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フランスと英国はドイツの眼前でウクライナを巡ってパワープレイを画策しているのか?(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。ウクライナへのNATOの軍事介入について、有り得るシナリオの考察。
Are France & The UK Plotting A Ukrainian Power Play Right Under Germany’s Nose?



 NATOがウクライナに対して直接軍事介入すべきかを巡ってマクロン仏大統領が引き起こした議論は、この問題に関して欧州内に2つの異なる考え方が存在することを露呈させた。

 フランス、バルト三国ポーランドは、地雷除去や訓練任務の為の「非戦闘配備」に賛成している様だが、残りの加盟諸国は、如何なる状況であってもそんなことはすべきではないと云うドイツの立場を支持している。

 但し他ならぬドイツのショルツ首相自身が、ウクライナの「標的制御」を支援する為に英軍と仏軍が既にウクライナ入りしていることをうっかり暴露してしまった。またその後リークされたドイツ連邦軍の音声記録により、米国人もウクライナ入りしていることがバレてしまった。

 従って、(知っている人は以前から知っていた話ではあるが)、NATO軍がウクライナに駐留していると云うのは既に公然の秘密だ。但しフランスが提案しているのは、これらの配備を正式化し、その「非戦闘」能力を段階的に拡大することだ。

 無論、任務を地雷除去等に限定すると云う話はタテマエに過ぎない。この点に引っ掛かってはいけない。彼等の本当の意図は、キエフ側から見て前線が崩壊し、ロシアが西進を始めると云う最悪のシナリオが実現した場合に、これを阻止することだ。NATO軍はウクライナを救う為に、砂の上に可能な限りのレッドラインを引こうとするだろう。

 ドイツの姿勢は全く異なっている。ドイツは「ヨーロッパ要塞」の構築に集中しなければならないので、争いからは遠ざかろうとしている。米国は中国封じ込めを優先する為に「アジアへの軸足回帰」を行う一方で、欧州に於けるロシアの封じ込めはドイツの主導に任せようとしている。ドイツは米国の支援を受けて超大国への軌道を再開し、欧州に於ける米軍の負担を減らす。この為に、人員や装備の流通を円滑にする為の「軍事シェンゲン」構想が、現在ドイツ、オランダ、ポーランド間で進められている。

 バルト三国とポーランドは、核保有国が正式に参加しない限り、ウクライナへの軍事派遣に参加する可能性は低い。ウクライナ国内でロシアと衝突するシナリオに於て、放置される可能性を恐れているからだ。だからこそフランスの参加にが戦略に重要な意味を持つ。核保有国であるフランスがロシアを相手に核の瀬戸際外交を行うかも知れないと云う可能性は、彼等の懸念を和らげることが出来るからだ。
 
 英国もまた事態の成り行きを傍観するつもりは無い。英国は既にこの代理戦争で主導的な役割を果たして来ているし、2022/02/17には(キエフがドンバスへの攻撃を激化させた直後。ロシアが特別軍事作戦を開始する前)、ポーランドとウクライナと共同で、三国安全保障協定に署名してすらいる。

 伝統的にドイツのライヴァルであるフランスと英国は、ドイツが超大国の軌道に戻るのことを望んでいない。従って事前に米国の承認を得るにせよ先に既成事実を作るにせよ、ウクライナへの介入を望むだろう。

 フランスはまだ「軍事シェンゲン」に参加していないが、現状では大量の兵力や装備をウクライナに移動させる能力が妨げられる可能性が有る為、直ぐにこの協定に参加するだろう。或いはモルドバとの新たな協定を補完する為に、ポーランドやギリシャ、ブルガリア、ルーマニアと独自の協定を交渉するかも知れない

 ルーマニアは「モルドバ高速道路」を「緊急」モードで建設中だが、これはフランスが欧州全体で増大するドイツの軍事的影響力に対抗出来る新たな軍事回廊を、バルカン半島に創り出している。

