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故アンドレ・ヴルチェクのロシア讃歌

アンドレ・ヴルチェク氏はチェコの核物理学者を父に、ロシア人と中国人のハーフの画家を母にレニングラードに生まれ、チェコで育った米国人で、世界160ヵ国を股に掛けて活躍した異色のジャーナリスト。2020年に惜しくも56歳の若さで星の世界へ旅立ったが、ここでは2014/12/26に掲載された彼のエッセイ「帝国は崩壊しつつある。だからこそ戦争を必要としている」から、ロシアに関する冒頭部分を抜き出してみた。このエッセイは彼の共著 The World Order and Revolution!: Essays from the Resistance にも収録されている。

 ここ2年で全人類が目の当たりにしたロシア人の、堕落した西洋人や名誉西洋人には最早到底信じられない程の真のキリスト教的自己犠牲の精神と忍耐力、そして恐るべき偉大さに心から敬意と畏怖の念を払いつつ、世界が迎える新しい年の到来を祝いたいと思う。2024年は恐らく世界の歴史が多極化へ向かう大きなコーナーポイントだ(金融時限爆弾は流石にそろそろ爆発するだろうし、2022年の衝突を予測していたセルゲイ・グラジエフも、対立のピークは2024年だとか言っている)。私はネットの片隅に巣食う迷走してばかりの野良犬に過ぎないが、今年も出来るだけシンプルに行こうと思う。「くたばれファシズム! ふざけろ帝国! 人類は素晴らしい! 世界は美しい!」
The Empire is Crumbling, That is Why it Needs War





 ………言うまでも無く、私は実際には「厳密な意味で」ロシア人ではない。確かに、私の生まれはレニングラードだが、人生の略全てを他の場所、正確に言うと世界中で過ごして来た。そして私の血管の中では、それだけが本当に意味を持っている訳でもない。全てが混濁してもいる………ロシア人、中国人、ヨーロッパ人の血が爆発的に混ざり合って循環しているのだ。

 しかし最近私にとって、そして他の多くの人々にとって、ロシア人であると云うことは、単なる血の問題以上の意味を持っている。 「私は反逆者である。従って、私はロシア人である。」アルベール・カミュの言葉を借りればそうなる。或いは、「私はロシア人である。何故なら、私は闘争の放棄を拒否するからだ。」

 「ヤー、ルスキー(そうだ、ロシア人だ)!」や「Cubano soy(私はキューバ人だ)!」これは単純に気分が良くなるし、誇りと強さが生まれて来る。

***

 世界は混乱に陥っている。1940年代初頭の様に、何か途轍も無いものが形を取り始め、何か取り返しのつかないものになりつつある。

 帝国が広めるプロパガンダとニヒリズム、そして地球の隅々まで伸びるその毒の触手に抗って帝国を分析して来た我々の略全員が、西洋の帝国主義に対して「宥和策」を取ることは不可能であることをはっきりと知っている。それは現実的ではないし、不道徳だ。

 ジョージ・W・ブッシュが(明らかにキリスト教原理主義者のレトリックから借用して)好んで言った様に、「あなた方は我々に味方するか、我々に敵対するかのどちらかだ。」現在、各国は明らかに瀬戸際に立たされている。「西洋の新植民地主義の教義を受け入れるか」、さもなくばイラク、アフガニスタン、リビア、シリアの様に次から次へと破壊されるかのどちらかだ。

 如何なる論理も役には立たない。交渉も、国連による国際調停も無い。妥協への意志は嘲笑される。シンプルな人間的思いやりを訴えても、帝国の支配者達は微動だにしない。

 帝国が最終攻撃に備えていることは明らかだ。後戻りは有り得ない。それは攻撃し、破壊し、殲滅するだろう。何時になるかは分からないが、必ずそうなる。そしてそれは遅かれ早かれ、寧ろ早目に、途轍も無い勢いで起こることだろう。

 何故今なのかと疑問に思う人も居るだろう。何故突然、地球の完全な支配を巡る最後の戦いへとこれ程急ぐ様になったのだろうか?

 答えは非常にはっきりしている。人類史上初めて、帝国に対する嫌悪感が広がった、それも世界中に広がったからだ。

 多くの人々が目を開き始めた。
 
 慈悲と合理性の仮面は、ラテンアメリカ諸国、ロシア、中国、イランに拠点を置く強力なメディアによって剝がされて来たが、北米でも、独立系メディアが益々重要な役割を果たしている。

 それは最早入り組んだ「客観性」の問題ですらない。曲がった鏡を真っ直ぐにするには、ファシズムをその本当の名前で呼ぶだけで十分だ。帝国が全大陸で行って来た大量殺人を特定するだけで十分なのだ。

 仮面が剝がれ落ちた後で白日の下に晒されたのは恐ろしいものだ。血と膿に塗れた怪物の顔、貪欲な笑み、そして無慈悲な牙。自分自身と恋に落ちた儘、自分の恐ろしさを一向に理解出来ない怪物だ。

