最近の調査で、若いポーランド人のウクライナに対する見方が大きく変わったことが判明(要点)
アンドリュー・コリブコ氏の記事の要点。キエフは若いポーランド人達の支持を急速に失いつつある。ポーランド与党は政権を維持したければ、この傾向に適切に対応しなければならない。
A Recent Survey Shows How Significantly Young Poles’ Views Towards Ukraine Have Changed
幅広い国際研究機関から資金提供を受けている学者とジャーナリストのグローバルな協力プラットフォームである The Conversation は、2023/08/01、2023年5〜6月に16〜34歳の若いポーランド人2,000人を対象として行った世論調査の結果を発表し、彼等のウクライナに対する見方が2022年3月からどれだけ大きく変化したかを明らかにした。
因みにこの研究を行ったのは、ベルリンの東欧国際問題センターの上級研究員2名であり、片方はオックスフォード大学ナフィールド・カレッジの準会員でもある。彼等は完全に西洋エスタブリッシュメントの専門家であって、どう考えても「ロシアのプロパガンダ」など流しそうにない立場の人達だ。
調査結果
前置きが済んだところで、調査結果のハイライトを紹介しよう。
・ポーランド人の若者の半数以上は、ウクライナ難民が自国に永住することを望んでいない。難民はウクライナに帰国することを前提として、一時的な地位を提供されるべきであると考える若者は42%から52%に増加している。
・カトリック教徒と保守層は、他の人達より永住を望んでいない(それぞれ10%と13%増)。
・ポーランド人の若者の1/3以上は、政府がウクライナに対して中立になることを望んでいる。政府はウクライナを支持すべきだと主張する人は83%から65%まで低下し、34%はポーランドが中立を保つことを望んでいる。
・若いポーランド人の中でも年齢の高い層(25〜34歳)や都市部の外(人口50万人以下)に住んでいる人達、或いは過去18ヶ月間にウクライナ人支援に携わって来なかった人達は、より中立を望んでいる。
・ポーランドの若者、特に保守的な人達は、益々平和と中立に傾きつつある。ポーランド軍のウクライナ戦争への関与を望んでいるのは僅か2%に過ぎず、人道支援は60%が支持しているが、武器の提供を支持するのは28%だけ。武器の提供に最も強く反対していたのは極右支持者達(回答者の約20%)だった。
調査結果の分析
1)反体制派の台頭。
反体制派/反EUの連合党(自由と独立連合)の急速な台頭が、ウクライナ戦争や難民受け入れに関する若者達の態度に極めて重要な影響を及ぼしたことは明らかだ。彼等は無視出来ない政治勢力であって、今秋の国政選挙後にはキングメーカーになる可能性すら有る。
ポーランド与党はこれに対抗する為、彼等に「ロシアの工作員」と云うレッテルを貼るかも知れない。彼等は既に05/29に「ロシア影響力委員会」なるものを立ち上げたが、これは多くの人々によって、ドイツの代理勢力と見做されているリベラル・グローバリストの野党「市民プラットフォーム」の信用を傷付ける為の試みだと解釈された。現在の社会政治的影響力を考えると、連合党もまたこの現代版マッカーシズムの標的にされる可能性が考えられる。
2)キエフがポーランドを騙して第3次世界大戦を始めようとした件。
この調査では触れられていないが、若いポーランド人の見方を変えたもうひとつの要因は、2022/11/15にウクライナがポーランドを誤爆した後、キエフがロシアの仕業だと嘘を吐き、NATO加盟国であるポーランドを騙して第3次世界大戦を始めさせようとしたことだ。この事件は、それまでウクライナ指導部は信用出来ないと主張して来た連合党の様な人々の正当性を証明し、これにより彼等の見方が大きく支持を増やすことになった。キエフへの武器供与を望まない人が増えたのもその所為だろう。キエフの主張が嘘だと判明するまでの短い間、ひょっとしたら彼等は人生のフラッシュバックを経験したかも知れず、その強い印象が、この紛争に対するよりプラグマティックな態度を助長したのかも知れない。
3)穀物協定を巡る醜い争い。
この調査が触れていないもうひとつの点は、ウクライナが最近ポーランドを非難したことが若いポーランド人の見方に及ぼした可能性だ。この調査は5〜6月に実施されたものだが、丁度同じ時期の05/09には、ポーランドを含むEU諸国が地元の農民を保護する為にウクライナ産農産物の輸入を一方的に禁止したことに対して、ゼレンスキーが「絶対に受け入れられない」と激怒している(そもそもこれらの農産物は食糧危機に苦しむグローバル・サウス諸国に優先して輸出されるべきものだったのだが、キエフは人道的配慮よりも収益性を重視していることが、これによって図らずも暴露された)。
欧州委員会の関連協定は09/15に期限切れになる予定だったのだが、07/19にポーランドがその後も禁止措置を継続すると発表した後、キエフは再びポーランドを口撃した。これより報復は急速にエスカレートし、双方が相手国の大使を召喚した。その後両国の指導者達はこの醜聞についてTwitterでお互いを罵り合った。ここではこれ以上深入りしないが、これ以降キエフとポーランドとの関係は非常にややこしくなった。
まとめ
この最新の調査結果とその分析を念頭に置くと、ポーランドの若者達のウクライナに対する見方が大きく変化したことは否定出来ず、それは今秋の国政選挙の結果に影響を与える可能性が高い。キエフはこの層の支持を失いつつあり、彼等の心は反体制派に傾いている。ポーランド与党は政権を維持したいのであれば、この傾向に適切に対応しなければならない。
