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ロシアとの関係を強化するネパールの計画は、地政学的バランス調整に役立つ(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/11/30のネパール首相の発言は、ネパールがロシアと接近することで、中印米、3つの大国の間でバランスを取ろうとしていることを示している。
Nepal’s Plan To Strengthen Ties With Russia Can Optimize Its Geopolitical Balancing Act




 2023/11/30、ネパールのプシュパ・カマル・ダハル首相(別名プラチャンダ。現在3期目)はTASS通信のインタビューに初めて答え、直行便の再開や水力発電プロジェクトへの協力を提案し、近い内にモスクワへ行きたいとの熱意を表明した。

 全体的に見て、プラチャンダはネパールが地政学的なバランス調整を行う為にロシアに頼ろうとしている様だ。これは非常にプラグマティックな判断だ。

 ネパールは中国とインドに挟まれているが、両国は2017年から激しい対立を繰り返しており、2020年夏には戦争が起きそうになった。

 ネパールは1996〜2006年に内戦を経験しており、その和平プロセスの一環として、ヒンドゥー教の君主制から連邦共和国に移行した。

 だが、地域と党派の分裂、中印対立の影響、そして米国の干渉疑惑が状況を複雑にし続けている。

 ネパールは中国、インド、米国との間でバランスを取らなければいけないのだが、ここにロシアのピースを組み込まなかった場合、これら3国のどれかとそれぞれ二国間関係を結んだ場合、それは残りの2国または片方によって、自国に敵対する為のものだと誤解されるリスクが有る。そうなれば予期せぬトラブルが持ち上がるかも知れない。

 国際関係学者が使う用語で言えば、ネパールは典型的な安全保障上のジレンマに陥っている。つまり、或る国が平和的意図によって行う動きが、それが一方的であるか他国と共同で行われているかに関係無く、別の国によって脅威であると誤解されると云う状況だ。その別の国が平和的意図からこれに対応しようとすると、それがまた他国に誤解され、更なる対応を生むことになる。

 この見解は単なる憶測ではなく、プラチャンド自身がインタビューでそのことを示唆している。

 「ネパールはアジアのふたつの巨人、インドと中国の間に位置しており、我々にとってこれは非常にデリケートな地政学的状況です。中国と米国、中国とインドの間には、一定の矛盾が見られます。インドと米国でさえ、南アジアの地域状況を異なる見方で見るかも知れません。ここでは非常に複雑なプロセスが行われます。」

 ネパールはこの3国の間で何とか平和的なバランスを保たねばならないのだが、この安全保障上のジレンマを放置しておくと、最悪のシナリオではネパール国内の安定を損ない、制御不能に陥る可能性が有る。

 しかも米国は寧ろそうなることを望んでいる。米国はネパールを地域的影響力の砦に変えたいと思っているが、最後の手段としてネパールを無政府状態にしておくだけでも、中国とインドに対して短期的なハイブリッド戦争を仕掛ける時の兵器として利用出来るからだ。

 プラチャンダはそうした不安定化シナリオを、ロシアとの関係を強化することで回避しようとしている。

 中国とインドは依然対立を続けているが、両国とも、ロシアと重要な戦略的パートナーシップを結んでいる。両国は互いに信頼してはいないものの、ロシアのことは信頼している。

 従ってネパールがロシアと関係を強化しても、これら2国からその意図を疑われたり脅威と受け取られることはない。つまりネパールは中印からの圧力に対する安全弁としてロシアに頼ろうと考えているのだ。米国さえ、これに過剰反応すればネパールからの信用を失うことになるかも知れないので、対応を和らげるかも知れない。

 ロシアに接近した罰として米国がネパールに制裁を課したり、ネパール政府に対する抗議活動を支援したことが判明したりした場合には、プラチャンドは米国から距離を置こうとするかも知れない。

 そしてその場合中国とインドは、互いの対立を一時脇に置いて、米国を追い出すと云う共通の利害の為に連携するかも知れない。どちらもネパールが米国の拠点に変わることも、ネパールが無政府状態に陥って米国が中印にハイブリッド戦争を仕掛ける為に兵器化されることも望んでいないからだ(例えば米国がネパールを乗っ取った場合、ネパールがチベットの分離主義過激派を受け入れたり、南部に居住するインド系マデシ族に対して差別政策を課したりするかも知れない)。

 プラチャンダは恐らく、ロシアに接触したことに対しては米国は自制するだろうと計算している。うっかり過剰反応して、中印が連携して米国を追い出そうとする事態になったら困るからだ。

 中国、インド、米国の一部はネパールと他の国々との関係について色々と批判しているが、ロシアとの戦略的関係を育むことで安全保障上のジレンマに対して創造的な解決策を開拓しようとしているプラチャンダは、客観的に見て賞賛に値する。彼はこの地域を不安定化させるリスクの有る競争力学を再構築しようとしている。この目論見が成功するかどうかを見届けるのは興味深いことだろう。
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弱小国家の苦悩ですね

 大国に帰属すれば保護を受けられるが、一歩間違えば国を乗っ取られるかもしれない。実際にイギリスやアメリカ、フランスその他はそうして乗っ取りを繰り返しています。
 けれども、大国に帰属しなければ、その大国以外の国家から攻められ利用される。これが弱小国家の運命です。
 無論、古代中国のように同じ言語を使っている民族同士ならば、吸収合併が起きても庶民には影響があまりない事もありますが、民族が異なり言語も異なるとなれば、日本がしたように大量虐殺に至るでしょう。
 ネパールは多民族国家ですから、中国とインドが敵対している限り、国内でも、漢民族系、インド系、インドネシア系など、相互の関係が悪化する恐れがあります。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
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