アラスカのアリューシャン列島付近の中露海上偵察演習で、米国は形勢逆転される(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/08/07に報道されたアリューシャン列島付近での中露合同海上偵察演習は、米軍による一極覇権の時代が終わったことを示している。「地政学的なライヴァルの軍が自国の国境付近で演習を行うことは、戦争挑発行為と解釈されても仕方が無い」と云う単純な事実を、漸くアメリカ帝国の住民は実体験として理解することが出来る様になった。
The Sino-Russo Naval Patrol Near Alaska’s Aleutian Islands Flipped The Tables On The US
2023/08/05の米国の声明で、ロシアと中国がアリューシャン列島付近で合同海上偵察を実施したと報じられたことを受けて、アラスカ州の上院議員達はパニックに陥った。
彼等はこれを「侵犯」だと主張したが、米北方軍は偵察は「公海に留まり、脅威とは見做されなかった」と認めた。
何れにせよ、これまで米軍が中国やロシアの国境付近で軍事演習を行うことは頻繁に有っても、中露両国が米国の国境近くで演習を行うのはこれが初めてだった為、興味深い展開だった。
中露協商は同盟ではなく、世界の多極化プロセスに於ける、前例の無い緊密な戦略的パートナーシップだ。両国は米国による同様の演習に対して「対応」すると云うシグナルを、世界中に送ることを決めた。これまで個別に、レトリックでしか示して来なかったことを、今回は共同で具体的な方法で示したのだ。
この展開は以下の様に両国の利益を示している。
1)米国は今や中露協商が、法的に許される限り米国の海岸に艦隊を近付けることを躊躇わないことを知っている。
2)両国は、外国の軍艦の航行が許される範囲を定めた国連海洋法条約(UNCLOS)の条件を、自発的に遵守した。この枠組みを米国が認めていないにも関わらずだ。
3)この事例は国際海事法の問題に関して、中露と米国との間に明確な対照を示した。
4)アラスカの地元住民や他地域の米国人に、地政学的なライヴァルが自国の国境付近でこの様な演習を行った場合、どんな気分になるかを体験させることが出来た。今回の訓練は米国の政策形成に影響を与えるものではないが、中露が単に米国自身のそうした動きに対応しているだけであることを考慮すると、一部の有権者達が自国の指導者達の賢明さについて再考する機会を与えるかも知れない。
5)今回の訓練はエスカレーションを引き起こす閾値以下に留まった。そして中露はこれまで米軍による挑発に対応することに対して消極的だったが、今やそれが可能となったことが証明された。
これまで両国は、それぞれの部隊が米国の部隊に近付き過ぎたと非難されたことも有ったが、それらは何れも米国ではなく両国の国境付近で起きたことだ。そして両国の対応はレトリックのレヴェルに留まっていた。ところが今回米国は、今まで散々自分達が相手に対してやって来たことをやり返されたのだ。
これらの計画は恐らくかなり前に合意されたものと思われる。両国はこれまで米国が国境付近で活動することで自国に不快感を与えるのを止めさせたいと、ずっと望んで来た。だがロシアと中国の忍耐力は明らかに限界に達しており、だからこそ今、両国は共同で反応している。
これは両国の最初の海軍共同演習ではなかったが、これまでアメリカ沿岸付近で行われたものとしては最大規模であって、画期的だった。
両国は国連海洋法条約に基付く国際法を厳格に遵守し、且つ米国のこれまでの無数の同様の演習に対応しているに過ぎない。中露協商は最終的に米国に対して形勢を逆転させることで、軍事的一極性の時代は終わったことを世界に示したいと思っているのだ。
The Sino-Russo Naval Patrol Near Alaska’s Aleutian Islands Flipped The Tables On The US
2023/08/05の米国の声明で、ロシアと中国がアリューシャン列島付近で合同海上偵察を実施したと報じられたことを受けて、アラスカ州の上院議員達はパニックに陥った。
彼等はこれを「侵犯」だと主張したが、米北方軍は偵察は「公海に留まり、脅威とは見做されなかった」と認めた。
何れにせよ、これまで米軍が中国やロシアの国境付近で軍事演習を行うことは頻繁に有っても、中露両国が米国の国境近くで演習を行うのはこれが初めてだった為、興味深い展開だった。
中露協商は同盟ではなく、世界の多極化プロセスに於ける、前例の無い緊密な戦略的パートナーシップだ。両国は米国による同様の演習に対して「対応」すると云うシグナルを、世界中に送ることを決めた。これまで個別に、レトリックでしか示して来なかったことを、今回は共同で具体的な方法で示したのだ。
この展開は以下の様に両国の利益を示している。
1)米国は今や中露協商が、法的に許される限り米国の海岸に艦隊を近付けることを躊躇わないことを知っている。
2)両国は、外国の軍艦の航行が許される範囲を定めた国連海洋法条約(UNCLOS)の条件を、自発的に遵守した。この枠組みを米国が認めていないにも関わらずだ。
3)この事例は国際海事法の問題に関して、中露と米国との間に明確な対照を示した。
4)アラスカの地元住民や他地域の米国人に、地政学的なライヴァルが自国の国境付近でこの様な演習を行った場合、どんな気分になるかを体験させることが出来た。今回の訓練は米国の政策形成に影響を与えるものではないが、中露が単に米国自身のそうした動きに対応しているだけであることを考慮すると、一部の有権者達が自国の指導者達の賢明さについて再考する機会を与えるかも知れない。
5)今回の訓練はエスカレーションを引き起こす閾値以下に留まった。そして中露はこれまで米軍による挑発に対応することに対して消極的だったが、今やそれが可能となったことが証明された。
これまで両国は、それぞれの部隊が米国の部隊に近付き過ぎたと非難されたことも有ったが、それらは何れも米国ではなく両国の国境付近で起きたことだ。そして両国の対応はレトリックのレヴェルに留まっていた。ところが今回米国は、今まで散々自分達が相手に対してやって来たことをやり返されたのだ。
これらの計画は恐らくかなり前に合意されたものと思われる。両国はこれまで米国が国境付近で活動することで自国に不快感を与えるのを止めさせたいと、ずっと望んで来た。だがロシアと中国の忍耐力は明らかに限界に達しており、だからこそ今、両国は共同で反応している。
これは両国の最初の海軍共同演習ではなかったが、これまでアメリカ沿岸付近で行われたものとしては最大規模であって、画期的だった。
両国は国連海洋法条約に基付く国際法を厳格に遵守し、且つ米国のこれまでの無数の同様の演習に対応しているに過ぎない。中露協商は最終的に米国に対して形勢を逆転させることで、軍事的一極性の時代は終わったことを世界に示したいと思っているのだ。
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