タイの「陸橋」は米国と中国の投資を結び付けることが出来る(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。誰も損をしないタイのメガプロジェクト「陸橋」に中米の投資を呼び込むことが出来れば、新冷戦の主役同士の雪解けが加速するかも知れない。
Thailand’s “Landbridge” Could Bring Together American & Chinese Investment

2023/11/14、タイム誌はサンフランシスコで開催されるAPEC首脳会議に先立ち、「タイは米国の新しい投資家達に、東南アジア航路の近道と云う古い考えを売り込む」と云う記事を掲載した。
Thailand Pitches New Investors in U.S. on Old Idea of Southeast Asia Shipping Route Shortcut
タイの新首相は「陸橋(Landbridge)」と呼ぶ一連のメガプロジェクトに対して、米国と中国の投資を呼び掛けているが、この記事はその取り組みに対する意識を高めるのに役立った。
「陸橋」とは、クラ地峡を横断することを想定している道路と鉄道のルートを指している。これはマラッカ海峡を経由するルートと比較して輸送時間を4日間短縮し、コストを15%削減することが出来る。
APEC首脳会議で明らかな様に、中米間の緊張は幾らか解け始めている。象徴的な信頼構築策としてこの取り組みに共同で協力する為に、新冷戦の主役の二国がその組織的な対立を脇に置く可能性は確かに有る。マラッカ海峡に代わるルートを開拓することにより、双方が戦略的経済的利益を得られるし、この点で協力することで、雪解けが加速するかも知れない。
このメガプロジェクトが完成した暁により容易に拡大出来るかも知れないのは、ヨーロッパ、西アジアとの中国の貿易だけではない、残りの東・東南アジアもそうだし、インドと米国の貿易は言うまでも無い。
中央アジア、ミャンマー、パキスタンの様な一帯一路構想の陸上回廊も存在するが、中国の対外貿易の圧倒的大多数が海上ルートで行われているので、「陸橋」とは競合せず、これで損をする者は誰も居ない。海路の代わりに陸路を使うことには、合理的な経済的理由が有る。現在海路を使って行われている貿易とはまた別に、陸路を使った一帯一路ルートの貿易の拡大もまた推進されることだろう。
この洞察は、「陸橋」が本当に互恵的なメガプロジェクトであり、誰にとってもゼロサム・ゲームとはならないことを裏付けている。
もうひとつ指摘すべきことは、タイがこの取り組みに於て利害関係者を最大限に多角化させようとしていることだ。最も重要なのは中米の投資を呼び込むことだが、タイに強制して他国を閉め出させる様な影響力を行使出来る国など存在しないのだと示すことによって、「陸橋」が万人にとって開かれていることを保証し、全員を安心させることが出来る。タイが新冷戦に於てバランスを取れることが証明されれば、他の資金源から更に多くの投資を呼び込むことが出来るだろう。
大戦略目標は何よりも先ずマラッカ海峡の代替ルートを開拓することだが、理想的には中米がこの為に協力することが望ましい。そうすれば両国の雪解けを加速することも出来る。
仮に何等かの理由で中米の対立が悪化し続けたとしても、少なくともお互いが相手をこのルートから締め出すことは出来ないことを知っている。そうであれば、タイが両国の競争の標的とされてハイブリッド戦争の舞台となる事態は防ぐことが出来るかも知れない。
Thailand’s “Landbridge” Could Bring Together American & Chinese Investment

2023/11/14、タイム誌はサンフランシスコで開催されるAPEC首脳会議に先立ち、「タイは米国の新しい投資家達に、東南アジア航路の近道と云う古い考えを売り込む」と云う記事を掲載した。
Thailand Pitches New Investors in U.S. on Old Idea of Southeast Asia Shipping Route Shortcut
タイの新首相は「陸橋(Landbridge)」と呼ぶ一連のメガプロジェクトに対して、米国と中国の投資を呼び掛けているが、この記事はその取り組みに対する意識を高めるのに役立った。
「陸橋」とは、クラ地峡を横断することを想定している道路と鉄道のルートを指している。これはマラッカ海峡を経由するルートと比較して輸送時間を4日間短縮し、コストを15%削減することが出来る。
APEC首脳会議で明らかな様に、中米間の緊張は幾らか解け始めている。象徴的な信頼構築策としてこの取り組みに共同で協力する為に、新冷戦の主役の二国がその組織的な対立を脇に置く可能性は確かに有る。マラッカ海峡に代わるルートを開拓することにより、双方が戦略的経済的利益を得られるし、この点で協力することで、雪解けが加速するかも知れない。
このメガプロジェクトが完成した暁により容易に拡大出来るかも知れないのは、ヨーロッパ、西アジアとの中国の貿易だけではない、残りの東・東南アジアもそうだし、インドと米国の貿易は言うまでも無い。
中央アジア、ミャンマー、パキスタンの様な一帯一路構想の陸上回廊も存在するが、中国の対外貿易の圧倒的大多数が海上ルートで行われているので、「陸橋」とは競合せず、これで損をする者は誰も居ない。海路の代わりに陸路を使うことには、合理的な経済的理由が有る。現在海路を使って行われている貿易とはまた別に、陸路を使った一帯一路ルートの貿易の拡大もまた推進されることだろう。
この洞察は、「陸橋」が本当に互恵的なメガプロジェクトであり、誰にとってもゼロサム・ゲームとはならないことを裏付けている。
もうひとつ指摘すべきことは、タイがこの取り組みに於て利害関係者を最大限に多角化させようとしていることだ。最も重要なのは中米の投資を呼び込むことだが、タイに強制して他国を閉め出させる様な影響力を行使出来る国など存在しないのだと示すことによって、「陸橋」が万人にとって開かれていることを保証し、全員を安心させることが出来る。タイが新冷戦に於てバランスを取れることが証明されれば、他の資金源から更に多くの投資を呼び込むことが出来るだろう。
大戦略目標は何よりも先ずマラッカ海峡の代替ルートを開拓することだが、理想的には中米がこの為に協力することが望ましい。そうすれば両国の雪解けを加速することも出来る。
仮に何等かの理由で中米の対立が悪化し続けたとしても、少なくともお互いが相手をこのルートから締め出すことは出来ないことを知っている。そうであれば、タイが両国の競争の標的とされてハイブリッド戦争の舞台となる事態は防ぐことが出来るかも知れない。
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