A Recent Survey Shows How Significantly Young Poles’ Views Towards Ukraine Have Changed
幅広い国際研究機関から資金提供を受けている学者とジャーナリストのグローバルな協力プラットフォームである The Conversation は、2023/08/01、2023年5〜6月に16〜34歳の若いポーランド人2,000人を対象として行った世論調査の結果を発表し、彼等のウクライナに対する見方が2022年3月からどれだけ大きく変化したかを明らかにした。
因みにこの研究を行ったのは、ベルリンの東欧国際問題センターの上級研究員2名であり、片方はオックスフォード大学ナフィールド・カレッジの準会員でもある。彼等は完全に西洋エスタブリッシュメントの専門家であって、どう考えても「ロシアのプロパガンダ」など流しそうにない立場の人達だ。
調査結果
前置きが済んだところで、調査結果のハイライトを紹介しよう。
・ポーランド人の若者の半数以上は、ウクライナ難民が自国に永住することを望んでいない。難民はウクライナに帰国することを前提として、一時的な地位を提供されるべきであると考える若者は42%から52%に増加している。
・カトリック教徒と保守層は、他の人達より永住を望んでいない(それぞれ10%と13%増)。
・ポーランド人の若者の1/3以上は、政府がウクライナに対して中立になることを望んでいる。政府はウクライナを支持すべきだと主張する人は83%から65%まで低下し、34%はポーランドが中立を保つことを望んでいる。
・若いポーランド人の中でも年齢の高い層(25〜34歳)や都市部の外(人口50万人以下)に住んでいる人達、或いは過去18ヶ月間にウクライナ人支援に携わって来なかった人達は、より中立を望んでいる。
・ポーランドの若者、特に保守的な人達は、益々平和と中立に傾きつつある。ポーランド軍のウクライナ戦争への関与を望んでいるのは僅か2%に過ぎず、人道支援は60%が支持しているが、武器の提供を支持するのは28%だけ。武器の提供に最も強く反対していたのは極右支持者達(回答者の約20%)だった。
調査結果の分析
1)反体制派の台頭。
反体制派/反EUの連合党(自由と独立連合)の急速な台頭が、ウクライナ戦争や難民受け入れに関する若者達の態度に極めて重要な影響を及ぼしたことは明らかだ。彼等は無視出来ない政治勢力であって、今秋の国政選挙後にはキングメーカーになる可能性すら有る。
ポーランド与党はこれに対抗する為、彼等に「ロシアの工作員」と云うレッテルを貼るかも知れない。彼等は既に05/29に「ロシア影響力委員会」なるものを立ち上げたが、これは多くの人々によって、ドイツの代理勢力と見做されているリベラル・グローバリストの野党「市民プラットフォーム」の信用を傷付ける為の試みだと解釈された。現在の社会政治的影響力を考えると、連合党もまたこの現代版マッカーシズムの標的にされる可能性が考えられる。
2)キエフがポーランドを騙して第3次世界大戦を始めようとした件。
この調査では触れられていないが、若いポーランド人の見方を変えたもうひとつの要因は、2022/11/15にウクライナがポーランドを誤爆した後、キエフがロシアの仕業だと嘘を吐き、NATO加盟国であるポーランドを騙して第3次世界大戦を始めさせようとしたことだ。この事件は、それまでウクライナ指導部は信用出来ないと主張して来た連合党の様な人々の正当性を証明し、これにより彼等の見方が大きく支持を増やすことになった。キエフへの武器供与を望まない人が増えたのもその所為だろう。キエフの主張が嘘だと判明するまでの短い間、ひょっとしたら彼等は人生のフラッシュバックを経験したかも知れず、その強い印象が、この紛争に対するよりプラグマティックな態度を助長したのかも知れない。
3)穀物協定を巡る醜い争い。
この調査が触れていないもうひとつの点は、ウクライナが最近ポーランドを非難したことが若いポーランド人の見方に及ぼした可能性だ。この調査は5〜6月に実施されたものだが、丁度同じ時期の05/09には、ポーランドを含むEU諸国が地元の農民を保護する為にウクライナ産農産物の輸入を一方的に禁止したことに対して、ゼレンスキーが「絶対に受け入れられない」と激怒している(そもそもこれらの農産物は食糧危機に苦しむグローバル・サウス諸国に優先して輸出されるべきものだったのだが、キエフは人道的配慮よりも収益性を重視していることが、これによって図らずも暴露された)。
欧州委員会の関連協定は09/15に期限切れになる予定だったのだが、07/19にポーランドがその後も禁止措置を継続すると発表した後、キエフは再びポーランドを口撃した。これより報復は急速にエスカレートし、双方が相手国の大使を召喚した。その後両国の指導者達はこの醜聞についてTwitterでお互いを罵り合った。ここではこれ以上深入りしないが、これ以降キエフとポーランドとの関係は非常にややこしくなった。
まとめ
この最新の調査結果とその分析を念頭に置くと、ポーランドの若者達のウクライナに対する見方が大きく変化したことは否定出来ず、それは今秋の国政選挙の結果に影響を与える可能性が高い。キエフはこの層の支持を失いつつあり、彼等の心は反体制派に傾いている。ポーランド与党は政権を維持したいのであれば、この傾向に適切に対応しなければならない。
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