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「最低限の生活を保障する制度」は「最低の生活を強要する制度」ではない。

 兵庫県小野市が、ギャンブルを行っている生活保護受給者の公共監視条例(市福祉給付制度適正化条例案)を提案したことに絡んで、生活保護受給者にギャンブルをする権利が有るかどうかと云うことが話題になっています。ネット上では圧倒的に「当然のこと」として条例を支持する意見が多いのですが、何故それが「当然」なのかと云うことを私にも納得の行くように解説してくれているコメントがひとつも無いので、ちと思ったことを書いてみます。実際生活保護受給者でギャンブルにうつつを抜かしている方の率は非常に低いと云う統計も出ているのですが、今回はそれに拘らずに飽く迄理念上の問題として考えてみます。

 皆、生活保護制度にスティグマを押し付け過ぎではないか、と云う感想が先ず一点。現状でさえ生活保護を受給する為には、車を持っていたら駄目だとか扶養義務の有る親族が健在なら駄目だとか「働ける状態」なるものにあったら駄目だとか様々な条件をクリアしないといけないのですが、それは即ち「自分が如何に困窮していて自力では絶対に生活出来ない」ことを証明しないといけないと云うことです。なのでその困窮状態の条件から外れていると、水際作戦でケンモホロロに追い返されてしまう訳ですが、いざ受給出来たとしても、その先には更に受給したお金を貯金したら駄目だとか、受給者を困窮状態の儘にしておく為の作戦が待ち構えています。これは最早、自分達だけ生活保護と云う便利なものによって労働市場の悪夢、生活の重荷から逃れることが出来てしまった人達への懲罰と考えると分かり易いです。と云うか、そうとしか理解出来ません。「あの野郎、俺達の税金で楽しやがって………」と云うルサンチマンが、受給者の生活を権利ではなく、困窮とのバーターとして与えられる恩恵として捉える温情主義と相俟って、不毛な弱者叩きを引き起こしているのではないかと。

 日本人には憲法によって生存権が保障されていますし、国際人権規約も批准しているし、「最低限の文化的生活」を送る権利は誰にでも無条件で等しく認められている筈なのですが、現状ではこの「最低限」と云う条件がひとり歩きをして、「生活保護受給者は最低の生活をしていなくてはならない」と云う強迫観念に変わってしまっているのではないでしょうか。無論誰もが自力で生活出来るのであれば問題無いし、社会福祉の予算も大幅にカット出来て万々歳なのでしょうが、現実には様々な理由によってそれが困難な人達が一定数存在する訳です。そして誰かが現実に「自力では生活出来ない状況」に陥ってしまった時に、国家や地方自治体はそれを救済する「義務」を負っているのですが、どうもその辺の感覚が麻痺していしまっていて、「俺達の税金を使ってわざわざ無能な怠け者達を助けてやっているんだ」と云う、上から目線の考えが定着してしまっている人達が余りに多いのではないかと。だから400%の漏給率よりも0.4%の不正受給の方に世間の目も向くのでしょう。そこには「何時自分もああした境遇に陥るかも知れない」と云う危機感の自覚から目を逸らそうとする、意図的な想像力の欠如が認められます。

 「最低限の文化的生活」が、少なくともギリギリ他の人が最低水準と考える生活を意味するとします。ですがだからと云って、生活保護の受給者が常に「最低ギリギリの生活」を送らねばならない、と云うことの理由にはなりません。自分の裁量の範囲内で貯金したり一寸した贅沢をしたり出来るのであれば、受給者の遣り繰りの仕方について他の人があれこれ云う筋合いは無い訳です。何時も餓死寸前の生活で少しの息抜きも許されないとしたら、それは「最低限の文化的生活」と言えるでしょうか。

 今回話題になっているのはパチンコや競輪競馬等のギャンブルですが、こうしたものが非受給者が楽しんで良いものであれば(今回はギャンブル自体が合法かどうなのかと云う問題は棚上げにしておきます)、受給者もまた楽しむ権利が有る筈です。確かに「あいつら、俺達の金を使って遊びやがって………」と云う感情的な反撥が出て来るのは解ります。ですがそうした娯楽には、一体何処で線引きが出来るのでしょうか。例えば受給者が煙草やお酒を楽しむのは不適切でしょうか。漫画を買うのは不適切でしょうか。高い外食を食べるのは不適切でしょうか。ネットの掲示板に書き込むのは不適切でしょうか。何処までお金のかからない娯楽であればOKなのでしょうか。実際のところ、こうした非国民狩りみたいなことをやっていたら際限が有りません。「お互い様」と云う視点が欠落したこうした感情的な反撥は、エスカレートさせて行くと大変危険です。その先に待っているのは相互監視排除社会です。

 まぁギャンブルと云うものは中毒性が有りますから、ギャンブルで身を持ち崩して生活が成り立たなくなってしまっている人も実際に居る訳ですが、そうした人達には生活保護を受給しているか否かに関わらず、中毒から脱する為の何等かの支援策を行えば良い訳で、わざわざ受給者に限定する理由にはなりません。お酒や煙草等についても同様です。ギャンブルそのものの是非については今回は取り上げませんが、私の結論はこうです。「非受給者がギャンブルを楽しめるのであれば、受給者がギャンブルを楽しんでも一向に差し支えは無い。」受給者が享受することの出来る娯楽に明確な線引きが出来ると良いのですが、そんな線引きが出来ると云う説得力の有るコメントにはまだお目に掛かったことが有りません。なので現時点では、生活保護受給者も普通の生活が送れるべきだと云うのが私の結論です。

 生活保護は懲罰制度ではありません。受給者は犯罪者ではありません。弱者叩きにセッセと精を出している方々は、「自分達がそう云う状況に置かれてみたら」と云う想像力を少し働かせてみることをお薦めします。






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川流桃桜

Author:川流桃桜
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