ニジェールを巡るAU-ECOWASの亀裂は予測可能だった(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。ニジェールを巡るECOWASとAUの分裂は、ニジェールのクーデター以前に抱かれていたアフリカの結束に関する認識が、幻想であったことを示している。最終的に何が起こるにせよ、アフリカの結束がEUの様なレヴェルに近付くまでには、まだ長い道のりが控えている。
The AU-ECOWAS Rift Over Niger Was Predictable
2023/07/26にニジェールで起きた愛国的な軍事クーデターは、ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)だけでなく、ECOWASとAU(アフリカ連合)を分裂させた。AUの平和安全保障理事会が反対して来たにも関わらず、ECOWASはニジェールに対する侵攻の準備を進めて来たからだ。
だが両者は各々別の利益を持っているので、この亀裂は予測可能だった。それにアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)が2019年半ばに発効したものの、アフリカは欧州や他の地域に比べて政治的な結束が遙かに弱い儘だ。
ECOWASの軍主導ブロックは活動停止中だが、彼等は当然のことながら同じ軍主導のニジェールに対して、活動中の非軍主導ブロックが侵攻することに反対している為、ECOWASはこの件に関して二分している。
軍主導ブロックは、ニジェールへの侵攻が自国への侵攻の前例になる可能性を恐れており、またこれがリビアのシナリオの再現になって、テロリストの脅威が爆発することを懸念している。
非軍主導ブロックは「民主主義を擁護」していると主張しているが、実際には隠れた動機を持っている。これらの国々は、軍主導の加盟国が不処罰で済む前例を作ってしまうと、自国でも、軍内のクーデターを目論む者達がお咎め無しで済むと思う様になるのではないかと恐れている。
更にまた域外のプレイヤー、特に比較的程度は低いもののフランスと米国の影響も考慮する必要が有る。これらはECOWASを新冷戦に於ける代理勢力として利用し、「ルールに基付く秩序」を押し付けようとするかも知れない。
AUは常に原則に基付いてクーデターには反対しているが、通常は地域ブロックの好ましい解決策を支持しているが、今回はリビアのシナリオが繰り返されるのではないかと云う懸念が影響している様だ。それにまた、アフリカを犠牲にして地政学的な利益を推進する為に、ECOWASが地域外のプレイヤーによって利用されているのではないかと疑っている加盟国が居る可能性も無視出来ない。これらの計算により、AUは結果的に、現在活動停止中の西アフリカの軍主導ブロックと同じ立場に身を置くことになる。
AUとECOWASの亀裂は上に述べた理由から避けられなかったが、善意から多極化を支持する多くの人達は、希望的観測からこの問題で結束することを期待していたかも知れない。だがこの問題では、大陸レヴェルでも地域レヴェルでも競合する利害が多過ぎるので、EUの様な結束が実現する可能性は幻想に過ぎなかった。ECOWASが最終的にニジェールに侵攻した場合、この食い違いは危機的なレヴェルに達する可能性が有る。
AUはジレンマに追い込まれることになるだろう。つまり最高評議会の意思に反抗する前例を作らない為に、クーデター・ブロックの加盟諸国を罰するか、アフリカ大陸全体での結束が更に弱まるのを避ける為に、目を瞑るかだ。
最初の選択肢は深刻な地政学的な亀裂を生み出し、地域外のプレイヤーがこれに付け込んでアフリカを最大限に分割統治しようとするかも知れない。他方、二番目の選択肢は、ECOWASに倣って他の地域ブロックも同様にAUに反抗するかも知れない。
どちらにしても大陸の結束は大きく損なわれることになる。だからAUはECOWASがニジェールに侵攻して厄介な状況を引き起こすことを望んでいないのだが、この亀裂が既に小さなものでは済まなくなっているのも事実だ。
