fc2ブログ

ブローバック: ガザ戦争がイスラエル経済に与えた多大な被害(抄訳)

キット・クラレンバーグ氏の2023/11/13の記事の抄訳。代替メディアで流通している「ハマスの攻撃はイスラエルによる偽旗作戦だ」と云う説に関して、私はアンドリュー・コリブコ氏の「そのシナリオではイスラエルが失うことになる経済的機会は大き過ぎるので有りそうにない」と云う分析を紹介したが、この記事はその説を更に裏付けるものだ。この戦争がイスラエルによって仕組まれたものであったにしては、イスラエル側は経済的損失に対する備えが全く出来ていなかった様に見える。短期的な損失をカッコに入れてでも達成したい長期的な目標が有る、とでも云うのであれば話は別かも知れないが、イスラエルによる10/07以降のパレスチナ人に対するジェノサイドは、損得勘定を度外視した感情的(またはイデオロギー的)暴走である様に私には見える。
Blowback: The Gaza war's massive toll on Israel's economy



イスラエル経済は大打撃を被っている

 2023/11/06、フィナンシャル・タイムズは、イスラエルのガザ戦争による壊滅的な経済的被害についての異例の調査結果を発表した。
‘I’m not sure we’ve got a safety net’: Israeli businesses buckle as war hits economy

 それに拠れば、その影響は個人の財政、雇用市場、企業、産業、そしてイスラエル政府そのものにまで及んでいる。戦争によって「何千」もの企業が混乱と被害を受け、その多くが倒産の危機に瀕しており、業界全体が前例の無い危機に陥っている。

 イスラエル中央統計局のデータに拠ると、10/07にハマスのアル・アクサ洪水作戦が開始されて以来、3社に1社が休業しているか、20%の稼働率で営業している。半数以上の企業が50%を超える収益損失に直面しており、ガザに最も近い南部地域では2/3が閉鎖されるか、「最小限に」機能している。

 更にイスラエル労働省の報告では、764,000人(イスラエルの労働人口の1/5近く)の国民が、避難、保育義務を義務付ける学校閉鎖、または予備役の招集により職を失っている。



テルアビブの貿易と観光への被害

 11/12のブルームバーグの記事は、軍事的交戦が経済に及ぼす影響を数字で示した。
War Budget Leaves Netanyahu Caught Between Markets and Politics

 ガザ戦争はこれまでにイスラエル経済に約80億ドルの損害を与えているが、ここから更に1日につき2億6,000万ドルの損失が発生する。

 にも関わらずネタニヤフ首相は不要不急でイデオロギー優先的な入植植民地プロジェクトに「巨額」を配分することに拘っている。彼は連立政権を構成する5政党に対し、過去最高となる140億シェケル(36億ドル)の裁量的支出を割り当てたが、その多くは宗教学校と占領下のヨルダン川西岸に於ける不法ユダヤ人入植地の開発を目的としたものだった。これは典型的な戦時経済プロトコルからは逸脱している。

 皮肉なことに、主にパレスチナ人労働者の搾取に依存していたイスラエルの複数の建設プロジェクトが一時的に停止した。シオニスト達は「アラブの労働達が重い工具を持っているのを見て憤慨」しており、従ってパレスチナ人労働者を雇いたがらないのだ。多くの企業が最早義捐金を頼みにしている様な状況にも関わらず、こうした非合理的な権利剝奪が横行している。

 困窮した或る企業はサプライヤー、国外の取引先、顧客、更には自社のスタッフにさえも資金援助を懇願した。それが無ければ自社はもう終わりだと考えてのことだ。イスラエルの個人消費が急落していることを考えると、生き残りの為に裁量的支出に依存している多くの企業にも同じことが当て嵌まる。

 OECDの統計では、観光は元々イスラエルのGDPの2.8%しか貢献していなかったが、それでも23万人(全労働人口の6%強)の雇用を支えていた。2022年には観光業を復活させる粘り強い努力が行われたが、10月の時点では前年比76%の大幅減少で、アル・アクサ洪水作戦が開始されると壊滅的になった。ベン=グリオン空港発着便は1日500便から僅か100便に激減した。