 その怪物は自分の基本的な宗教的教義を誇りに思っているが、多くの場合、それを「宗教的」だとさえ思っていない。

 それは独善に凝り固まり、同時に、あらゆるもの、全ての人が売り物だと云う歪んだ市場原理主義的な信仰にも執着している。優越感と劣等感、両方のコンプレックスでいっぱいになった怪物だ。それは幸せな怪物ではなく、それが生み出した人々の殆どは、惨めで、孤独で、怯えている。

 しかしそれは変わることも、引き返すことも、手放すことも出来ない。何年も、何十年も、何世紀にも亘って自分達が完全に間違っていたことを認めるよりも、自分の子供達と世界を破壊することをその怪物は選ぶ。

 今や多くの人々がうんざりし、どうやって怖がったらいいのかを忘れてしまった人さえ居る! 怪物はそのことを知っているし、実際、怪物自身が、怪物を怖がらない人々のことを怖がっている。

 声無き人々の声は今、益々大きく響き渡っている———我々はそのことを確信している!

 インドネシアやマレーシアの様に、知識人や「エリート」が完全に売却済みになってしまった国々を除けば、ヨーロッパと北米の植民地主義と新植民地主義の恐るべき行為の数々が、今漸く議論され、分析され、理解されつつある。

 そして怪物、帝国は、それが終わりの始まりであることを知っている。

 対等に生きることは出来ない。だから、最終決戦を戦わねばならない。

 それは勝とうとするだろう。ひょっとしたら、世界を滅ぼそうとするだろう。何故なら怪物にとって、世界を完全に支配するのでなければ、その神が支配するのでなければ、自分が聖なる託宣の執行者と見做されるのでなければ、人生は生きるに値しないからだ。

***

 ベイルートやアンマンの理髪店を訪れて、「何処から来たんですか?」と尋ねられる時(ほんの数年前までは、これは答えるのが実に難しい、ややこしく複雑な質問だった)、私は今では単純に「ロシアです」と答える。すると人々が来て私をハグしてこう言うのだ、「ありがとう」と。

 それはロシアが完璧だからではない。 地球上のどの国も完璧ではないし、またそうあるべきでもない。

 それはロシアが再び帝国に抗して立ち上がったからであり、帝国が余りにも多くの恐怖と、余りにも多くの屈辱を、余りにも多くの人々に齎して来たからだ、世界中の何十億もの人々に………そして彼等にとって、彼等の非常に多くにとって、帝国に立ち向かう者は誰であれ、英雄なのだ。

 これは私が最近、幾つかの場所を挙げるだけでも、エリトリア、中国、ロシア、パレスチナ、エクアドル、キューバ、ヴェネズエラ、南アフリカ等で直接耳にしたことだ。

 だからこそ今帝国は「あんなに急いでいる」。これ以上待つことを望まず、ロシアを挑発しようと試み、喩えるならば古代にアレクサンダー・ネフスキーが分厚い氷の上で戦った様な、また新しい歴史的な戦いを開かせようとしている。

 帝国は余りにも慌てていて、余りに恐怖に戦いているので、過去のあらゆる侵略者達が多大な犠牲を払って学ばねばならなかったことについて、考えることも、理解することも、思い出すことも出来ない。

 ロシアを攻撃することは出来る。何百万人ものロシア人を殺すことも出来る。荒廃や大火がロシアを覆うだろう。廃墟が広がり、涙と墓、墓、墓………母親達は息子達を埋葬し、息子達が家に帰っても、目にするのは灰塵だけ。

 だがロシアを打ち負かすことは出来ない。

 世界の存続が危機に瀕した時、ロシアが立ち上がる。巨大で、強力で、恐ろしいロシアが。

 そして他のどの国にも真似出来ない様な戦いを戦う。

 ロシアは自分の為だけではなく、人類の為に戦う。

 そしてロシアは勝利する。

 その様な瞬間が訪れた時、ロシアを倒す方法は唯ひとつ、全世界を破壊することだ。

P. TCHAIKOVSKY - Symphony No.4, f moll, Op.36 [New York Philharmonic, Leonard Bernstein]
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ソ連「帝国」

明けましておめでとうございます。連日の非常に意義深い記事有り難く拝読させていただいております。ヴルチェクの文章で記憶にあるのは「ソ連時代、モスクワは他の東欧首都よりも貧しかった。こんな帝国が嘗てあっただろうか。」僕個人の体験でも80年代のモスクワの生活は東ベルリン、プラハ、ブダペストよりも確実に格段に劣るものでした。何故か。それはソ連はロシアだったとしか言いようがないと思っています。一概に利他的であるとは言いませんが、ロシア人は見かけよりも内実を重視し、本質に迫ることを好む性質があるように見えます。今の前線の兵隊さんの口からも「真実への力」という言葉を度々聞きます。本年も色々とご教示いただけることを楽しみにしています。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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