fc2ブログ

エジプトはガザでジェノサイドに終わるかも知れない危険な賭けに出ている(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。エジプトには、ガザからの難民を受け入れて、結果的にガザがパレスチナ人から奪われることを促進するか、国境を封鎖した儘にしてイスラエルによるパレスチナ人のジェノサイドを黙認するか、2つの選択肢が有る。イスラエルが地上作戦を自発的に止めるとは考えられないので、ジェノサイドの可能性は日に日に高まっている。アラブ諸国による石油禁輸措置が唯一の望みだが、今のところその兆候は無い。
Egypt Is Playing An Extremely High-Stakes Game In Gaza That Could End In Genocide




エジプトはジレンマを抱えている

 2023/10/31、エジプトのマドブーリー首相は、エジプトは領土を防衛し、イスラエル・ハマス戦争はエジプトの「犠牲」によっては解決しないと述べ、その為には「数百万の命を犠牲にする」覚悟が有ると述べた。

 この不吉な発言は、ガザからのパレスチナ難民の洪水を止める最後の手段として、エジプトが戦争に出る用意が有ることを示唆していると解釈された。

 話を進める前に、この件についての以前の分析を紹介しておく。
 エジプトのジレンマ:民族浄化を促進するか、ジェノサイドの可能性を容認するか(抄訳)

 簡単に言うと、イスラエル・ハマス戦争に関してエジプトには選択肢が2つ有る。

 1)ガザからの難民に対して門戸を開いて、結果的にガザからパレスチナ人が民族浄化され、無人となった地をイスラエル人が乗っ取るのを促進する。

 2)国境を封鎖した儘にしてイスラエルによるパレスチナ人のジェノサイドを黙認する。

 1)の選択肢には人道主義的な側面が有る。反対意見としては、所謂「大量移民兵器」がエジプトを不安定化させる可能性が有り、イスラエルは一度国外へ出た難民を決して帰還させないかも知れないと云うものだ。

 2)の場合は1)とは真逆だが筋は通る。

 マドブーリーの発言から判断すると、エジプトは最後の手段として戦争をする覚悟が有ると念を押した上で、ガザ問題に関して極めて危険な一か八かの賭けに出ることを決めた様だ。

 だがこの選択ではイスラエルの爆撃を止めることは出来ない為、最悪の場合、ジェノサイドに終わる可能性が有る。



イスラエルはエジプトを犠牲にしようとしている

 エジプトはイスラエルを承認した最初のアラブ国家であり、それ以来、密接で多元的な関係を築き上げて来たし、ムスリム同胞団と繋がるハマスに対する安全保障上の懸念も大部分共有している。

 それと同時に、エジプトは最も人口の多いアラブ国家でもあり、旧冷戦中にはアラブ諸国を主導しようとした。更に、国民の多くはパレスチナのイスラム教徒達に同情している。

 これらの要因が、エジプトの陥ったジレンマを悪化させている。エジプトは、特に難民の一部はハマスのスリーパー・セルである可能性が有る為、出来れば難民達を国境から遠ざけておきたいと思っている。だが同時に、難民達の苦難を直ちに軽減しなければならないと云う圧力も掛かっている。

 シシ大統領はパレスチナ人の人道的利益よりも、エジプトの国家安全保障と政治的利益を優先することを選択した様だ。首相の発言の含意はそう云うことだろう。

 またこれはグレイゾーンのキット・クラレンバーグ氏が報じたことだが、イスラエル諜報省が作成していた「コンセプト・ペーパー(仮説上の演習)」の存在が確認されたと云う云うスキャンダルも言及しておくに値する。これはガザ地区の230万人をエジプトのシナイ半島に「再定住」させる、言い換えれば強制移住による民族浄化を行うことを提案しているものだ。

 そしてイスラエルのウェブサイトYnetに拠ると、イスラエルはエジプトがパレスチナ難民の流入を認める代わりに、エジプトの国際債務を免除することを提案した。

 つまり以上の点を踏まえると、イスラエルはエジプトを犠牲にして紛争を解決しようとしているのだと判断出来る。但しこれには多大な国家安全保障と政治上のコストが掛かるかも知れない。

 エジプトが戦争も辞さない覚悟だと表明していることを踏まえると、イスラエルは恐らく、難民を受け入れるよう圧力を掛けるのを止めることだろう。アラブ最大の国家との関係を台無しにしてまでやる価値の有ることではないからだ。

 但しイスラエルの知覚管理者達は、イスラエル政府が課した集団的処罰によって引き起こされたガザの人道危機について、国境を開かなかったエジプトにも責任は有るとして、責任逃れをしようとするかも知れない。



ジェノサイドか、民族浄化か?

 若しイスラエルの地上作戦が計画通りに続けば、ジェノサイドが起こることは確実だ。これを止められるとしたら、唯一の現実的な選択肢は、アラブ諸国が団結して西洋に対して石油禁輸措置を行うと云うシナリオだ。

 現状では、イスラエルが自発的に地上作戦を停止すると期待する理由は無い。そしてアラブ諸国が石油禁輸のシナリオを真剣に検討していると云う兆候も今のところ無い。ジェノサイドのリスクは日に日に高まっている。

 イスラエルは国際世論の反対などものともしないことをこれまでの歴史によって証明して来ているので、これ以上親パレスチナ抗議活動を続けても、それによって地上作戦を終わらせられるなどとは期待すべきではない。だがこうしたデモによって、アラブ諸国が石油禁輸について真剣に話し合ったり、難民援助と引き換えに国境を開放するようエジプトに圧力を掛けたりする可能性は高まるかも知れない。

 繰り返すが、この紛争に於ける主要なジレンマは、命を救う為に民族浄化を促進するのか、それともパレスチナ人の大義と云う理想に拘ってジェノサイドを容認するのかと云う選択だ。

 最善のシナリオは停戦だが、これは益々非現実的になって来ている。石油禁輸措置やエジプトに対する更なる圧力が無ければ、恐らくパレスチナ人達は虐殺されるだろう。

 問題なのはパレスチナ人自身の意思だ。彼等の運命について彼等自身に相談しなければ、アラブ諸国は長年に亘って彼等の大義を政治的理由から利用して来たが、200万以上の殉教者を出すことは彼等にとって何等かの得になるのだ、と云う主張の信憑性が高まることになる。
 
 第一に尊重されるべきはパレスチナ人自身の大義だが、その為に彼等は、大義に殉じて死にたいか(そうすることを誇りに思っている人も居るかも知れない)、それとも亡命先で大義を遂行する為にエジプトに逃げたいかを問われるべきだ。

 石油禁輸措置に踏み切れなかった場合、また禁輸をしても西洋がイスラエルに地上作戦を停止させられなかった場合、アラブ諸国は親パレスチナ抗議行動を受けてエジプトに国境を開放するよう圧力を掛けるかも知れない。

 同胞諸国からの協調的な圧力が有れば、200万以上の人々をジェノサイドから救えるかも知れない。だがその場合にはその代償として、強制移住による民族浄化が起こることになる。

 これは全くとんでもないジレンマだ。だが議論することがタブーであってはならない。
関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
全体像が知りたい場合は「カテゴリ」の「テーマ別スレッド一覧」を参照。

ブログランキング
ブログランキング・にほんブログ村へ PVアクセスランキング にほんブログ村 人気ブログランキング
良ければクリックをお願いします。
最新記事
カテゴリ
リンク
最新コメント
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR