fc2ブログ

フランスがニジェールから撤退したのは米国の所為である理由を説明しよう(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。米国はフランスを(またしても)裏切って、ニジェール軍政権と秘密協定を結んだ。フランスが方針を180度転換して軍を撤退させると発表した理由はそれ以外に考えられない。米国は同盟国である筈のフランスを裏切ることによって、まんまとその後釜に収まった。
Here’s Why The US Is Responsible For France’s Withdrawal From Niger



フランスが方針転換して軍をニジェールから撤退

 クーデター直後の2023/08/02、フランスはニジェールの軍事政権が仏軍を国外追放することは許さないと宣言していたが、09/24になると、現地に居る1,500人の軍を年末までに撤退させると発表した。パリはそれまで追放されたモハメド・バズーム大統領の正統性に固執し、彼自身が望まない限りは退陣を拒否して来た。フランスはまたバズームを権力の座に戻す為に、ECOWAS軍がニジェールに侵攻した場合はそれを支持するとも述べた。

 従ってこの衝撃的な方針転換は、旧宗主国フランスにとって屈辱的な戦略的敗北を意味しており、アフリカに於ける新植民地政策が完全に失敗したことを証明している。
 
 若しクーデター直後に軍事政権が予測可能なことを要求して来る前に、どんな口実を使おうとも早々と自発的に撤退していれば、フランスに有利な様に印象を作り変えることも出来たかも知れないが、フランスはニジェールに留まることを決定した。これは恐らくECOWAS軍が侵攻して来るのを期待してのことだった。仏軍のプレゼンスを継続させることで、パリの政策立案者達は、バズームを復帰させるか、さもなければ別のクーデターを起こして親フランス軍閥にニジェールを支配させる計画を用意しているぞと云うシグナルを送ったのだ。

 が、結局はそのどちらも現実にはならず、ECOWAS軍の侵攻も起こらなかった。パリにとって何か問題が起こったのだ。



舞台裏には米国の裏切り

 この時点で読者は、欧州とアフリカを担当する米空軍の最高司令官が09/13に、ニジェールでの諜報・監視任務の再開を発表したことを思い出すべきだ。発表に拠ればこれは軍政権との交渉の結果であり、これ以前の8月上旬には、軍政権が仏軍の撤退を要求した後、ヴィクトリア・ヌーランド国務副長官代理がニアメを訪問している。

 以前の分析でも指摘しておいたことだが、米国は名目上のNATOパートナーの影響力が西アフリカ地域で後退している状況に付け込んでいるが、これはフランスを戦略的に劣勢に置くことになった。サヘル地域は多極化へ向けて動きつつあるが、米国はこの傾向に柔軟に対応することで、ニジェールに於てフランスが担っていた安全保障の役割に取って代わることが出来た。そしてこれによってニジェール、ブルキナファソ、マリの三国がサヘル同盟を発表した後も、そこに2つの米軍基地を滑り込ませることに成功した。恐らくニジェールの軍政権がこれらの米軍基地のプレゼンスを許可すれば、米国はフランスが計画しているECOWAS軍を使った侵攻を阻止するだろうと云う、投機的な見返りが有ったものと思われる。

 米国が同盟国である筈のフランスを背中から刺す様な真似をしたのはこれが初めてではない。米国は2021年にAUKUS創設の為に英豪と秘密協定を結んだ際に原子力潜水艦の契約をフランスから奪い取っている。今回もまたニジェール軍政権と秘密協定を結ぶことによって、米国はフランスを裏切った訳だ。フランスがこれまで撤退を待った理由を納得の行く様に説明出来る要因は、米国とニジェールの秘密協定しか無い。

 フランスの側としては、米国がニジェールの基地を守る為にECOWASにニジェール侵攻を命じることを期待していた。米国はクーデター後にロシアの影響力が増大することと、押し寄せるであろうテロの波を警戒しているだろうから当然そうするだろうと考えていた訳だ。米国が自分達を裏切って自分達に取って代わろうなどとは予想していなかったのだ。