 この新たなギリシャ-ウクライナ回廊は、農民の抗議活動によってポーランドの回廊が使えなくなった為、この代理戦争に於て西洋の最も重要な物流ルートのひとつとなっている。

 従ってフランスや英国の様な国にとって、ドイツの超大国の軌道を減速させる為に、このルートに沿って独自の「勢力圏」を築く為に投資を行うことは理に適っている。

 フランスは今正にモルドバに対してそうしたことを行っている。英国も何等かの形でこれに倣うか、或いはバルト三国がポーランドでの影響力を倍増させるかも知れない。恐らくウクライナへの介入を行う場合、フランスはルーマニア・モルドバから、英国はバルト三国やポーランドを経由して行うだろう。

 フランスと英国が(事前に米国の承認を得るにせよ先に既成事実を作るにせよ)ウクライナに介入した場合、ドイツも弱く見られたくないので、参加する可能性が有る。リークされたドイツ連邦軍の会話記録は、ドイツが既にそうした圧力を感じている可能性を示唆している。
 
 仏英がドイツの超大国化を望んでいないにも関わらず、ウクライナ介入へのドイツの参加を望んでいると云うのは一見直観に反する様に見えるが、実はこれらの計算には明確な論理が働いている。この紛争へのドイツの関与が深まれば、戦後にドイツがロシアと和解する可能性(タカ派はこの可能性を酷く恐れている)は更に低くなる。またドイツが拡大し過ぎて統制が緩まることになれば、仏英がそれぞれバルカン半島とバルト三国に於てドイツの影響力を削り取る隙が生まれるかも知れない。

 但しベルリンはこのエサに食い付かないかも知れない。ショルツは軍隊の配備どころか、トーラス・ミサイルをウクライナに送ることさえまだ承認していないのだ。

 ドイツが正式に紛争から遠ざかる一方で、仏英が悲惨な打撃を被るか、或いは大した成果が上げられない場合は、仏英の姿勢は信用を落とすことになり、ドイツにとって大きな利益となる。或いはだからこそ、米国はこれまでウクライナに介入する為の「有志連合」の承認に対して消極的であり、ドイツの姿勢を評価しているのかも知れない。

 ドイツに対抗し得る二大勢力が信用を落とせば、この紛争の余波で「ヨーロッパ要塞」の建設が加速するかも知れない。他方、仏英による軍事介入がウクライナを崩壊から救い、ロシアの勢いを止めることになれば、今度はドイツの信用が落ちるかも知れない。その場合、「ヨーロッパ要塞」はドイツの計画とは大きく異なる形で建設されるかも知れない。EU全体がドイツが主導する親代理ブロックとして機能するのではなく、バルト三国は英国の「勢力圏」となり、ポーランドは英国とドイツが共同統治することになり、フランスはバルカン半島に独自の「勢力圏」を持つことになる。

 この場合、米国はEUの代理統治を1ヵ国だけに頼るのではなく、独仏英の3ヵ国に頼ることになる。この利点はドイツが暴走するリスクを抑えられることだが、欠点としては管理するのがより複雑になることが挙げられる。

 仏英がドイツの眼前でこのウクライナを巡るパワープレイをやり遂げるかどうかはまだ分からないが、これが彼等が計画していることであることには殆ど疑いの余地は無い。但し米国はこれに同意しない可能性も有る。

 過去30年間で最大のNATO演習は6月に終了するが、その前にロシアが突破口を開けば、米国が主導権を握る可能性も有る。「背後から主導」するより自分で出張った方が容易ではあるが、但しその場合は計算違いから第3次世界大戦が起こる可能性も高くなる。従って米国としては仏英に任せる方が魅力的に感じるだろう。

 今後何が起こるにせよ、西洋によるウクライナに対する正規型の介入計画は確かに存在するが、それはまだ完全には形を為してはいないし、それが実行されるとは限らない。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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