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ブラジルがプーチン訪問時に彼を逮捕するかについて、ルラが手の平を返したのは何故?(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/09/09にブラジルのルラ大統領は、ICCの令状に従ってプーチンを逮捕するつもりは無いことを仄めかしたが、2日後にまたそれを引っ繰り返した。これはルラが依然としてリベラル・グローバリズムのイデオロギーに執着した儘であり、多極化支持者達は警戒すべきであることを示している。
Why’d Lula Flip-Flop On Whether Brazil Will Arrest Putin If He Visits?

 

「プーチンがブラジルに逮捕されることは無い」

 2023/09/09、ブラジルのルラ・ダ・シルバ大統領は次の様に発言して代替メディア・コミュニティ(AMC)から盛大な拍手を浴びた。

 「あなたに言えるのは、若し私がブラジル大統領で、彼(プーチン)がブラジルに来たとしても、彼が逮捕されることは有り得ないと云うことです。」

 ブラジルはローマ規程の署名国であり、虚偽の告発に基付くICCの偽善的な令状に従ってロシアのプーチン大統領が自国の領土に足を踏み入れた場合には彼を逮捕する政治的義務が有る訳だが、にも関わらず彼が来年リオで開催されるG20サミットに出席する可能性について、ルラは言及したのだ。 

 同じくBRICS加盟国でありICCにも参加している南アフリカは、自国で開催されるBRICSサミットへプーチンを招待することを躊躇い、代わりにオンラインで参加すると云う妥協案に達した。彼等はこれが結果的に自国の信用失墜を招く点を完全に見誤っていたが、それでもサミットは滞り無く終了し、BRICSの加盟国は2倍以上に増えた

 プーチンはインドで開催されたG20サミットも欠席したが、インドはローマ規定に署名しておらず、インドの領土内に足を踏み入れたとしても逮捕される危険は無かった。恐らく彼は、ロシアがBRICSを通じた金融多極化プロセスを加速することに関与すると云う意思表明を行う為に、指導者レヴェルのでの参加を断念するよう助言されたのではないかと分析した。

 プーチンは2022年11月にバリ島でG20サミットが開催された時も、当時はICCの逮捕状は出ていなかったにも関わらず欠席している。従ってその後のデリーでのサミットを欠席したことは、最近は単に多忙であるという報道官の公式の言い訳以上の事情が有ることを示唆している。

 更に、今後3年間のサミットはブラジル、南アフリカ、そして米国が主催することになるが、ブラジルと南アはICC加盟国であり、米国は無論ロシアの最大の地政学上の敵国となる。

 プーチン大統領はインドでのサミットを欠席したことによって、今後も早くとも2027年までは直接参加しないというシグナルを送った訳だが、2027年の主催国が ICC加盟国か地政学上の敵であれば話はまた別だ。



ルラの2度目の手の平返し

 こうした状況を背景として、ルラは来年プーチンがブラジルを訪れても「逮捕されることは有り得ない」と発表した訳だが、彼はその2日後の09/11、「判断は司法次第だ」とまた手の平を返して見せた。正確な発言は次の通りだ。

 「プーチンが(来年のサミットに)参加することを決めた場合、(逮捕するかどうかを)決めるのは司法当局の権限であって、私の政府ではありません。」

 そして彼はまたこうも付け加えた。

 「米国、インド、中国が何故ICC条約に署名しなかったのか、そして我が国が何故署名したのか知りたいものです。」

 この発言はICCから脱退したいと云う誠実な意図の表明ではなく、この突然の方針転換に対する支持層からの怒りを逸らす為のものである様に見える。彼が本当に脱退を望んでいたのであれば、彼にはそうする為の以前の2期分のチャンスが有った筈だ。彼は西洋の圧力に逆らってプーチンの安全を保証した「勇気」を称賛したAMCの人々をバカにしたのだ。

ブラジル情勢を一寸フォローしている人であれば、この国は公選された議員や軍よりも寧ろ司法制度によって主に運営されており(ルラ自身が腐敗した司法制度の犠牲になって逮捕されている)、その為彼の以前の約束に懐疑的になるには十分な理由が有ることを知っている。

 AMCの左派/リベラル派の一部のインフルエンサー達は事態の進展を辛抱強く待つ代わりに早急な結論に飛び付き、バイデンとの共同声明でロシアを非難したり、国連での反ロシア決議に賛成票を命じたりしたことは全て反証されたのだと、仄めかしたりあからさまに主張したりしたが、これは事実を捻じ曲げて取り繕っているだけだ。



ルラのイデオロギー的偏向

 ブラジルの労働者党はリベラル・グローバリズムと云うイデオロギーのウィルスに感染しており、曾ての歴史的な社会主義運動は今や米国民主党のブラジルの模倣品に変貌している。伝ええられるところでは、ルラは「進歩主義(目覚め主義/wokeism)」を世界に広める為に米民主党と同盟を組むつもりらしい。

 これは2014年のクリミア危機の際に反ロシア国連決議を棄権したジルマ・ルセフ大統領の決定とは対照的だ。労働党が今の様な姿に変貌したのは、ジャイール・ボルソナロ前大統領の在任中に復活した極右思想と、その結果として自国の「文化戦争」が激化したことに対して、指導部が過剰に反応したのが原因だった。彼等は社会主義に忠誠を誓い続けるよりも、「目覚め主義」に乗り換える方が良いと踏んだのだ。

 これには明らかに社会文化的な意味合いが有ったが、ロシアに対するルラの非友好的な政治的姿勢によって証明された様に、地政学的な意味合いも有った。

 労働党のプロパガンディスト達は、このアプローチがグローバル・サウス全体で如何に不人気であるかを知っている。だからこそバイデンとの共同声明でロシアを非難し、国連総会で反ロシア票を投じることは、ルラが実はロシアを支持していることの裏返しなのだと云う馬鹿馬鹿しい主張をして事態を誤魔化そうとして来た。これに騙された多極支持者達は殆ど居なかったものの、左派傾向の多くの人々は、ルラを非難すれば仲間達から「キャンセル」されることになるのではないかと警戒せねばならなかった。この欺瞞的な二重思考は今に至るまで続いており、彼等はまた03/21のインタビューでマウロ・ヴィエイラ外相が、プーチンがブラジルを訪問すれば逮捕されるだろうと強く仄めかす発言を行ったことも意図的に無視している。

 ルラの最初の手の平返し発言は、恐らく彼の世界観についてAMCの間で肯定的な見出しを飾る為の安っぽい試みに過ぎなかった。

 彼は今後も中国と米国の間でバランスを取ろうと努力し続けるだろうが、彼の以前の反ロシア的政策で証明されている様に、彼は「ロシア寄り」などではない。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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