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ウクライナ紛争は「戦争」であると云うクレムリン報道官の前例の無い表現を分析する(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。少しだけ補足した。2024/03/22、クレムリンのドミトリー・ペシュコフ報道官は特別軍事作戦を初めて「戦争」と表現した。これは恐らくNATOに、ウクライナに直接介入する計画の再考を促す為であろうと思われる。
Analyzing The Kremlin Spokesman’s Unprecedented Description Of The Ukrainian Conflict As A War



ロシアが表現を変更

 2024/03/22、クレムリンのドミトリー・ペシュコフ報道官はこう語った

 「はい、それは特別軍事作戦として始まりましたが、このグループがそこで結成され、西洋全体がウクライナ側としてこれに参加する様になると直ぐ、これは我々にとっては既に戦争になりました。」

 国家安全保障法が特別軍事作戦に対して「戦争」と云う言葉の使用を禁止している為、これは前例の無い表現だ。

 この区別が重要なのは、「特別軍事作戦」は自発的に制限された軍事行動であるのに対し、「戦争」はそれを統治する国際法によってのみ制限(遵守されるにせよ外部から強制されるにせよ)されるからだ。

 更に、国家によって法的に戦争として指定されている戦闘を行うことは、この紛争への西洋への参加に対応するようて当局に圧力を掛けることになり、従ってエスカレーションのリスクを高めることになる。

 ペシュコフが表現を変えたのは、フランスがウクライナに直接軍事介入を行う準備を進め、ドイツのショルツ首相が、この紛争が宣言はされておらず限定的だが既にNATOとロシアとの熱い戦争であることをうっかり認めてしまっているタイミングで起こった。
 
 戦場に於けるフランス軍の駐留を正式化・拡大することで、マクロン大統領は、NATOとロシアの安全保障上のジレンマを制御不能な規模まで悪化させるリスクを冒している。

 従ってペシュコフの表現は、ロシアはこうした形態の紛争を管理する国際法に従って、敵対する勢力を攻撃することで、西洋が直接介入するシナリオに対応するだろうと云う、これまでで最も明確なシグナルと見るべきだ。

 その目的は、フランスや英国ポーランド、或いはバルト三国等に、介入計画の再考を促す為だろう。政策立案者達も社会も、ロシアがこの様に対応すれば、計算違いによって第3次世界大戦が始まるかも知れないことを知っている。



NATOは第3次世界大戦のリスクを高める

 はっきりさせておくと、ロシアには戦闘空間に進入する敵対勢力を攻撃する、法的・道義的権利が有る。従ってこの危険な展開を引き起こした責任は西洋に在る。

 NATOが介入を検討している唯一の理由は、ロシアの接触線突破が差し迫っているからだ。この戦略的敗北が実現すれば、国内外の政治家達の信用は失墜することになる。彼等は2023年夏の反抗でロシアを戦略的に敗北させてやると煽ったが、その作戦は完全に失敗し、キエフは守勢に戻されることになった。

 西洋の一部諸国は、完全な戦略的敗北を受け入れる代わりに、ロシアの突破に先んじるかそれに直ちに対応して介入することで「脱エスカレーション」を望んでいる。また彼等はNATOとロシアとの間でウクライナを非対称的に分割し、それによってウクライナに「勢力圏」を維持したいと考ええている(そしてまたロシアが望んでいる「緩衝地帯」を縮小したいと考えている)。

 ロシアは当然このシナリオを阻止したいと考えており、ウクライナのエネルギー網に対して最大規模の攻撃を行う一方で、この紛争を「戦争」と呼んだ。

 これらの絡み合った外交と軍事の動きは、NATO軍が関与した場合に何が起こるかを示唆している。

 NATOの介入に対してロシアが対応せざるを得なくなった場合、限定的な熱い戦争状態を維持する場合よりも、遙かに管理が難しくなる。

 但しペシュコフ報道官はこのインタビューの直後、こう語ってもいる

 「これは法で定められた特別作戦ですが、西洋全体が紛争への関与のレヴェルを益々高めた為、事実上、我々にとっては戦争になったのです。」

 これは、ロシアが依然として自制していることを示しており、彼が「戦争」と云う表現を使ったことで、ロシアがそうした制限を解除したのだからこちらも遠慮することは無い、と云う口実で西洋が介入を開始しないようにするのが目的だ。



調停の可能性

 03/22、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相はこう語った

 「ほんの2ヵ月前には馬鹿馬鹿しくて考えられなかったことが今では現実になっている。これが戦争のスパイラルと呼ばれるものです。………NATO加盟国が対ロシア軍事作戦に入れば、それは第3次世界大戦の開始を意味します。」

 だがオルバンにはこれを止めたりエスカレーションの管理を支援するのに必要な影響力は無い。

 ローマ教皇やはインドは調停能力を持つ唯一の中立のプレイヤーだ。中国も中立を保っているが、西洋から信頼されていないし、米国は中国の封じ込めを狙っているので、候補にはなり得ない。

 03/20にインドのモディ首相はプーチンとゼレンスキーに個別に電話会談を行っているので、仲介が上手く行く可能性も考えられる。

 更にウクライナのドミトリー・クレバ外相は来週中にインドを訪問する予定であり、特別軍事作戦開始以来、ウクライナの高官がインドを訪問するのはこれが初めてだ。なのでキエフ側に政治的意志が存在すれば、インドが外交調停を行うことも有り得る。

 和平交渉はすぐには再開されないかも知れないが、ジャイシャンカール外相の様な経験豊富な外交官が双方のレッドラインを踏まえた上でエスカレーションの管理に貢献すれば、第3次世界大戦のリスクを減らすことが出来る。
 
 若し西洋がペシュコフ報道官の言葉を「はったり」だと(またしても)誤解し、マクロンの介入路線を継続し、インドの仲介によって双方のレッドラインを確認して様々なシナリオで双方がどの様に対応するかを共有しなければ、計算違いによる第3次世界大戦のリスクはこれまで以上に高まるだろう。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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