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ロシアによるアヴディイフカ奪取はヨーロッパ中に谺し、地政学的な変化を加速させるだろう(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/02/17にウクライナの要塞都市アヴィディイフカがロシア軍によって陥落させられたことによって、ウクライナを使ったNATOの対ロシア代理戦争は最早成功の見込みが無いことがはっきりした。だからこそNATOは欧州でのロシアの長期封じ込めに焦点を移している。ドイツは超大国として復活し、米国はそれを「背後から主導」し、「軍事シェンゲン」と復活した「ワイマール・トライアングル」が結び付くことで、曾てヒトラーが構築した「ヨーロッパ要塞」が再建されるだろう。
Russia’s Capture Of Avdeevka Will Reverberate Across Europe & Accelerate Geostrategic Shifts



アヴディイフカ陥落。されど更なる支援は無し

 2024/02/17、キエフの混乱した撤退負傷兵の放棄で終わった長期に亘る戦闘の末、ロシアは遂にウクライナの要塞都市アヴディイフカを奪取した。

 偶然にもこの時、西洋のエリート達はミュンヘン安全保障会議の席に集まっており、そのお陰でこの代理戦争での次の動きについて話し合うことが出来た。

 だが、ウクライナがドイツやフランスと新たに安全保障協定を結んだにも関わらず、大規模な財政援助や軍事援助は期待されていない。



急速に軍事化する欧州圏

 そもそも西洋のウクライナ支援は、ロシアを封じ込めると云うより大きな取り組みの一環に過ぎない。彼等の関心はウクライナを越えており、欧州に於けるロシアの長期封じ込めを狙っている。

 その為に米国が好むのは「背後から主導する」と云う手法で、EUに於てはドイツがこの代理人形の役割を果たすことが期待されている。ドイツはEU域内全体を単一の軍事プラットフォームに変える「ヨーロッパ要塞」の再建を加速する為に、軍事資源や人員の移動を最適化する「軍事シェンゲン」と、復活したワイマール・トライアングル(ポーランド、ドイツ、フランスの国家連合)を結び付けるだろう。

 ドイツはポーランドを包括的に(政治的・軍事的・経済的)に従属させている関係を利用して、80年近くの休止期間を経て、長らく失われた超大国への軌道へ再び踏み出している。



これ以上ウクライナに肩入れしても見込みは無い

 アヴディイフカを失った後、西洋がウクライナを使った対ロシア代理戦争への執着にするのではなく、こうした戦略地政学的転換に関心を向けたのは、代理戦争に最早成功の見込みが無いことが今や誰の目にも明らかだからだ。

 ロシアはNATOを相手とするこの「兵站競争/消耗戦」に既に圧勝している。それは鳴り物入りだったキエフの反攻作戦が完全に失敗し、ウクライナが再び防戦一方となったことによって証明されている。02/13に公開されたインタビューでシルスキー新総司令官も、キエフ軍が「攻撃的行動から防御的作戦の実施に移行」したことを認めた。

 現在、キエフ軍は来るべきロシアの攻勢に向けて準備を整えているが、これはロシア側の観点からは最良のシナリオ、西洋の側からは最悪のシナリオだ。

 所謂「戦争の霧」の所為で、接触線(LOC)の背後のウクライナ側の完全な防御能力を正確に識別することは不可能だが、西洋がパニックに陥って、ゼレンスキーが敗北の責任を西洋になすり付けることにしたのには、理由が無い訳ではない。

 ゼレンスキーは米議会の紛糾によってウクライナ支援拡大が行き詰まった所為で所謂「兵器の人為的不足」が起こったのが原因だと主張し、バイデンは共和党に圧力を掛ける為にこれに同意した。
 
 02/16のアレクセイ・ナワリヌイの予期せぬ死を反ロシア強硬派が利用し、米下院で代理戦争の支援法案の可決を要求したが、問題は、仮令これが可決されたとしても、米国が既に備蓄を使い果たしていることだ。

 米国が自国分の備蓄にまで手を付け、属国諸国にまで同じことを強制する可能性は有るものの、これまでキエフに遙かに大規模な援助を与えたにも関わらず反攻が失敗に終わったと云う事実は、何れにせよ戦況が変わらないことを示している。何が送られるにせよ、それは秋からの膠着状態を長続きさせる為に接触線を出来るだけ長く保ち、ロシアの突破を阻止する為だけに使われるだろう。

 実のところ、この予測もまた確かではない。接触線は徐々に西に移動し続けている。ロシアがアヴディイフカを占領した後はそのペースも速まるかも知れない。

 プーチンは02/14、特別軍事作戦をもっと早く開始するよう指示しなかったことを後悔していると発言し、その後02/18には、ロシアにとって勝利は「死活問題だ」と述べている。そしてロシアの安全保障要求が容れられるまでは決して止めないとの姿勢を示している。

 紛争が何時、どの様な条件で終結するのかは依然として不明だが、ロシアの要求が或る程度満たされるまでは終わらないのは確かだ。だからこそ西洋は今、ロシアとの対決が「数十年続く可能性が有る」(NATOのストルテンベルグ事務総長の表現)事態に備えている。先に述べた戦略地政学的な転換が重要なのはこの為だ。



戦略地政学的な転換が加速するドイツ第4帝国の台頭

 欧州に於けるロシア封じ込めの為に、NATOは大陸規模(旧冷戦終結以来最大規模)の「Steadfast Defender 2024(不動の守護者2024)」演習を行っているが、これは「軍事シェンゲン」をドイツ、ポーランド、オランダ間で部分的に実施して最適化することが目的だ。フランスも間も無く参加するだろう。

 所謂「バルト三国防衛線」の構築に支援が必要であることを考えると、バルト三国も参加する可能性が高い。予想通りフィンランドも関与すれば、この防衛線は北極まで延びることになる。

 従って、世界中の目の前で、デンマークとスウェーデン(後者はNATO加盟を熱望しており、「軍事シェンゲン」にも参加が期待されている)を経由してフィンランドに到達する、フランスからエストニアへ延びる一大軍事回廊が構築されつつある。

 ロシアがアヴディイフカを陥落させたことによって、ウクライナを使った代理戦争が成功する見込みは最早皆無であることが誰の目にも明らかになった。だからこそその影響はヨーロッパ全土に谺し、NATOはロシアの長期封じ込めを加速させる方向へと基本戦略を切り替えることにしたのだ。

 ドイツは80年近くの眠りから覚めて超大国への軌道を再開した。これは世界的に重要な展開であるので、観察者はこの戦略地政学的な力学に何よりも注意を払うべきだ。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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