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イスラエル・ハマス戦争の人道問題に対する解法は新たなアラブ石油禁輸か?

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/10/21のカイロ・サミットではイスラエル・ハマス戦争に関する各陣営の色分けがはっきりした。現状では事態が好転する見込みは無いが、イスラム教徒が多数派を占めるエネルギー輸出諸国が協力して石油禁輸措置に踏み切れば、ガザの人道問題を改善するよう、イスラエルに圧力を掛けられるかも知れない。
The Humanitarian Case For Another Arab Oil Embargo



カイロ・サミットは成功だった

 2023/10/21のカイロ・サミットはイスラエル・ハマス戦争に関する共同声明が無い儘終わった為、失敗だったと多くの観察者達から見られていたが、実際にはこの会合はそもそもその為に開かれたものではない。

 確かに、出席者は3つの陣営を代表していた。

 ・親パレスチナ派
 ・親イスラエル派
 ・中立派

 彼等は全てこの結果を嘆き、それを日和見的に他人の所為にしたが、元々誰も現実的に合意に達するなどとは予想していなかった。

 寧ろサミットの最大の目的は、各当事者がこの問題についての立場を率直に表明することだった。そうすれば、全員の立場がより明確になることで、より生産的な外交活動を始められるかも知れない。

 参加各国の立場に最早疑問の余地が無くなったと云う意味では、カイロ・サミットは成功だったのだ。



各陣営の対応

 前述の3陣営が出来ることには客観的な限界が有る。

 米国主導の親イスラエル派は、今回の戦争に如何なる第三者も正式に関与することに反対している為、このシナリオを阻止する為にこの地域に海軍資産を再配備する必要が有る。

 これに応じて、エジプト、ヨルダン、トルコ(何れもイスラエルを公式に承認している)に代表される親パレスチナ陣営が、米国を怒らせるリスクを冒してまでハマスを支援して参戦する可能性は低い。

 ロシア主導の中立陣営は停戦を望んでいるが、前述の力関係によって残念なことに、直ぐに停戦に至るチャンスは無い様だ。イスラエルは復讐の為にハマスを壊滅させるのに夢中なので、予想外に計画を撤回する様なことにでもならない限り、ガザでの地上作戦は必至だろう。

 現状では事態が好転する可能性は無い。だがそれは親パレスチナ陣営と中立陣営にとって、何等かの点で前向きな変化を齎すことが出来ないと云う意味ではない。

 ハマスのテロ攻撃に対するイスラエルの過剰な対応が齎した人道的影響は、国際社会の大部分(多くの西洋人を含めて)の風向きを反イスラエルに変えた。

 イスラエルを説得して地上作戦を思い止まらせることが不可能であれば、これら2つの陣営が追求し得る最もプラグマティックな解決策は、 人道回廊を作ってガザ人の苦しみの一部を和らげようとすることだ。

 この崇高な目標には2つの課題が立ちはだかることになる。
 
 1)エジプトは、パレスチナ難民を自国の領土に受け入れてしまえば、その後イスラエルが彼等の帰国を許さないのではないかと恐れているので、難民を受け入れようとしない

 2)イスラエルはもまた、ハマスの攻撃後に世論の支持は得られないだろうとの計算から、難民の保護に反対している。
 
 更に両者とも自国に対するテロの脅威を主張している。200万人を超えるガザの住民達の安全よりも、自国の安全を優先したいのだ。



予想される波紋

 この結果、イスラエルが対テロの口実で実行する無差別攻撃の「巻き添え被害」として、これらの難民達は死に続けている。これは全世界の大衆、特にイスラム教徒が多数を占める国々の人々を激怒させており、彼等はガザ人の苦しみを止めるには無力だと感じている。人道的回廊も作られず、イスラエルが計画している地上作戦が開始されれば暴力は急増するだろう。世界中で暴動が頻発するであろうと云う、非常に現実的なリスクが存在する。

 西洋諸国はCOVID-19パンデミック中と同じ様に、抗議者達を残忍に弾圧するかも知れない。或いは2020年夏に全米に広がったアンティファ-BLMの暴動の時の様に、エリート達の利己的な政治的動機から傍観するかも知れない。

 どちらのケースでも、一部の過激派がこの暴動の参加者達に対してテロ攻撃を行ったとしても、国家の安定が深刻に脅かされるまでの事態にはなりそうにはないが、イスラム教徒が多数派を占める国々では同じことは言えない。

 これらの国々では暴動を封じ込めるのは容易ではないかも知れない。警備要員の中には親パレスチナの大義に共感して参加者達の取り締まりを拒否する者も出て来るかも知れない。仮に警備要員達が命令に従ったとしても、大衆は政府が「シオニストの傀儡」であると云う口実で更に暴動を起こすかも知れない。何しろ彼等の暴動は崇高な大義を支援する抗議活動として始まったものなので、これを暴力的に解散させることは、パレスチナ人、同胞であるイスラム教徒、そして人類に対する裏切りと見做されることだろう。

 これは考え得る最悪のシナリオではあるが、これを避ける為に、親パレスチナ陣営と中立陣営が、エジプトやイスラエルに人道的回廊を開くよう圧力を掛ける為に協力するのは良い考えだろう。

 この場合、イスラム教徒が多数を占める国々が仲間内で派閥を作って対立する可能性は低い為、その取り組みは略確実にイスラエルとその同盟相手である西洋に向けられることになるだろう。



最善策は石油禁輸措置か

 その最も効果的な形としては、石油の禁輸が考えられる。

 多くの西洋人は既にパレスチナ人の窮状に同情している為、イスラム教徒が多数を占めるエネルギー輸出諸国とロシアが最後通牒を突き付けたら、大規模な抗議行動を起こしてこれに同意するよう、自国の政府に圧力を掛けるだろうと期待出来る。それらの政府はイスラエルに難民受け入れを強制するように努力することを渋るかも知れないし、国外からの圧力にも関わらずイスラエルは拒否するかも知れない。だが、これがこの崇高な目標を前進させる為の最善の方法であることは間違い無い。

 イスラエルとその同盟相手の西洋を石油禁輸で脅す以外の方法では、イスラエルに人道的回廊を開かせることは出来ないだろう。だがこれには参加国間に或る程度の政治的意志、信頼、調整が必要だ。これは簡単なことではない。

 この取り組みに対する真剣な関心を示す兆候はまだ現れていないので、このシナリオは現時点では推測の域を出ない。だがイスラム教徒が多数派を占める国々で世論の圧力が臨界点を突破すれば、状況は直ぐに変わるかも知れない。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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