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ニジェールのクーデターにより、長年待ち望まれた西アフリカの主権に関する議論が活発に(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。ニジェールのクーデターを拒否するAUとECOWASはアフリカの支配層の利益を代表しているが、これに立ち向かうニジェール新当局、サヘル同盟、ロシアは、アフリカの人民の主権的意志を代表している。
The Nigerien Coup Prompted A Long-Overdue Discussion About Sovereignty In West Africa


 
AUとECOWASはニジェールのクーデターを拒否

 2023/07/26のニジェールで発生したクーデターに関して、AU(アフリカ連合)は追放されたバズーム大統領が平和的手段で権力の座に復帰するべきであると信じているが、ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)の現役加盟諸国は強制的手段に訴えたがっている。

 両者ともニジェール暫定当局の3ヵ年移行計画を支持していないが、ECOWASはそれを真っ向から拒否し、AUはこの直後にニジェールを一時停止処分にした。

 AUはまた、「AUの全加盟国と、二国間及び多国間パートナーを含む国際社会全般に対し、この憲法違反の政権交代を拒否し、ニジェールの不法政権に正当性を与える可能性の有る如何なる行動も自制するよう呼び掛けた。」この発表は、ニジェールと同じくクーデターによって軍政権が運営している隣国のブルキナファソとマリが、フランスが支援しナイジェリアが主導するECOWAS侵攻軍を阻止する為に戦闘員を駐留させていると云う報道が流れた直後に行われた。

 2023/08/25、ニジェール、ブルキナファソ、マリの3ヵ国の外相はニジェールの首都ニアメで会合し、共同声明を発表した。それはこれらの国々が地域相互防衛同盟(「サヘル同盟」)を設立し、お互いの政治的・経済的・金融的統合を加速することを謳う内容のものだった。

 話を先へ進める前に、ロシアのラヴロフ外相がこのレジーム・チェンジにどう反応したかを触れておこう。彼は基本的に、この地域の3つの軍事主導暫定政府は、国民の向上のた為に、以前の指導者達と西洋との関係を再調整しようとしたのだと結論付けている。

 07/28の第2回ロシア・アフリカ・サミットで、ブルキナファソの指導者イブラヒム・トラオレが、西洋の圧力に抵抗するアフリカ指導者達を讃える一方で、AUとECOWASから一時停止処分を受けた彼の軍事暫定政権を支持しなかった者達を西洋の傀儡だとして非難したが、ラヴロフの発言はこの見解に信憑性を与えている。



サヘル同盟諸国のクーデターは人民の支持を得ている

 ブルキナファソ、ギニア、マリ、ニジェールの国民は、それぞれ軍がクーデターを起こしてフランスの傀儡の指導部を打倒した後、軍を支持して結集したが、どの国も程度の差は有れ、AUとECOWASからその罰を受けている(ニジェールの場合が最も深刻で、侵攻の脅威に直面している)。

 どの国でも、これらの軍主導の暫定政府は本当に草の根レヴェルでの支持を得ている。でなければカラー革命の試みや、更には反乱/蜂起/テロ活動が起こっていただろう(正確に言えば、ブルキナファソ、マリ、ニジェールはテロの脅威に直面しているが、それらはそれぞれ軍事クーデター前から存在する脅威であって、レジーム・チェンジの結果として出て来たものではない)。

 AUはアフリカ支配層を代表しており、そのメンバーは自国の軍隊によって打倒されることを恐れている。それ故クーデターには、それが国民に人気が有ったとしても必ず反対する。

 ECOWASも同様だ。こちらはAUの西アフリカ地域ヴァージョンの様なもので、西アフリカの人民よりも、西アフリカの支配層を代表している。ニジェールのクーデターは西アフリカで発生した4回目のクーデターだ。従ってまだ活動停止になっていないECOWASのメンバーは、所謂「ドミノ効果」の可能性を懸念している。彼等がAUよりも強硬な姿勢を取っているのはその為だ。

 ECOWASはニジェールに侵攻すると脅迫し、AUは他の国々はこれを正当化するなと警告した。それは両者がそれぞれ西アフリカとアフリカ全体の人民ではなく支配層の利益を優先しているからだ。



ロシアはサヘル諸国の戦略的パートナー
 
 ロシアは原則として憲法に違反する如何なるレジーム・チェンジにも反対しているが、ロシアの立場は両組織よりも遙かにプラグマティックなものだ。

 マリはクーデターの後、中央アフリカ共和国に次いでアフリカで2番目にロシアの最も緊密な軍事パートナーとなった。ブルキナファソは、トラオレ暫定大統領が05/04にロシアを自国の戦略的同盟国であると宣言したことを受けて、隣国に倣うことを検討している。ロシア政府は公式にはサヘル地域の一連の憲法に反するレジーム・チェンジ自体には反対しているが、移行期には協力することを信条としているので、これらの安全保障関係は安定している。ロシアは国境を越えたテロ組織と戦うマリとブルキナファソを支援しているが、これは関係者全員の客観的利益を促進している。

 対照的にAUとECOWASはクーデターを起こした国々の資格を停止し、その指導部を第三国が承認することに反対している。もう一度思い出した貰いたいのは、これらクーデタを起こしたサヘル諸国は何れもカラー革命の試みや反国家無暴力を経験しておらず、従って指導部は人民の支持を得ていると考えて良いと云うことだ。



まとめ

 あらゆる要因を考慮すると、AUとECOWASは略間違い無くニジェール人民の主権的意志に反している一方で、ニジェールの軍主導の暫定当局、新たに結成されたサヘル同盟、ロシア———これらは全て、国、地域、国際レヴェルで、ニジェール人民の主権的意志を体現している。

 ニジェール暫定当局は、フランスの新植民地占領下で事実上の奴隷として何十年も苦しめられた後、真の主権を求める人民の願望を実現する為と云う愛国的な理由でクーデターを実行した。

 サヘル同盟も同様だ。ECOWASの残りのメンバーの様な帝国主義の傀儡を阻止する為に、戦力を結集しようとしたのだ。

 ロシアの利益に関して言えば、ロシアがクーデター後の指導部の国境を越えたテロ組織との戦いを支援すると決定したのは、プラグマティックな動機に基付いていた。何故ならそれは人民と、サヘル地域と、アフリカ全体の利益に適うからだ。

 これら3つ———ニジェール新当局、サヘル同盟、ロシア———は、西アフリカに於ける真の主権の先導者達だ。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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