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ネタニヤフ首相がハマスによる攻撃を望んでいたとする陰謀論の誤りを暴く(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。イスラエルのネタニヤフ首相はハマスの攻撃を事前に察知しながら何等かの理由でこれをわざと見過ごして攻撃を実行させたとする憶測がソーシャル・メディア上で出回っているが、状況を詳しく見てみるとこの説には説得力は無い。
Debunking The Conspiracy Theory That Netanyahu Wanted Last Weekend’s Attacks To Happen



 2023/10/07にハマスがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けたことを受け、ソーシャル・メディア上では、イスラエルがハマスの計画を事前に知りながらわざと実行させたのではないかとの憶測が一部で流れた。


 この陰謀論の支持者達の見解では、窮地に陥ったネタニヤフ首相は、政治的に分裂した国民を団結させたり、ハマスを壊滅させる口実を作ったりする為に自国に対する攻撃を敢えて許したのだそうだ。

 だが、それはよく考えてみれば余り筋が通らない。

 最近では、指導者達が国内の政治問題から国民の目を逸らす為に外国の紛争を誘発することが有る、と主張するのが流行っているが、最新のイスラエル・ハマス戦争には恐らくこの図式は当て嵌まらない。

 10/04のアクシオスの報道に拠ると、ネタニヤフは実は数ヵ月に渡って、イスラエル承認を巡ってサウジアラビアと密かに交渉を進めていた。そしてこれにはイスラエル・パレスチナ和平合意の見通しも含まれていた。つまりハマスの攻撃直前まで、ネタニヤフは全く逆のアプローチを進めていたのだ。この目的はイスラエルを自分を中心に団結させ、「イスラエル史上最大の協力プロジェクト」である新たな経済回廊によって、自国の地政経学なポテンシャルを解き放つことだった。
India-Middle East-Europe Economic Corridor

 これらの努力が実を結んでいれば、彼の宿敵達ですらこの外交的成果を賞賛せざるを得なくなっただけでなく、イスラエルは9月に公表されたばかりのたインド・中東・ヨーロッパ経済回廊(IMEC)に於ける中心的役割から利益を得ることが出来たかも知れない。

 これらにはサウジがイスラエルを承認することが不可欠だった。ネタニヤフとしてはパレスチナの独立を認めない儘で承認を得ることを望んでいたが、イスラエルによるガザ爆撃を受けてサウジが協議を凍結する可能性が有る為、最早それは疑わしいものになってしまった。

 ハマスの計画を事前に知っていたのにわざと見逃して実行させたと主張する人々は、恐らく以下のどれかだろう。

 1)サウジとの秘密会談のことに気付いていない。
 2)経済回廊の壮大な戦略的重要性を軽視している。
 3)秘密会談はハマスを滅ぼす為の複雑な陰謀の為に仕組まれた策略だったと考えている。

 3)に関して言えば、安全保障に執着するネタニヤフが、この目的の為に自国の敵にイスラエルにこれ程前例の無い損害を与えさせるとは想像し難い。ハマスに対する不均衡な爆撃作戦を正当化したいのであれば、比較的小規模なミサイル攻撃で事足りた筈だ。そうすれば文字通り何百人もの民間人や兵士を失うことは無かった筈だ。

 またハマスによる境界障壁突破は、イスラエルの精神に強い衝撃を与えることになった。障壁が自分達を永遠に守ってくれると思い込んでいたイスラエル市民達は、この衝撃から二度と立ち直れないかも知れない。攻撃の絶頂期にハマスがその支配領域を倍増させたことについても同様のことが言える。

 纏めると、境界の壁は最早信頼出来る防御とは見做されていないし、パレスチナに対するイスラエルの政策は曾て無い程疑問視されているし、攻撃の後でネタニヤフは非常に憔悴している様に見える。

 1)境界の壁。
 2)パレスチナに対するイスラエルの政策全般。
 3)ネタニヤフ個人。

 これら3つの全てを、ハマスの攻撃は弱体化させたのだ。安全保障に執着するネタニヤフがこれ程の失点を自ら誘発したと考えるのは筋が通らない。これらはネタニヤフにとっては最悪の悪夢だろう。サウジにイスラエルを承認させ、IMECを通じて自国の地経学的ポテンシャルを解き放つと云う計画が頓挫する可能性が高いことは言うまでもない。その全てが疑問の余地無く、イスラエルの利益に矛盾している。ネタニヤフが攻撃を事前に察知していたにも関わらず、意図的にこれを放置したと推測する陰謀論は、この記事で証明した様に、厳しい調査に耐えられるものではない。

 イスラエルのセキュリティ・システムがどの様にして全て同時に機能不全に陥ったのかは依然として正確には不明だし、諜報部が攻撃を察知出来なかった理由についても誰も説明していないが、それは実際に起こったのだ。この陰謀論はイスラエルの諜報機関が全能であると云う誤った認識に基付いているが、それらは結局人間によって運営されているのであり、従って当然不完全なものだ。そうでないと主張する人々は、モサドが神の如き全知全能の存在だと見做している。これはイスラエルを過大評価する一方で、大規模攻撃を組織したハマス独自の能力を否定するものだ。
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川流桃桜

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