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アゾフスタリ協定違反を踏まえ、プーチンのエルドアン称賛を再考する(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。捕虜交換協定に違反したトルコのエルドアン大統領は何を考えていたのか?
Revisiting Putin’s Praise Of Erdogan In Light Of Him Violating The Azovstal Deal



エルドアンは信頼出来るパートナー?

 2023/07/08、トルコのエルドアン大統領は前年の協定を破って自国内に拘留されていたウクライナのナチス達をゼレンスキー訪問後に釈放した。この展開は予想されていた為驚く様なことではないが、にも関わらず、以前は彼の個人的な誠実さを称賛していたプーチン大統領にとっては、この展開は非常に残念だったに違いない。

 2020/12/17には彼はエルドアンについてこう言っている:

 「我々はエルドアン大統領と特定の問題に関して異なる、時には対立する見解を持っています。しかし、彼は本物の男の様に約束を守ります。彼は尻尾を振りません。自分の国にとって何かが良いと思うなら、彼はそれを実行します。これは予測可能性に関するものです。誰と取引しているのかを知ることが重要です。」

 2022/10/27にもこう語っている:

 「エルドアン大統領は一貫した信頼出来るパートナーです。信頼出来るパートナーであると云うこと、恐らくこれが彼の最も重要な特徴です。(略)道のりは困難で、合意に達するのは難しいことは解っていますが、それでも合意に達した場合、我々は安心して、それが実行されるであろうと期待することが出来ます。」

 対照的に、エルドアンと同じ位、プーチンが約束を守ると信頼していたドイツのアンゲラ・メルケル前首相は、2022/12/07、ミンスク合意はキエフを武装させる時間稼ぎの為の策略であったことを認めた。プーチンは彼女の自白に深く失望して、2022/12/09にこう語っている:

 「率直に言って、前連邦首相からこの様なことを聞​​くとは予想していませんでした。何故なら、ドイツ連邦共和国の指導者達は我々に対して誠実であると常々思っていたからです。(略)どうやら率直に言って、我々は自分達の置かれている立場を理解するのが遅過ぎた様です。」



プーチンの見誤り

 プーチン大統領は、風刺されている様な怪物でも、狂人でも、陰謀家でもないが、非常に大きな欠点が有る。彼は自分の合理的な世界観を願望に基付いて西洋に投影し、それによって状況を大きく見誤った。彼は西洋人が、過激なイデオロギーを推進する為に客観的な国益を犠牲にする様な、救い様の無いリベラル・グローバリストであることに、手遅れになるまで気付かなかったのだ。

 彼は遅ればせながらこの現実を受け入れたにも関わらず、トルコの指導者に関しては依然として、西洋と足並みを揃えていないと信じていた。

 実のところエルドアンは確かにリベラル・グローバリストではなく、その点ではバイデンやメルケルとは異なっているが、にも関わらず彼は捕虜交換協定を破った。しかもその数日後には、「トルコのEU加盟プロセスを再活性化する取り組みを積極的に支援する」ことと引き換えに、スウェーデンのNATO加盟を支持することに同意した。07/11にはホワイトハウスのサリヴァン報道官は、バイデンは「警告や条件」無しでトルコへのF-16売却を支持しており、問題を抱えるトルコ-西洋関係の改善に役立つと述べた。

 恐らくエルドアンは、自国にとって一番良いと思われることをしたと云う点では、部分的にロシアの予想に一致していた。だが彼が見返りに得たものは、EUとの社会経済的関係や米国との軍事的関係の改善に進展が見られると云う、曖昧で漠然とした約束だけだ。
 
 但しEUや米国はトルコとの約束を破ったりはしないだろう。そんなことをすればエルドアンは国民の前で面子を失い、間抜け扱いされたエルドアンが憤慨して東に急旋回するかも知れないからだ。

 ロシアのペシュコフ報道官は、NATOサミットを前にしてエルドアンがこうした行動を「強いられた」のではないかと云う疑惑を表明しているが、これは信憑性が高い様に思われる。彼は両国のガス・ハブ計画やの他の形態の「互恵貿易・経済協力」に影響を与えることは無いと述べて皆を安心させたが、但しロシアは「今後様々な分野で協定を締結する際に、現在の状況を確実に考慮するでしょう」と釘を刺した。

 ロシア連邦評議会国防安全保障委員会のヴィクトル・ボンダレフ委員長は、ロシアのこれまでの真の友好関係は、このスキャンダルを受けて現在は「非友好的」と見做されるリスクが有ると警告し、トルコがロシアを背中から刺したと非難した。「確かに、国家安全保障と国益が優先されます。ですが、ハンガリーの指導者ヴィクトル・オルバン氏が繰り返し示した様に、西洋から深刻な圧力を受けていても、面子を保たなければならなりません。」



エルドアンの計算

 エルドアンがこうした反応を予想出来なかった筈は無い。彼は否定的な影響が出ることを承知しながら、協定に違反したのだ。となると、彼がNATOサミットを前に、西洋かロシアかと云うゼロサムの選択を「強いられた」のは十分有り得るかも知れない。

 エルドアンがこの取引を居した場合にどの様な結果が齎されたであろうかは推測するしか無いが、少なくともエルドアンは反抗するよりも従う方がトルコの国益に繋がると考えたのだろう。

 プーチンはこれに応じて「互恵貿易・経済協力」を停止するには理性的過ぎると計算した点に於てはエルドアンは正しかった。だが協定に違反すれば、今後の協力が制限される可能性が高いことも承知していた。それでも彼は取引に応じることによって西洋との関係を改善し、トルコへの圧力を緩和するチャンスを得ようと、賭けに出たのだ。

 この行動によって彼は「約束を守る男」としての評判に傷を付け、今後のロシアとの関係を制限することになったが、恐らく彼はこのニンジンに飛び付かざるを得ないだけの多くのムチで脅されていたのだろう。彼は確かに自国にとって良いと思われることをしたが、それは強いられたゼロサム・ゲームの下でのことだった。

 プーチンのエルドアンに対する称賛は、部分的には正しかったが、部分的には間違っていたとも言える。これはエルドアンにはもっと自尊心が有ると考えていた彼の支持者達も同じだった。
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