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ミャンマーの3年に及ぶ紛争は一見した程単純ではない(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。世界で今起きている紛争の中でもミャンマーの内戦は特にややこしくて、単純に白黒の図式では理解出来ないし、道徳的な評価は更に難しい。原文では「2年」となっているが、クーデターから内戦に発展したのは2021年なので「3年」の間違いではないかと思われる。
Myanmar’s Two-Year-Long Conflict Isn’t As Simple As It Seems At First Glance




ミャンマー内戦は見掛けより入り組んでいる

 物議を醸す選挙を受けて軍が介入したことで始まったミャンマーの内戦は3年を迎える。西洋メディアはこれを、元文民指導者アウン・サン・スー・チーに対するクーデターと報道し、スー・チーの支持達は現在民主主義を求めて戦っているが、その後の暴力行為は、中国の不安定化を目的とした西洋のハイブリッド戦争であると見做す者も居る。

 現実は、双方の陣営が主張する程単純ではない。



内戦の背景

 ミャンマーは1948年に独立を果たしたが、民族的・地域的に多様な植民地時代の住民間の関係を管理する為に1947年に合意されたパンロン協定を当局が遵守しなかった為、それ以来、世界で最も長い内戦状態が続いている。

 この紛争の激しさと外観は長年に亘り変化し続けて来たものの、それは常に、以前は統一されていなかった民族的・地域的少数派と、中央に位置する多数派のバマール(ビルマ)族との間の闘争によって推進されて来た。少数派は国家の分権化、場合によっては権限委譲を望んでおり、完全な分離主義を掲げるグループも幾つか存在する。他方、多数派は国の「バルカン化」を恐れて、可能な限り中央集権体制を維持したいと考えている。

 また、辺縁部の少数派と多数派が混在する地域は鉱物やその他の資源が非常に豊富であり、バマール地域がこの国の穀倉地帯であることも指摘しておべきだろう。

 この両者の共生関係は、この紛争を引き起こす上で重要な役割を果たしている。

 政治面では両者の競争は、伝統的に文民と軍の緊張と云う形を取っていた。文民が一般的に親西洋の外交政策を支持する一方、軍は主に孤立主義を支持している。

 読者はここで、双方には正当な利益が有り、また外部勢力が介入することで両者間の緊張を悪化させるのは実に簡単だと云うことを押さえておく必要が有る。



米中間で揺れるミャンマー

 2020/11/08、西洋の民主主義の象徴であるスー・チーの、それまで活動を禁止されていた国民民主連盟(National League for Democracy/NLD)が、議会選挙で圧倒的な地滑り的勝利を収めたのだが、それに対して軍が不正を選挙だと訴えた。

 NLDは2015年に選挙に参加して議会の絶対多数を獲得したものの、軍が拒否権を発動することによって抑制されて来た。だがその時からミャンマーは制裁解除を受けて、外交政策を中国から米国へ向けて舵を切り直した。軍は1988年のクーデター後に課せられた制限によって、略完全に中国に依存する立場に追い込まれた。軍指導部はこれを戦略的に不利と見做したが、市民社会の一部はこれを非常に屈辱的なことだと見做した。

 これらの認識が組み合わさって、過去10年間の政治改革に影響を及ぼした。その間、事実上の首相(「国家顧問」)であるスー・チーは親西洋の理想主義者からよりプラグマティストへと進化した。そして国内外の一般の期待に反して反中国に舵を切るどころか、中国との緊密な関係を追求した。だがこれは後から考えると、逆に軍の警戒心を招いたかも知れない。

 スー・チーが米中間でバランスを取ろうとしたのは、新デタントに備えてミャンマーを犠牲することに備えているのではないか、と疑われていたとしても不思議ではない。その場合彼女はパンロン2.0を通じて連邦化を進め、それによって両超大国はミャンマー国内に独自の経済領地を切り開くことが出来る様になっただろう。

 これはスー・チーが当時中国と米国に対して等距離を置いていたことが証明されていたにも関わらず(そしてロヒンギャ問題に関して西洋から非難の的になっていたにも関わらず)、軍が政治介入を行った目的をはっきりさせる為の仮説だ。また政治介入後にミャンマーは西洋との関係を絶ったにも関わらず、過去30年の様に中国依存に逆戻りするのではなく、孤立主義に戻ったこともまた注目に値する。

 だが同時に、軍は中国・ミャンマー経済回廊(China-Myanmar Economic Corridor/CMEC)を支持し続けた。これは封鎖が容易なマラッカ海峡を回避して中国との間でエネルギーと物資の流れを促進する為の、一帯一路構想(BRI)で戦略的に最も重要なプロジェクトのひとつだ。
China-Myanmar Economic Corridor

