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ECOWASの制裁は平均的なニジェール人を飢えさせているが、米国が気にしているのはバズームの健康ばかり(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。米国はニジェールのバズーム大統領の健康を心配しているが、ECOWASの制裁によって2,500万人のニジェール人が人道危機に瀕している状況には全く関心を払わない。これは米国がニジェールの隣国ナイジェリアを不安化させたいと云う裏の動機を持っていることを示唆している。
ECOWAS’ Sanctions Starve Average Nigeriens But The US Only Cares About Bazoum’s Health



 2023/08/13、軍が主導する暫定ナイジェリア政府の報道官、アマドゥ・アブドラママネ少佐は、同胞達は「ECOWASによる違法で非人道的且つ屈辱的な制裁によって大きな打撃を受けている」と述べ、「人々は医薬品、食料、電気を奪われている」と付け加えた。

 他方08/11、アントニー・ブリンケン米国務長官は、「バズーム大統領とその家族の状態の悪化」について「重大な懸念を表明」した。彼は人道危機に苦しむ約2,500万人のニジェール人については一言も触れず、米国の同盟者の健康だけをひたすら気に掛けていた。

 西洋大手メディアもこれに倣い、バズームが「乾燥した米とパスタを食べさせられた」と云う最近の報道に執着し、ニジェール国民の窮状は無視している。

 これらの言動の不純な動機を以下で分析してみよう。



ニジェール制裁を巡るナイジェリアの客観的な国益

 西洋は代理勢力であるECOWASに、平均的なニジェール人に集団懲罰を課すよう命じたが、これは差し迫った飢餓の脅威に直面したニジェール人が、絶望から新暫定政府に対して反乱を起こすことを期待してのことだ。つまり純粋に政治的な目的から2,500万人が人質に取られている訳だが、西アフリカの有力国である隣国ナイジェリアがこれに協力しなければ、こんなことは起こらなかった筈だ。

 ナイジェリアの客観的な国益は、ニジェール侵攻や制裁によっては実現出来るものではない。実際、ナイジェリアはニジェールとの貿易・金融関係を遮断することで、無謀にも自国の客観的国益を危険に曝している。 それは数十年に及ぶ親善を一挙に台無しにし、ニジェールの友好的な人々を敵に回すリスクが有る。

 この危機がどの様に解決されたとしても、二国間関係は恐らく二度と元には戻らないだろう。

 更にこれらの制裁は、ニジェールに家族や友人が居るナイジェリア北部国境地域のコミュニティで、憤りを生む可能性も有る。制裁は絶望的になったニジェール人達が反乱を起こすことを目的としたものだが、それと同様に、ナイジェリア人達がニジェールに居る愛する人々に医薬品や食料を密輸して制裁に違反することで、裏目に出る可能性も有る。軍が彼等を阻止する為に強制的な、場合に依っては致命的な手段に訴えた場合、社会不安やそれ以上に悪い事態を引き起こすかも知れない。

 ナイジェリアは、英国の2つの植民地が独立後に合併して成立した国だが、それ以来、イスラム教徒が多数派の北部とキリスト教徒が多数派の南部に大きく分断されて来た。これらの違いは、非常に明確な地域アイデンティティを形作り、それが時には国の統一に脅威を齎すことも有った。北部コミュニティで国境を超えた密輸が行われ、それを軍が抑圧した場合(それが現実のものだろうと単にそう思われただけのものであろうと)、これらの緊張関係が再燃するかも知れない。

 同様に、ニジェールの人道状況が悪化し続けてナイジェリア北部に難民が流入した場合、これらの人々が入国を許可されなかったり、ナイジェリア連邦政府が適切に難民を支援しなかったりすれば、同様の問題が生じるかも知れない。前者の場合はニジェールから家族や友人を受け入れたいナイジェリア人の間で動揺を引き起こすかも知れないし、後者の場合は絶望的になった難民が犯罪に手を染めたり、地元住民の仕事を奪ったりして、社会不安を引き起こすかも知れない。

 ナイジェリアは既に北東部でボコ・ハラムに対して、また南東部で「ビアフラ先住民族(Indigenous People of Biafra。ナイジェリア政府はテロ組織と見做している)」の様な南部分離主義者に対して、安全上の対策に苦労している。

 どのシナリオに於ても、ナイジェリアの国境地帯が危機に陥った場合、軍は更に分裂し、国家の統一にとって悲惨な結果を齎すかも知れない。従って、ニジェール情勢を出来るだけ早く安定させることが、ナイジェリアの客観的な国益となる。

 8月初めに投票を求められた時、北部上院議員部会は、NATOと恐らくフランスの支援を受けたECOWAS軍のニジェール侵攻をナイジェリアが率いることに反対したが、その理由はこの問題を認識していたからだろう。彼等の報道官は08/04の報道でこう警告している。

 「我々は、日々の仕事を行っている罪の無い国民に死傷者が出る結果となる為、上記の他の手段が使い果たされるまでは、軍事力の行使は例外とする。

 彼はまた「ニジェール共和国と国境を接する北部約7州、即ちソコト、ケビ、カツィナ、ザムファラ、ジガワ、ヨベ、ボルノは悪影響を受けるだろう」と付け加えた。この儘ニジェールの人道状況が悪化し続ければ、彼等の予想通り、ナイジェリア北部が「悪影響を受ける」ことは避けられない。



米国の真意

 これらの観察を念頭に置くと、米国がナイジェリアに対して制裁の維持やニジェール侵攻を勧めるのには、裏の動機が隠されているのではないかと疑うのは自然なことだ。上で分析した様に、どちらもナイジェリアの利益にはならないし、それどころか利益に反している。

 従って、米国はナイジェリアをより効果的に分断統治する為に、新たな国内安全保障上の危機の種を蒔いている可能性は排除出来ない。

 ブリンケンはバズームの健康だけを気に掛け、2,500万人の彼の同胞の健康のことは気にしなかった。米国はソフトパワーの為に、少なくとも表面的には関心を払って然るべきだったのだが、それすらもしなかったことは、こうした疑惑が尤もなものであることを示唆している。

 ニジェールは制裁前の時点で既に世界で3番目に貧しい国だったが、制裁によりワースト1位に落ち込むかも知れない。そうなればナイジェリア北部に大規模な難民流出が起こり、上記の様な安全保障上の危機を引き起こすリスクが有る。

 米国は介入の口実として人道危機を利用するチャンスを決して逃さないが、今回は西洋大手メディアと同様、自らが作り出した最新の最新の危機については、明らかにダンマリを決め込んでいる。たった1人の健康に関心を払って2,500万人の健康には無関心と云うそれらの矛盾した態度は、裏の動機についての上記の推測に信憑性を与えている。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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