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ウクライナ待望の「安全保障」は誇大広告されているが、それが全てではない(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/01/12に署名された英国とウクライナとの安全保障協力協定は、一般に想像されているものとは全く異なり、現状を公式化したものに過ぎないが、これは西洋が紛争の継続・再開に向けて準備を整えていることを示している。
Ukraine’s Hoped-For “Security Guarantees” Aren’t All That They Were Hyped Up To Be



 2024/01/12に署名された「安全保障協力に関する英-ウクライナ協定」は、ウクライナに対する所謂「安全保障(security guarantees)」に関する初の公式協定であり、ゼレンスキーの10の「和平公式」のひとつに従っている、と云うことになっている(「紛争のエスカレーションの防止と、ウクライナに対する保証を含む欧州大西洋地域に於ける安全保障構造の構築」)。

 だが蓋を開けてみると全然違う。但しそれはメディア報道ではなく公式サイトの説明を直接読んだ場合にのみ判ることだ。自分で読んでみれば、ウクライナが待ち望んだ「安全保障」が誇大広告に過ぎなかったことが判る。

 この協定が安全保障関連の幅広い領域をカヴァーしているのは事実だが、一般大衆が想像していることとは違って、ウクライナが攻撃を受けたとしても、英国がウクライナに軍隊を派遣する義務は無い(VIII-3)。正確な文言は以下の通りだ。

 「英国はその様な況に於て、法的及び憲法上の要件に従って行動する場合、以下のことを行うことを約束する。
 ・ウクライナに迅速且つ続的な安全保障支援、必要に応じてあらゆる領域に及ぶ最新の軍事装備、そして経済支援を提供する。
 ・ロシアに経済的その他のコストを課す。
 ・そして国連憲章第51条に規定された自衛権を行使する際の必要性についてウクライナと協議する。」


 つまりこれは現時点で既にやっていることを一歩も出るものではない。この協定は単に現状を公式化したものに過ぎないのだ。

 フランスが計画している協定も同じ内容になるだろうし、他の国々についても同様だ。精々、既にウクライナに或る程度の支援を提供している50以上の国々が、新たな紛争が発生した場合の武器輸送、経済援助、制裁、外交調整を正式に定めた協定を結ぶ位が関の山だろう。

 この様な協力は規模と範囲の点では確かにユニークではあるが、ロシアの特別軍事作戦開始直後から米英ポーランドが如何に迅速にウクライナ支援を開始したかを考えると、これは一般市民が考えている程場当たり的な行動ではなかった。この代理戦争計画は事前に用意されていたのだ。

 ドイツの様な一部のNATO加盟国やROKの様な米国の同盟相手は当初は実行には消極的だったが、時間が経つにつれて、こうした協力体制は米国が主導する西洋のゴールデン・ビリオン(黄金の十億)の中ではスタンダードになった。そしてこれによって、グローバル・サウス諸国に対する将来の代理戦争に向けて、より緊密な調整が出来る様になるだろう。

 ウクライナが待望の「安全保障」を得たこと自体は、上述の様に全く中身が無いので重要ではない。但しこれは他国にウクライナへの派兵を義務付けるものではないことは念を押しておく必要が有る。

 これに関連する以前の分析はこちらだ。

 Korybko To Timofei Bordachev: You’re Right About NATO Enlargement Being A Threat To The US
 報じられたウクライナに対するEUの安全保障には、何故相互防衛義務が含まれていなかったのか?
 ウクライナ国会議員ゴンチャレンコは正しい:ウクライナがNATOに加盟する未来は無い(抄訳)

 一般的には不正確に想像されているであろうNATO憲章第5条の相互防衛義務は、実は状況に関係無く攻撃を受けていると判断した同盟国に軍隊を送ることを他国に義務付けるものではない。これは実際にはウクライナに約束されたことと略同じ内容だ。

 結局のところ、2023年末にウクライナ紛争が沈静化し始めた理由のひとつは、西洋諸国が「兵站競争/消耗戦」に於てロシアに全く太刀打ち出来ずに、供給が減少したことだった。これを考えると、2024年に紛争が継続した場合にウクライナに与えられる「安全保障」は精々、「ラムシュタイン・グループ(NATOその他の54ヵ国から成るウクライナ支援グループ」)の支援で安心させるだけとなるだろう。2022年2月の様にキエフ側から挑発を行った場合でも同じだろう。西洋には最早以前の様な軍事援助のペース・規模・範囲を維持するだけの余力が全く無いからだ。

 再軍備を整えるには或る程度の時間が必要だ。今後10年以内には、キエフが再び西洋から命令を受けて挑発を引き起こすかも知れない。

 01/14、エストニアのカラス首相は、西洋諸国にはロシアとの戦争の準備期間は後5年しか無いと主張した。だが恐らく彼女は実際には2030年までに紛争を再燃させる為に、再軍備を急がせようとしているのだろう。

 西洋は、これ以上軍事援助を続けることは出来ないので、紛争凍結に向けた合意が得られる可能性は有る。だがロシア側は最初から言っている通り、特別軍事作戦の3目標(ウクライナの非軍事化、非ナチ化、中立化)が達成される場合にのみ合意に応じるだろう。ここで西洋はジレンマに陥ることになる。彼等は紛争を続けることは出来ないが、ロシアの要求にも応えたくないからだ。

 ロシアの「安全保障」要求を満たす外交的打開策が取られなければ、紛争は継続し、それはロシアにとっては更なる利益になる。これはウクライナの降伏か、NATOによる直接介入、または妥協に繋がるだろう。

 最終的に何が起こるにせよ、現在の力学では、和平交渉の見通しは無いし、西洋の援助は減少しているにも関わらず、西洋は既に2030年までの紛争継続に備えている。

 英国と、そしてこれから結ばれるであろう他の西洋諸国とウクライナとの「安全保障」協定は、各国の軍隊をウクライナに送ることは義務付けない。これはつまり、ウクライナを守るのではなく、進行中の戦争が何時終わろうとも、何時でも新しい代理戦争を順調に始められるようにする為の準備だと言える。現状を公式化しただけの協定は、一般市民が想像している様な内容では全くない。
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川流桃桜

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