 米国の観点からすると、これはクーデター後に望み得る最良のシナリオだった。ECOWASに命じてニジェールへ侵攻させることは、より広範な地域戦争を引き起こすリスクを孕んでいる。そしてこれが2015年の悪名高い難民危機の様な新たな難民危機を引き起こした場合、欧州の不安定化と並行してロシアの影響力が拡大する更なる機会を生み出しかねない。従って彼等はその代わりにフランスに取って代わってニジェールに駐留し、そうすることで多極化の傾向を抑制する方が得策だと踏んだのだ。

 これは明らかに明らかにフランスにとって衝撃的であり、史上最も屈辱的な戦略的敗北のひとつとなった。だが米国はAUKUSのスキャンダルの後でもフランスが最終的には戻って来た前例が有るので、また裏切っても両国の関係が破壊されることは無いと計算した。更にフランスに代わってアフリカに「勢力圏」を確立することで、「パートナー」が強制退去させられた後の状況にも対処出来る様になる。フランスが強制退去させられた後に全てを中露協商に譲り渡すのではなく、米国自身がその空いた穴を埋めるのだ。またフランスが依存している資源を自国の影響力ネットワークを介させることによって、フランスをより自国に依存させることも可能になる。

 米国がしなければならない唯一の妥協は、中露の影響力が或る程度拡大することと(これを完全に阻止することは不可能だ)、中露が軍政権と提携するであろうと云う好ましからざるシナリオを受け入れることだ。



裏切りと脅迫によって促進される米国の利益

 後者についてはソフトバワー上の被害を軽減する為に、既に知覚管理活動が開始されている。09/27のブルームバーグのアンドレアス・クルースの論説「米国がニジェールから撤退すれば、テロリストとロシア人が勝利する」は、クーデター後もニジェールに留まって「民主主義」を守る方が撤退するよりも良いことなのだと主張している。彼は想定している西洋の読者に対して、非常に費用の掛かるECOWAS侵攻を支持するより、プラグマティックに軍政権と協力することは、所謂「より小さな悪」の代替案であると納得させようとしている。意外にもクルースはニジェールに於ける米国の利益について率直に述べており、その為に妥協が必要なのだと公言している。

 クルースの記事は、米国が多極化の傾向に柔軟に適応している様子を示している。グローバル・サウスに於ける米国の利益について西洋の公衆にこれ程率直に語られることは殆ど無く、大抵は曖昧にするか嘘を吐くかなので、これは新鮮な驚きではあるが、それと同時に懸念すべきものでもある。米国の利益がこの様な仕方で促進されることは、中露協商にとって、以前よりも大きな課題が積まれたことを意味する。

 何れにしろ、米国がニジェール軍政権と秘密協定を強行したことは、フランスにとって二度目の米国の裏切りとなった。フランスがこの展開を予想していなかったのは確かだ。米国が裏切ると予想していれば、フランスは早い内に自分達から条件を出して撤退していたかも知れない。
関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

フランス撤退はアメリカの敗北を意味する。

 イスラエルの暴挙もフランスの植民地支配も、アメリカとNATOの軍事力を背景にしています。
 ところがロシアがアメリカ・NATOをウクライナで完全に粉砕し、ロシアは西側が束になっても抑制出来ないと証明した上、これらの外道国家の武器を枯渇させました。
 もし、ニジェール問題を放置し、フランスの暴挙を許せば、戦争が勃発し、アフリカ諸国のアメリカへの反発が強まりますが、そうなったが最後、西側はそれを素子資する軍事力がないですから、なし崩しに西側支配が崩壊するでしょう。
 アメリカがフランスを撤退させたのは、アフリカの西側への反発を抑え、アメリカが「正義の味方」を演じる事によって、中ロ寄りになっているアフリカ諸国がこれ以上西側から離れないようにするための苦肉の策です。
 フランスが納得したのも、アメリカとNATOの軍事力なしではもはやニジェールを支配出来ないと悟ったからでしょう。
 その点では、ニジェールの革命は、ウクライナ戦争による西側の疲弊を見こした賢明なものだったと言えるでしょう。
 ハマスも同じだと思います。
プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
全体像が知りたい場合は「カテゴリ」の「テーマ別スレッド一覧」を参照。

ブログランキング
ブログランキング・にほんブログ村へ PVアクセスランキング にほんブログ村 人気ブログランキング
良ければクリックをお願いします。
最新記事
カテゴリ
リンク
最新コメント
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR