマーの関係を悪化させることが出来る。
 
 バングラデシュは米国からの多大な圧力カラー革命の脅威が有ったにも関わらず、01/07にシェイク・ハシナ首相を再選した。だが米国は対ロシア制裁の圧力に従おうとしないバングラデシュに罰を与えたいと考えており、またバングラデシュを不安定化させることで、間接的に(同様に従おうとしない)隣国インドにも罰を与えることが出来ると考えている。

 これに関する以前の分析は以下の通りだ。
 ・2023/04/16:米国がバングラデシュでレジームチェンジを企んでいるのは何故か?(要点)
 ・2023/08/26:India’s Reported Pushback Against US Meddling In Bangladesh Is Driven By Security Concerns
 ・2023/11/23:インドと西洋の蜜月関係が遂に破局?(抄訳)
 ・2023/11/26:ロシアは米国がバングラデシュでカラー革命を画策するかも知れないと警告(抄訳)
 ・2023/12/13:Biden’s Reportedly Planned Snubbing Of Modi Bodes Ill For Bilateral Ties
 ・2024/01/03:Why Are Western Influencers Fearmongering About Indian-Russian Ties?
 ・2024/01/10:バングラデシュとブータンの選挙結果はインドに戦略的息抜きを与える(抄訳)
 ・2024/01/28:The Bangladeshi Opposition’s New Narrative Is Meant To Maximally Appeal To The West

 バングラデシュの野党はロヒンギャ問題について強硬姿勢を取っており、与党の姿勢は弱腰(実際にはプラグマティックな姿勢)だと非難して支持者達を煽っている。若しこの問題で騒乱が発生すれば、04/19〜06/01の長い選挙期間中の隣国インドにも問題が生じるかも知れない。

 特に、一部のバングラデシュ人はインド北東部の州に避難するかも知れない。ここは2023年のマニプール騒乱の一因となった外国人の人口流入による圧力に数十年間曝されている。

 その結果として不安定化が起これば、それはアルナーチャル・プラデーシュ州の帰属を巡る領土問題について、そこは南チベットであると主張している中国を優位に立たせることになるかも知れず、それによって中国が強気の姿勢を強めれば、中印対立は危険なまでに悪化する。



まとめ

 西洋がこの地域に対して仕掛けているハイブリッド戦争の流れは以下の通りだ。
 
 1)西洋はアラカン・ロヒンギャ救世軍を軍事的に支援したが、これはミャンマーにとって国家安全保障上の脅威となり、2017年のミャンマー国軍による弾圧を引き起こした。

 2)その後ロヒンギャはバングラデシュへ逃亡したが、これは今日に至るまで両国関係に問題を引き起こしている。

 3)英国が安保理でこの問題を蒸し返せば、与党の対応は手緩いと批判する急進的なバングラデシュ反政府勢力が勢い付くかも知れない。

 4)バングラデシュで騒乱が起これば、インド北東部の州にまで波及するかも知れない。

 5)インドで騒乱が起これば領土問題に関して中国が優位に立ち、中印間の緊張が悪化するかも知れない。

 大戦略として、西洋はこれら無数の危機を引き起こすことによって、アジアのこの地域を分断統治しようとしている。それらの危機は「民主的」、「人道的」、「安全保障」等の大義名分を使って利用され、米国がウクライナ戦争終結後に「アジアへの軸足回帰」を果たして中国を封じ込めるのに役立つことになる。

 更に、インドはロシアと距離を置けと云うワシントンの要求に逆らい続けていて、インドと米国の距離は急速に離れつつあるが、西洋はこれに対する懲罰として、このハイブリッド戦争を利用してインドに圧力を掛けることも出来る。

 西洋にとって、このハイブリッド戦争を進めても殆どコストは掛からない。精々、既に悪化しているインドとの関係が更に悪化するかも知れないと云う点だけだ(但し西洋との関係が悪化したインドが中国と接近すると期待するのは非現実的だ)。

 兵站や政治やその他の要因がこのハイブリッド戦争作戦を複雑にするかも知れないが、仮にそれが最終的に失敗したとしても、西洋はロヒンギャ問題を新たな新冷戦危機に仕立て上げようとしていることは間違い無い。
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川流桃桜

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