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「恐怖と疑惑」:西洋諸国が見て見ぬフリをする中、EU加盟国ラトビアは何千人もの生来のロシア語話者を国外追放(抄訳)

2024/02/03のRTの記事の抄訳。ラトビアではロシア語話者に対する国外追放の動きが強化されている。

 この話題は日本人が最も苦手とする分野のひとつだろう。島国で育った日本人は、国と言えば何となく、単一の言語・民族・人種・文化・歴史・領土を単純に共有しているものと思いがちで(実際に日本にだってそれなりに複雑な陰影が有るのだが)、それを他国にも投影する傾向が有る。だが、そんな国は全世界を見れば寧ろ例外的であって、国の具体的な中身は常に流動しているのが普通だ。ウクライナ領土に関するプーチン大統領の主張を殆どの日本人がまともに理解出来ないのは、長年に亘って反ロシア・プロパガンダに教化されて冷静にロシアの言い分に耳を傾けることが出来なくなっているのも原因だろうが、ウクライナが極く最近人工的に作られたツギハギ細工の国であって、日本人がイメージする様なソリッドな実体を持った「国」と呼べる様なものではないことが理解出来ていないことも一因だろう。地続きで繋がったヨーロッパの歴史は日本に比べれば遙かに複雑怪奇で、固定したものではない。参考までに、バルト三国にロシア語を母語とする集団が一定数の割合で住んでいることを示した図を挙げておく。地政学アナリストのアンドリュー・コリブコ氏は、ラトビアのロシア人迫害はより大きなNATOの戦略構想の一環かも知れないと指摘している。
‘Fear and suspicion’: An EU state deports thousands of native-born Russian-speakers as the West turns a blind eye




ラトビアで進む民族浄化

 ラトビアは長年に亘りロシア語を話す住民達を迫害して来たが、今や彼等の内数千人が国外追放の脅威に直面している。

 ラトビアに留まるには、ラトビア国語の試験に合格しなければならない。合格出来ない者は国外追放だ。この要件は最近引き上げられたが、「非国民」、つまり生まれた時からラトビアに居住しているが、他の人々と同じ権利を与えられていない人々にも適用される。

 ラトビアでロシア語話者に対する人権制限は、恐らくロシアの特別軍事作戦開始後に強化されたのだと思われるが、この傾向はもう長い間続いている。



高齢者達を放り出す

 人々が国外追放されていると云う新しい報告が毎日発表されているので、プーチン大統領は政府に対し、海外に永住するロシア系住民の権利を保障する措置を提案すると共に、外国から不法に追放されたロシア人の本国送還に関して追加措置を講じるよう指示した(期限は2024/07/01)。

 ラトビアは何千人ものロシア語話者を「国家安全保障上の脅威」と見做して国外追放しているが、こうした粛清は最近居住許可申請を出した者ばかりでなく、生まれた時からラトビアに住んでいる高齢者達にも適用されている。或る高齢男性が国外追放処分を受け、その家族は残留が認められたケースでは、これは家族の「不分離原則」に違反しており「全く非人道的」だとロシアの外交官達は非難した。健康問題を抱える高齢女性が形式上ロシア国籍になっていることを理由に居住権、国民年金、医療を受ける権利を突然剝奪されたて泣き暮らしたケースも有る。これまでずっとラトビアで暮らして来てラトビア語を使えなどと言われたことの無かった高齢者がいきなりラトビア語試験を受けさせられて不合格で追放処分に直面するケースも有る。



ラトビアにロシア人の居場所は無い

 2023/12/18、ラトビア市民権移民問題局のマイラ・ロゼ局長はインタビューで、11/30までに言語試験に合格しなかった、または居住許可を申請しなかった1,000人以上を外追放するかも知れないと述べた。

 「彼等は(国で)働いておらず、(ここに)家族も居ません。言い換えれば、彼等にはラトビアに留まる理由が無いのです。」

 ロゼに拠れば、約2,500人のラトビア住民が「何もしなかった」か、語学試験に合格しなかった。同局はまた、これらの人々の一部が他の欧州諸国を経由してロシアに帰国したかどうかも調査する予定だ。

 約15,500人のロシア人がラトビアで永住許可を申請し、3,000人が一時滞在許可を申請している。10月初旬には、ラトビアに住む3,200人以上のロシア人が国外追放の可能性に関する通知を受け取った。ラトビアの法律では、永住許可は2023年9月で期限切れと云うことになっているので、通知を受け取った人は2ヵ月以内、つまり11/30までに国外に出なければならない。



ロシア語を話すと云う理由で追放される

 ロシア人とベラルーシ人の居住者は秋に許可延長手続きの修正案が発効した為、2023/09/01までに語学能力証明書を提出しなければならなくなった。不合格の場合は2ヵ月以内に再挑戦することが出来る。試験を受けなかった場合は一時滞在許可証を貰って後で受験することも出来る。その後幾つかの修正案を経て更に2年の猶予が与えられたが、その結果、現在ラトビアに住む約5万人のロシア人の約半数は、ラトビアに居住したければ語学試験に合格し、セキュリティ・チェックを受けなければならないことになった。