 スー・チーは軍の承認を得て関連協定を締結する責任を負っていた一方、軍の方では単純な経済的現実を前に他に選択肢が無かった為、彼女が投獄された後もこの路線を継続した。



米中の介入

 米国はCMECが中国を封じ込める能力を損なうのでCMECには反対している。だからこそ、過去2年間に展開された暴力は中国に対するハイブリッド戦争の一部であると云う主張には説得力が有る。

 だが少数派やNLD政権の支持者達が正当な不満を抱いていると云う現実も否定出来ないので、道徳的に見てこの内戦をどう判断すべきなのかは単純に割り切れない。

 米国は初期に分裂した少数派の民兵(その一部は軍からテロ組織に指定されている)とバマール族の民主主義支持者達への支援を通じて、CMECに対してハイブリッド戦争を仕掛けている。

 他方中国も傍観している訳ではなく、「三兄弟同盟」(反政府武装勢力の初の大規模な団結を代表する)の一環として「1027作戦」に関与した周辺勢力の一部を、暗黙の内に支援したとして非難されている。中国は国境を越えて激増する人身売買を含む犯罪やオンライン詐欺に苛立ちを募らせているが、ミャンマー軍はこれらに共謀しているか、少なくとも取り締まりを急いではいない。その為これらの脅威を排除する為、中国はミャンマー内の漢民族に対して少なくともゴーサインを出して協力させたのではないかと疑われているのだ。

 米国はCMECを妨害する為にNLDの統治を復活させたいと思っているだけだが、中国の方では、既に大勢の中国人が軍の共謀または無作為の結果として急増する犯罪の犠牲になっている為、軍に対して少々警告したいだけかも知れない。

 「まさか中国が自国の直ぐ傍で反政府武装勢力を支援するなんて!」と思う人も居るかも知れない。況してや01/13に中国の仲介によって停戦が実現し、米国が支援する勢力がそれに対して全国規模で攻勢を強めているのだから尚更だ。だが、軍が11/19にヤンゴンで反中国デモを許可したことは、軍と中国との関係が、一部の人が考えている程強固なものではないことを物語っている。ここから、中国が犯罪組織の取締に於て密かに何等からの役割を果たしたのではないかと云う疑惑にも信憑性が生まれる。

 「三兄弟同盟」が結成されたのは、恐らく米国がウクライナの様な代理戦争モデルをミャンマーにも適用して代理勢力として支援し、隣国タイ経由で彼等を武装させた結果だ。そして軍に関する衛星やその他の情報を提供し、国民戦線を結成して反政府闘争を行うよう奨励したのだ。

 その延長線上として「1027作戦」が起こった。この名前は10/27に開始されたからで、これによって内戦開始以来最大規模の反政府進撃が行われた。



まとめ

 長い内戦の最新段階について結論を出す前に、ロシアとミャンマーとの関係はこの上無く良好になる一方、インドと米国の関係は急激に悪化していることについて触れておこう。ミャンマーが中国への過度な依存を防ぐ為にロシアと安全保障上のパートナーシップを結ぶ一方、米国は、自分達の命令に従わず独自の外交路線を追求していることでインドを罰したいと思っている。米国は騒乱を煽っているので、マニプールの暴動に見られる様に、セブン・シスターズ(インド北部)が不安定化する危険性が有る。 

 米国はミャンマーの内戦をロシアに対する代理戦争だと見做しており、その為にインドにも更なる圧力を掛けるかも知れない。他方中国は領土問題で対立するインドに問題を引き起こし、特定の武装勢力を支援することで、ミャンマーを自国に依存する状態に戻したいと考えているのかも知れない。

 ミャンマーは中印国境を跨いでいる為戦略的に重要だ。米国はこれを傀儡国家に変える為に軍政権を打倒したいと考えている。他方中国の動機は純粋に投機的なもので、警告を与える為に単に軍を弱体化させたいだけだ。

 また押さえておくべきは、国内の両陣営には正当な利益が有ると云うことだ。但し軍はロシアの支援を受けている一方、「三兄弟同盟」は米国、そして恐らくは中国も或る程度支援している。「三兄弟同盟」はミャンマーを掌握する為の米国の代理勢力ではあるが、中国が仲介した停戦に合意している。従ってスー・チー同様、或る程度のプラグマティズムが期待出来ると思われる。

 最善のシナリオは、ロシアの援助によって軍が地歩を固め、武装勢力が中国の仲介する包括的な和平協定に合意することだ。そうすれば最終的に、西洋の介入の有害な影響を中和する、公平な政治改革への道が開かれることになる。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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