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報じられたウクライナに対するEUの安全保障には、何故相互防衛義務が含まれていなかったのか?

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/11/22にブルームバーグが報じた、ウクライナに対するEUの安全保障協定草案には、相互防衛義務が盛り込まれていなかった。これは西洋が来るべき紛争凍結時、計算違いからロシアとの直接対決に巻き込まれるリスクを負いたがっていないことを示している。
Why Don’t The EU’s Reported Security Guarantees To Ukraine Include Mutual Defense?



EUの草案

 西洋がウクライナを使ってロシアに仕掛けた代理戦争は最早凍結するしか無いが、西洋はその際、計算違いによっててロシアとのより大きな紛争に巻き込まれるリスクを負いたいとは思っていない。

 ウクライナを使ったNATOの対ロシア代理戦争は終息しつつある模様だと以前に分析したが、2023/11/22のブルームバーグの報道もまたこれを裏付けるものであり、これは確実にゼレンスキーと彼の一派を失望させるだろう。

 この記事は12月にEU指導者間で議論される予定の、ウクライナに対するEUの安全保障協定草案について報じているが、その要点は以下の通りだ。

 ・欧州の防衛産業を動員する「ウクライナへの軍事装備供与の為の予測可能、効率的、持続可能且つ長期的なメカニズム」。

 ・ウクライナ軍に訓練を提供する。

 ・ウクライナの防衛産業との協力を強化し、能力を拡大し基準を調整する。

 ・サイバー脅威やハイブリッド脅威、偽情報に対抗するウクライナの能力を強化する。

 ・ウクライナの地雷撤去活動を支援し、爆発物残骸による汚染に対処する。

 ・ウクライナのEU加盟プロセスに関する改革課題を支援すると共に、銃器、軽火器、弾薬の在庫を監視し、違法取引に対抗する能力を強化する。

 ・国のエネルギー移行と核安全化への取り組みを支援する。

 ・諜報と衛星画像を共有する。



この草案の分析

 これらの提案された安全保障はそれぞれ既に実行されており、従ってこの協定草案はそれらの既成事実を国際法レヴェルで正式なもにとするに過ぎない。

 但し、この草案に明らかに欠けているのは、NATO第5条で定められた、相互防衛義務への言及だ。キエフはロシアの特別軍事作戦開始前から、必死でこれを求めて来た。そしてこの目標追求こそが、既に10年近く続いているウクライナ紛争の最新段階に大きく寄与したものなのだ。

 西洋は夏の反攻に希望を持っていたが、何十億ドルも費やして過剰に宣伝された作戦は、議論の余地無く失敗に終わった。これにより、計算違いからロシアとの直接紛争に巻き込まれるリスクを冒そうとする彼等の意欲は、曾て無い程までに低下している。

 そしてそれに反比例して、この代理戦争の凍結に関してロシアとプラグマティックな妥協に達することに対する関心は現在、これまで以上に高まっている。

 プーチンは6月の時点でロシアもまたこの問題に関心を持っていることを繰り返し示唆したが、彼はこの動向に着目して、11/20のG20サミットでも、ロシアが和平交渉を諦めたことは一度も無いことを再確認した。

 ブルームバーグがウクライナに対するEUの安全保障について報じたのは、こうしたコンテクストの中でのことだ。

 ロシアは明らかに、ウクライナに対してその様な保証が与えられないことを望んでいるだろうが、EUが二者間協定の形で既存の援助を国際法に組み込むことについては、受け入れる用意が有る様だ。

 同様に、紛争を凍結して現状(2014年以前のウクライナ領土に対するロシアの支配力は2倍以上になった)を黙認したがっている西洋の政策立案者は誰も居ないだろうが、彼等は協定の対価として紛争凍結を行う意欲は有る様だ。

 この交換条件が停戦交渉の土台を作った場合、米国は、最早「面子を保った」儘撤退する為に、これに同意するかも知れない。この紛争は地戦略的には最早逆効果でしかなく、覇権の衰退を反転させるどころか、覇権の衰退を速めただけだった。

 このシナリオが実現すれば、米国は中国との緊張緩和にもっと集中するかも知れない。米国の政策立案者達の間ではリベラル・グローバリスト派閥とプラグマティスト派閥が争っているが、この結果はその双方の利益に適うだろう。
 
 リベラル・グローバリスト内部のより穏健な派閥は、世界の二極化へ向けた中国との「収束」(G2/チャイメリカ)と云う大戦略を推進する為に「新たなデタント」を望むだろう。

 またプラグマティスト派閥に関しては、中国との熱い戦争が始まる前に、枯渇した西洋の備蓄を補充する時間を稼ぐことが出来るだろう。

 これらについてはここではこれ以上詳しく説明しないが、本題に戻ると、EUが提案したウクライナに対する安全保障に相互防衛義務の項目が含まれていなかったのはその様な理由によるものだ。後になって相互防衛義務が草案に盛り込まれる可能性も有るが、これまで説明した様な理由から、その可能性は低いと思われる。



結論

 纏めると、この代理戦争は確実に終わりに近付いており、そして西洋は紛争が凍結した場合、計算違いによってロシアとのより大きな紛争を引き起こすリスクを負いたくないと思っている。
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川流桃桜

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