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今後のソマリアへの武器輸送には厳格なエンドユーザー協定を条件付けるべきだ(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/12/01にソマリアに対する武器禁輸措置は解除されたが、対テロ用に今後ソマリアに送られることになる武器は、ソマリア連邦政府がエチオピアをアル=シャバーブよりも優先されるべき脅威だと恐怖を煽っている為、両者がファウスト的取引を行った場合には、エチオピアやソマリランドに対するテロ攻撃に使われる可能性が有る。
Forthcoming Arms Shipments To Somalia Should Be Conditional On Strict End-User Agreements



 2023/12/01、国連安保理はソマリア連邦政府(FGS)に対する30年間に及ぶ武器禁輸措置を解除した。これはソマリアの対テロ能力が強化されることを期待しての措置だったのだが、2024/01/01のエチオピアとソマリランド港湾協定を受けてソマリア当局がテロ組織アル=シャバーブよりもエチオピアの方が自国の存亡にとって脅威であると恐怖を煽ったことで、このシナリオは危うくなっている。

 港湾協定によってエチオピアと云う共通の外部の敵が生まれることによって、FGSとアル=シャバーブは奇しくも利害が一致することになった。これによって宿敵同士だった両者が手を結ぶのではないかと云う疑いが生まれて来ている。

 両者が密かにファウスト的取引を行った場合、ソマリア当局はテロ掃討作戦の実施を延期し、その引き換えにアル=シャバーブはエチオピアやソマリランドに対してハイブリッド・テロ攻撃を仕掛けることになる。その場合、曾てのテロリスト達はエチオピアに立ち向かう「英雄」であるとブランド変更され、若しその気が有ればFGSとの間で和平交渉が開始されるかも知れない。実際、ソマリアのハッサン・シェイク・モハムド(HSM)大統領は対話の可能性について「望ましい選択肢」だと述べている。

 アフガニスタンでの前例を考えると、このシナリオは不吉なものだ。米国の同盟相手であったタリバンが最終的にアフガン全土を掌握した様に、この裏取引によって勢いを増したアル=シャバーブが最終的にソマリア全土を掌握する可能性も考えられないものではないからだ。このシナリオはソマリア国軍が強力になれば防ぐことが出来るだろうと云う前提で武器禁輸措置は解除された訳だが、ソマリアに輸送された武器が素直にテロ退治に使われるかどうかは今や怪しくなって来ている。

 米軍が2021年半ばにアフガンから撤退した様に、アフリカ連合ソマリア暫定ミッション(African Union Transition Mission in Somalia/ATMIS)の17,500人の兵士達は今後11ヵ月以内に段階的に撤退することになっている。これはアフガン同様にその過程で安全保障上の空白を生み出し、アル=シャバーブはタリバンの様にこれを利用するかも知れない。従ってそれまでにソマリア国軍がATMISから出来るだけ多くのことを学び取って、自力で自国の安全を確保出来るようにしてく必要が有る。

 ところが肝心の大統領がテロ組織よりも寧ろエチオピアの方が自国に対する脅威だと恐怖を煽っているものだから、ソマリア国軍はテロ対策よりも寧ろエチオピア対策の方に集中する可能性が有る。その場合、アル=シャバーブの脅威は単に無視されることになるかも知れない。

 国軍の心配をしなくて良いとなれば、アル=シャバーブが勢力を拡大する隙が生まれるだろうが、それどころかソマリア国軍の代わりにエチオピアやソマリランドを攻撃した場合には、ソマリア国軍から武器を提供される可能性すら有るだろう(「(国軍内部の)腐敗」が上手い隠れ蓑になってくれる)。

 つまり、テロ退治の為に禁輸措置を解除されてソマリアに運び込まれた武器は、寧ろテロ組織を支援してエチオピアやソマリランドを攻撃する為に使われる可能性が有るのだ。

 従って今後ソマリアに武器を送った国々は、自覚的にせよ無自覚的にせよ、エチオピアとソマリランドに対するテロ攻撃に加担する可能性が有るのだ。どちらにせよそれらの武器の洪水はエチオピアとソマリアとの間の安全保障上のジレンマを悪化させ、それによってテロではなく正規戦争が勃発するリスクが高まることになる。エチオピアの封じ込めを狙っているエジプトやエリトリアは、正にそうした事態になることを望んでいるだろう。この2ヵ国が介入した場合、それはウクライナでの様な、ソマリアを捨て駒にした代理戦争になる。

 トルコはエチオピアの緊密な軍事パートナーだが、トルコはソマリアに対テロ作戦用に最大の国外拠点を持っている。従ってトルコがソマリアに武器を送ることも有り得るが、その場合、それらの武器はトルコの意思に反してパートナーであるエチオピアに対して使われるかも知れない。

 従ってトルコや似た様な立場に置かれている国々にとって、エチオピアとソマリアの安全保障上のジレンマを不用意に悪化させることを避ける最善の方法は、今後の武器輸送に厳格なエンドユーザー協定を条件付けることだ。全てまたは一部の武器は対テロ作戦にのみ使用出来ると規定してしまえば良いのだ。

 但し米国とパキスタンで同様の協定が結ばれた際には、パキスタンは強力な検証メカニズムを欠いていた為、この条件に従わなかったと伝えられている。ソマリアも同様に条件に従わないかも知れないので、強力な検証メカニズムを設けることが不可欠になる。

 責任有るパートナー諸国が真摯な意図から対テロ作戦用の武器をソマリアに送る場合には、こうした縛りを付けておくことが絶対に必要だ。これ無くしては地域の不安定化に繋がる可能性が有るし、そうした保証を素っ飛ばした場合には、彼等には何か下心が有るのだと言われることになる。アフガンでタリバンが権力を掌握した様な事態をソマリアで繰り返させない為には、こうした政策を実行する必要が有る。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
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