 13,147人のロシア人が試験に登録し、11,300人が試験を行った。初回合格者は39%で、6,500人以上が再受験に登録した。

 8月の時点で当局は、ラトビアに居住し、永住許可の延長を申請せず、EUの永住権を取得する為の語学試験に不合格、または受験しなかった約6,000人のロシア人は、出国要請を受け取ることになると警告した。この場合これらの人々は居住許可を失うだけでなく、年金を含む特定の福利厚生を受ける資格も失うことになり、退去までには3ヵ月の猶予しか無い。但し資格が有れば、他の居住許可(ビザや一時滞在許可)を取得する権利が有る。命令に違反し不法滞在を続けた場合、刑事責任は問われないが、罰金が科せられる可能性が有る。

 ラトビア当局者達は、新たな措置は大量追放に繋がるものではなく、現在ラトビアに居住するロシア人の内、必要書類を提出出来ていないのは「たった3,500人だけ」だと強調した。

 これに対してロシアの人権委員会は9月に、国連と欧州評議会に訴えると警告し、「重大な人権侵害」だと非難した。



「非国民(non-citizens)」問題

 ラトビアに於けるロシア語話者への迫害は今に始まった話ではなく、何十年も前から続いている。

 1991/10/15、ラトビア最高評議会は「ラトビア共和国国民の権利の更新と帰化の基本原則について」と題する決議を採択し、「非国民」と云う法的地位が確立された。

 当初この身分は、ラトビアがソ連の一部となった1940年以降に祖先がラトビアに移住した永住者に与えられていた。 1991年、ラトビアには74万人以上の非国民が居た。2020年の時点で非国民は197,888人(ラトビア居住者の10.4%)で、その殆どがロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人だった。

 ラトビアの非国民は多くの制限に直面している。彼等には投票権が無く、政府の地位に選出されることは出来ず、国民投票に参加することも出来ない。但しラトビアの政党に入党して経済的に支援することは出来る。非国民は特定の仕事に就くことも出来ない(例えば消防士、警察官、弁護士、公証人及びその助手、司法官、治安要員の責任者)。現在、国民と非国民の権利は80以上の点で異なっている。

 市民権を取得するには、非市民は言語と歴史の試験を含む帰化手続きを受けなければならない。2004年に帰化局が実施した調査では、市民権の取得を希望する非市民の大多数が、帰化手続きは屈辱的で難しいと回答している。

 ニューヨーク・タイムズの記事「バルト国リトビアで、恐怖と疑惑がロシア語話者に忍び寄る」でインタビューを受けた人々は、ロシア語を話す人々は市民権を拒否されることが多く、高齢者達はラトビア語を学ぶことを強いられているが、当然ながら彼等はそれは難しいと感じている。



紛争の副作用

 NYタイムズの記事は、この問題はロシアとウクライナ間の紛争の副作用だと解説している。

 ラトビア国会議員でナショナリストのヤニス・ドンブラヴァ氏は、ウクライナに於けるロシアの行動は、「(ラトビア国内に)『第5列』が存在するリスク」を示したと発言した。つまりラトビア語を話さず、ロシアのメディアを視聴し、屢々モスクワと見解を同じくする人々のことだ。「統合を望む者達は許してもいいが、ソ連の復活を待ち望んでいる連中は無理だ。連中は去るべきだ。」ラトビアに住んでいるのにラトビア語を学ぼうとしない者は、何か「帝国主義的」野心を持っている潜在的なロシアのスパイに違い無いと云う訳だ。

 ラトビア生まれの或るロシア人に拠ると、ウクライナ紛争はラトビアの民族的・言語的分断の双方の側を「過激化」させた。彼は最近、彼がロシア訛りのラトビア語を話すことに激怒したラトビア人の若者グループから強盗に遭ったと話している。但しロシア語話者達もより攻撃的になっており、自分達の利益を守る為に、「ロシアの(ラトビア)侵略」を期待する人も居る。

 ラトビアの人口は約180万人で、その大多数がロシア語を話せる。多くのラトビア人、特にソ連時代に教育を受けた人々は、母語であるラトビア語に加えてロシア語を使用している。

 但し、ラトビアの公用語はラトビア語のみであって、ロシア語は外国語扱いになっている。

 「ロシアの影響力」との戦いの一環として、ラトビアはロシアのTVを禁止し、第2次世界大戦で亡くなったソ連兵を追悼する記念碑を撤去した。また議会は全ての教育機関にラトビア語のみで指導することを義務付ける法案を可決した。移行期間は3年間だが、この法案では、ロシア語は「少数派の言語」としてのみ学習出来ることになる。

 この件についてロシア・メディアRTはラトビアの政治家達にコメントを求めたが、彼等はその求めを無視するか拒否した。「我が国では、ロシアのメディアとのコミュニケーションは刑事罰の対象となる」のだそうだ。
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川流桃桜

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