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ポーランドはウクライナとの論争の責任はドイツに在ると仄めかす(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/09/22のポーランドのアルカディウシュ・ムラルチク外務次官の発言は、ポーランド与党は10/15の選挙を前にして、ウクライナに対してドイツのエージェント達を粛清することを求めていることを示している。
Poland Hinted That Germany Is To Blame For Its Dispute With Ukraine



 2023/09/22、ポーランドのアルカディウシュ・ムラルチク外務次官はRMF24ラジオ局のインタビューで、ウクライナとの紛争の責任はドイツに在ると仄めかした。背景として、09/19以降、ポーランドとウクライナとの確執は急速に悪化している。以下、ムラルチク氏のインタビューのハイライトを紹介し、その後その内容を分析する。



ムラルチク外務次官の発言のハイライト

 ・ポーランドは米国が味方をしてウクライナを説得し、「ウクライナ人の熱い頭を冷や」してくれることを望んでいる。

 ・ポーランドとの問題を公表すると云うキエフの決定は、「ポーランドにもウクライナにも利益を齎しません。また、この戦争でロシアを倒すと云う我々の共通の大義にも役立ちません。」

 ・ポーランドを「迂回」して、ポーランドの「頭越しに」、ポーランドの通過やウクライナの穀物貿易についての話し合いが為されているが、その黒幕は恐らくドイツである。ドイツは恐らくポーランドに秘密でキエフと協定を結ぼうとしている。

 ・「ポーランドは、ポーランドの国境をウクライナの穀物に開放するよう頭越しに(EUから、つまりベルリンから)命じられています。その目的は、ポーランドの農業とポーランドの農民を終わらせることです。」

 ・「ウクライナ人は、ポーランドと良好な関係を築きたいなら、ベルリンではなくポーランドと関係を築かなければならないことを理解する必要が有ります。」

 ・「ウクライナの大規模でグローバルな農場とオリガルヒ達にとって、ポーランドで穀物を売るのがベストなのです。何故なら、輸送が最も安価であり、大規模市場に最も近く、彼等にとって最も便利だからです。」




ムラルチク外務次官の発言の分析

 この発言は幾つかの点で興味深い。

 1)ゼレンスキーをドイツの傀儡として描くことで、ゼレンスキーの全責任を免除している。

 2)ドイツが密かに抱いている地政学的な野心に関して、ポーランドの伝統的なパラノイアを復活させている。

 3)これまでの、ポーランドに関するドイツとロシアの秘密協定に関する懸念を、今度はドイツとウクライナの協定に置き換えている。

 4)この騒動はオリガルヒ達がゼレンスキーにやらせたことだと示唆している。従って、ゼレンスキーがこの論争を解決する為に、オリガルヒ達や他の親ドイツ勢力を弾圧する余地が残されていることを示唆している。

 「ドイツはウクライナの穀物をポーランドに大量に流入させることでポーランドの国内農業産業を破壊しようとしている」と云うパワープレイ疑惑は、以前の分析でも指摘した、ドイツの地政学的動機と一致している。簡単に言えば、ドイツはポーランドに代わって、欧州に於けるキエフの最大のパートナーになろうとしてその座を争っているのだが、そうすることによってドイツはポーランドを共産ブロック崩壊直後の様な、ドイツの属国としての地位に戻そうとしている。



背景にはポーランドの選挙

 10/15に予定されているポーランドの次期選挙はこの点で極めて重要だ。与党「法と正義(PiS)」は、かのユゼフ・ピウスツキ首相の、「勢力圏(インテルマリウム)」を通じてドイツとロシアから等しく距離を置くと云う大国志向政策を再現しようとしているが、野党「市民プラットフォーム」が勝利すれば、この政策に終止符が打たれることになる。だが現職が再選されれば、与党が反体制派の「連合党」と連立を組まなければならなくなったとしても、大国路線は略維持されると予想される。

 与党PiSが権力を維持するには、地方の農村票が重要になる。ムラルチクがドイツがウクライナの穀物を使ってポーランド農業を破壊しようとしていると主張している裏には、こうした事情が控えている。農村経済が破壊されれば、PiSもまた終わりなのだ。

 ドイツがウクライナのオリガルヒ達と組んでPiSの再選を阻止しようとしているのではないかと云う懸念は、ポーランドのロベルト・テラス農相(PiS出身)も表明している。08/23の報道に拠れば彼は、EUは選挙を前にウクライナの穀物がポーランドを「不安定化」させることを望んでいる、と発言した。

 「EUは我々は派閥闘争の一環として利用しようとしています。これらはポーランドにとってだけでなく、ヨーロッパにとっても非常に重要な選挙です。ヨーロッパの情勢が完全に変わりつつあるからです。」

 ムラルチクもテラスも、これが非常にデリケートな問題であるにも関わらず、ウクライナとの論争についてドイツを直接非難することを躊躇っていない。

 ウクライナの農業オリガルヒ達の間でドイツが影響力を強めている疑いについて触れられている点も興味深い。これはポーランドが、ウクライナの舞台裏で本当に決定を下しているのは誰なのかを十分承知していることを含意している。これには幅広い業界で活動するオリガルヒ達とは別に、軍や諜報機関の様々な派閥も含まれている。



ポーランドはドイツのエージェント達の粛清を求めている

 ドイツとウクライナの農業オリガルヒ達との秘密同盟は、ドイツがこれらの勢力を通じてゼレンスキーを操ろうとしていることを示している。但しゼレンスキー自身、国連総会でポーランドがロシアの傀儡であるかの様なことを仄めかしているので、両国の論争に関して彼に全く責任が無い訳ではない。

 皮肉なことに、キエフによる暴露が反ロシア連合を弱体化させると云うムラルチクの懸念は、この状況でロシアの利益になる様なことを行っているのがポーランドではなく他ならぬゼレンスキー自身であることを示している。

 それでも、ムラルチクがドイツや農業オリガルヒ達を責めてゼレンスキーを免除していることは、今後ゼレンスキーがこれらの勢力を弾圧して両国の論争を解決するチャンスを与えている。その為には米国が介入してゼレンスキーを説得する必要が有ると、ポーランド側では考えている訳だ。 事実上、ムラルチクはゼレンスキーに対し、米国の支援を受けた腐敗撲滅を口実に、ドイツのエージェント達を一掃するよう求めていることになる。

 ポーランド当局者の殆どあからさまなこの要請に応じて、ゼレンスキーが独力でこれを実行する可能性は低い。だからこそ、最終的には米国がどう決断するかが重要になる。

 バイデン政権の選択肢はふたつだ。
 1)ウクライナとポーランドを巡るドイツの二重の権力闘争に目を瞑る(リベラル・グローバリスト的選択)。
 2)ドイツが覇権を確立するのを避けて欧州の地政学的バランスを保つべく、ポーランドを支持する(プラグマティックな選択)。

 これらの内どちらを選択しても、米国の大戦略に広範囲に影響を与えることになる。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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