ニジェールを巡るECOWASとAUの分裂は、ニジェールのクーデター以前に抱かれていたアフリカの結束に関する認識が、幻想であったことを示している。最終的に何が起こるにせよ、アフリカの結束がEUの様なレヴェルに近付くまでには、まだ長い道のりが控えている。
The AU-ECOWAS Rift Over Niger Was Predictable
2023/07/26にニジェールで起きた愛国的な軍事クーデターは、ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)だけでなく、ECOWASとAU(アフリカ連合)を分裂させた。AUの平和安全保障理事会が反対して来たにも関わらず、ECOWASはニジェールに対する侵攻の準備を進めて来たからだ。
だが両者は各々別の利益を持っているので、この亀裂は予測可能だった。それにアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)が2019年半ばに発効したものの、アフリカは欧州や他の地域に比べて政治的な結束が遙かに弱い儘だ。
ECOWASの軍主導ブロックは活動停止中だが、彼等は当然のことながら同じ軍主導のニジェールに対して、活動中の非軍主導ブロックが侵攻することに反対している為、ECOWASはこの件に関して二分している。
軍主導ブロックは、ニジェールへの侵攻が自国への侵攻の前例になる可能性を恐れており、またこれがリビアのシナリオの再現になって、テロリストの脅威が爆発することを懸念している。
非軍主導ブロックは「民主主義を擁護」していると主張しているが、実際には隠れた動機を持っている。これらの国々は、軍主導の加盟国が不処罰で済む前例を作ってしまうと、自国でも、軍内のクーデターを目論む者達がお咎め無しで済むと思う様になるのではないかと恐れている。
更にまた域外のプレイヤー、特に比較的程度は低いもののフランスと米国の影響も考慮する必要が有る。これらはECOWASを新冷戦に於ける代理勢力として利用し、「ルールに基付く秩序」を押し付けようとするかも知れない。
AUは常に原則に基付いてクーデターには反対しているが、通常は地域ブロックの好ましい解決策を支持しているが、今回はリビアのシナリオが繰り返されるのではないかと云う懸念が影響している様だ。それにまた、アフリカを犠牲にして地政学的な利益を推進する為に、ECOWASが地域外のプレイヤーによって利用されているのではないかと疑っている加盟国が居る可能性も無視出来ない。これらの計算により、AUは結果的に、現在活動停止中の西アフリカの軍主導ブロックと同じ立場に身を置くことになる。
AUとECOWASの亀裂は上に述べた理由から避けられなかったが、善意から多極化を支持する多くの人達は、希望的観測からこの問題で結束することを期待していたかも知れない。だがこの問題では、大陸レヴェルでも地域レヴェルでも競合する利害が多過ぎるので、EUの様な結束が実現する可能性は幻想に過ぎなかった。ECOWASが最終的にニジェールに侵攻した場合、この食い違いは危機的なレヴェルに達する可能性が有る。
AUはジレンマに追い込まれることになるだろう。つまり最高評議会の意思に反抗する前例を作らない為に、クーデター・ブロックの加盟諸国を罰するか、アフリカ大陸全体での結束が更に弱まるのを避ける為に、目を瞑るかだ。
最初の選択肢は深刻な地政学的な亀裂を生み出し、地域外のプレイヤーがこれに付け込んでアフリカを最大限に分割統治しようとするかも知れない。他方、二番目の選択肢は、ECOWASに倣って他の地域ブロックも同様にAUに反抗するかも知れない。
どちらにしても大陸の結束は大きく損なわれることになる。だからAUはECOWASがニジェールに侵攻して厄介な状況を引き起こすことを望んでいないのだが、この亀裂が既に小さなものでは済まなくなっているのも事実だ。
ニジェールを巡るECOWASとAUの分裂は、ニジェールのクーデター以前に抱かれていたアフリカの結束に関する認識が、幻想であったことを示している。最終的に何が起こるにせよ、アフリカの結束がEUの様なレヴェルに近付くまでには、まだ長い道のりが控えている。
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