 他方、シオニストの入植者達は大挙して国外へ逃亡している。



経済戦争

 11/01、イスラエルの経済学者300人がネタニヤフ首相と財務大臣に対し「正気に返る」よう呼び掛けた。「イスラエルが受けた重大な打撃」の為だ。彼らはこの大惨事には「国家の優先事項の根本的な変更と、戦争被害、犠牲者への援助、経済再建に対処する為の大規模な資金の再配分が必要だ」と主張した。

 これに応えて、首相は「武装経済(economy under arms)」を作り上げると約束した。「我々は蛇口を開いて、必要とする全ての人に資金を送り込んでいます。………この戦争が我々に私にどんな経済的代償を課そうとも、我々は躊躇うこと無くそれを支払います。………我々は軍事戦争で敵を打ち倒し、経済戦争でも勝利するでしょう。」

 テルアビブの「シンクタンク」であるスタートアップ国家政策研究所(SNPI)が発行した報告書は、戦争開始2週間後のテクノロジー部門の「影響力未知数の経済危機」を警告している。

 全体として、イスラエルのハイテク企業の80%が、「治安状況」の悪化に起因する損害を報告している。他方、1/4が人材の面でも投資資金獲得の面でも「2倍の被害」を記録した。また40%以上が投資契約の遅延またはキャンセルを経験した。そして、「投資家との打ち合わせが出来ている」のは僅か10%だった。

 SNPは言及していないがもうひとつの失敗は、クレイドルが10/13に報告したことだが、アル・アクサ洪水によってテルアビブの電子監視と戦争システムの脆弱性が暴露されたことだ。この報告はパレスチナ人の抵抗活動が「イスラエルのサイバー・セキュリティ部門の運命の大幅な低下に繋がる可能性が高い」と結論付けているが、その後の展開はこの予測を裏付けており、イスラエルは「スタートアップ国家」としての名声を大きく損ねることになった。



急激な変動

 11/02、SNPIは過去20年のデータに基付いて、安全保障危機に対するイスラエルの歴史的な経済回復力を調査した報告書を発表した。この報告書は以前よりも楽観的な見通しを描いており、イスラエルが「過去にこの種の危機を克服し………より強くなる能力を証明した」と強気の判断を下した。

 この楽観論は、2014年のガザ攻撃の被害額がイスラエルのGDPの僅か0.3%、現在の金額で約80億シェケルだったことに基付いている。更にこの時は金融市場の混乱が長引いたり、短期的にも長期的にも、証券取引所に「急激な変動」が起きたりはしなかった。だから現在の「鉄の剣」作戦の経済的影響についても心配することは無い、と云う訳だ。

 だが今回は前例の無い規模のアル・アクサ洪水により、36万人のイスラエル軍の動員が余儀無くされた。更に北部戦線ではレバノンのヒズボラとの軍事衝突が激化しており、経済的荒廃が甚大であることを考えると、2014年の再現にはなりそうにない。2014年の動員数は僅か5,000で、軍事行動が続いたのも49日間だけだった。

 ネタニヤフ首相は、少なくとも口先では、ハマスを排除し、ガザに於ける彼等の支配を終わらせると公言しているが、現状は目標達成には程遠い。それに米英がパレスチナだけでなく西アジア全域で長期に亘る代理紛争を模索している兆候も存在する。彼等は自らの力の限界について、耐え難い程に苦しい教訓を学ぼうとしているのかも知れない。

 アル・アクサ洪水作戦の驚くべき成功によって、シオニストのガザ占領計画は益々危機に曝されている。パレスチナ人の服従に依存しているイスラエルの入植植民地経済の将来は不安定で、このシナリオに於て次のドミノが倒れるかも知れない。
関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
全体像が知りたい場合は「カテゴリ」の「テーマ別スレッド一覧」を参照。

ブログランキング
ブログランキング・にほんブログ村へ PVアクセスランキング にほんブログ村 人気ブログランキング
良ければクリックをお願いします。
最新記事
カテゴリ
リンク
最新コメント
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR