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南コーカサスに於けるフランス新植民地主義はロシアの安全保障上の利益を脅かす(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の解説の抄訳。アルメニアとアゼルバイジャン間で争われているナゴルノ・カラバフ紛争を巡って、フランスとロシアは真っ向から対立しているが、フランスの新植民地主義的態度は、この旧植民地主義国が本当の意味では反省していないことを示している。
French Neocolonialism In The South Caucasus Threatens Russia’s Security Interests



 2023/07/05、アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は、首都バクーで開催された非同盟運動(NAM)サミットでの演説で、フランスの新植民地主義的慣行を非難した。

 「フランスは、アゼルバイジャンのカラバフ地域に於けるアルメニア分離主義を支援し、また地政学的なライヴァル関係、外国軍の駐留、『オリエンタリズム』的植民地政策を通じて、(アフリカに於ける新植民地主義と云う)悪しき慣行を南コーカサス地域にも押し付けようとしています。」



カラバフ紛争を巡るフランスとロシアの対立

 カラバフ紛争にそれ​程詳しくない人は、フランスには世界で最も強力でハイパー・ナショナリスト的なアルメニア人のディアスポラのひとつが有ると云うことを恐らく知らないだろう。これはフランスの対南コーカサス政策の主導権を握っている。

 この影響力ネットワークは、フランス政府を国家レヴェルの代理勢力として利用し、アルメニアのパシニャン首相にアゼルバイジャンとの平和条約に同意しないよう圧力を掛ける一方で、アルメニア政府のカラバフに対する非公式の主張を維持するようパシニャンに促してもいる。

 パシニャンは、この30年に及ぶ問題を解決してしまえば、このハイパー・ナショナリスト勢力が彼に対してカラー革命を仕掛けるのではないかと恐れていると同時に、この未解決状態を無期限に持ち堪える為にフランスが国家的支援を続けてくれるのではないかとも考えている。

 そんな中、フランスがアルメニアへの武装を検討している、或いは既に秘密裏に実行に移していると云う噂が広まっている。アゼルバイジャンのアリエフ大統領が今年のNAMサミットでフランス政府を公に非難したのは、こうした文脈に於てのことだ。

 欧州安全保障協力会議が設立したOSCEミンスク・グループは、ナゴルノ・カラバフを巡る紛争に関して中立を保つことを約束しているが、フランスはその加盟国だ。フランスは約束を破ってこの台頭するグローバル・サウス国家の主権に対して挑戦している。アリエフ大統領が黙っていられなかったのは当然のことだ。

 ロシアも同じくミンスク・グループの一員だが、こちらは2020年にアルメニアから支援を要請されて断っている。ロシアは中立原則を守った訳だが、この為に後にパシニャンは、アルメニアがCSTO(集団安全保障条約)からの離脱を検討するかも知れないと脅している。
 
 ロシアが中立原則を守ったのは以下の理由からだ:
 ・それがミンスク・グループ加盟国の義務である。
 ・カラバフはアゼルバイジャンの領土として広く認められている。ロシアは国際法を尊重した。
 ・友好的なアゼルバイジャンを敵にしたくないと云うプラグマティズム。

 フランス側の理由は以下の様なものだ:
 ・ハイパー・ナショナリスト勢力に乗っ取られた。
 ・国際法の軽視。
 ・プラグマティズムより党派主義が優った。

 ロシアとフランスは既にアフリカでの影響力を巡って熾烈な競争を繰り広げている。ロシアの「民主的安全保障」政策はパートナー諸国が植民地解放プロセスを完全に完了する手助けをしている一方で、フランスの新植民地主義は、それらを属国として従属させ続けようとしている。フランスはカラバフ紛争の無期限凍結を支持しているが、ロシアは出来るだけ早急に政治的解決を促す努力をしている。この対立は現在急速に拡大している。



高まるリスク

 フランスが新植民地主義的な分割統治政策を反復しようとするにつれ、戦略地政学的に重要な南コーサカス地域は不安定化するリスクが有る。今後考えられる展開としては、

 1)最悪のシナリオ:パシニャンに対するアメとムチ作戦が熱い戦争の勃発に繋がる。これは計算違いによって起こる可能性が有る。この場合ロシアはウクライナ戦線に集中出来なくなり、予測不可能な結果を​​招く可能性が出て来る。

 2)比較的マシではあるが碌でもないことには違い無いシナリオ:フランスがロシアの「勢力圏」からアルメニアを「引き抜く」。これは「クレムリンの圧力によってカラバフをアゼルバイジャンに売り払ったことへの補償」として展開される可能性が有る。アルメニアがNATO陣営に入れば、南コーカサスが新冷戦の舞台になる。
 
 3)最善のシナリオ:パシニャンを説得して平和条約に合意させる。だがパシニャンが過激派ディアスポラに捕われたフランスからの激しい圧力に曝されている限りは、このシナリオは実現困難だ。この問題に関して単純な解決策は存在しない。アリエフ大統領がわざわざこの問題を公に非難したものも、これは放っておいても自然に消滅するものではないと考えたからだ。

 ロシアはアルメニアと同盟関係を結んでいるので、外交上微妙な立場に在る。何か語れば影響力を失ったのだとか、新植民地主義的意図を持っているのだとかフランスによって曲解されかねないロシアよりも、アゼルバイジャンの方がこの件についてより率直に語ることが出来る。

 但しアリエフ大統領の言葉は旧ソ連地域を脅かしているフランスの新植民地主義意図を暴露している為、フランスに対して発展途上国を団結させていると云う意味では、ロシアの利益と一致している。

 ハイパー・ナショナリスト的なディアスポラは今後もカラバフ地域を諦めないだろうが、今後は真に中立的な政策立案者達に、そのプロジェクトを継続するコストを考えさせることになるかも知れない。



フランスの無責任

 特定のロビー団体を喜ばせるためだけに外国の紛争を煽るのは無責任であり、フランスは外国に於ける自国の利益が彼等によって左右されるのを許すべきではない。折角マクロン大統領が今年のBRICSサミットへの出席に意欲を示し、それによってこれまでのグローバル・サウスとの関わりをリセットしようとしているのに、フランスの政策の信用が傷付くことになる。

 フランスのBRICSへの意欲の動機が疑わしいものであることは以前の記事(123)でも指摘して来たが、アフリカと東欧で継続中のフランスの対ロシア代理戦争は、フランスは新植民地政策に関して本当の意味では何も変わっていないことを証明している。だが殆どの人はこの展開の前向きな面にしか注目していない(123)。

 この希望的観測はアリエフ大統領の警告によって却下された。ロシアとアルメニアの関係は複雑なので、南コーカサスに於けるフランスの有害な役割についての彼の評価をロシアが公に支持するとは期待出来ないが、ロシアの外交官が言えなかったことをアリエフ大統領は率直に語ったので、ロシアが彼に対して賛同のウィンクを送っていることは確かだろう。
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フランスは信用できない。

 マクロンは計算高いですから、BRICSに参画してうまい汁を吸い、他のEUを出しぬく事で国民の指示を得る腹でしょう。
 もし、フランスがBRICSで表面的に協力するように演じる事に成功すれば、一枚岩であったグローバルサウスが内部分裂する危険性があります。
 そうなればロシア、中国の発言力が相対的に弱まり、結果は西側の思うつぼです。
 エゴイスティックな計算高さこそが西側の植民地主義の本質であり、その延長線にフランスのBRICS介入があります。いざとなれば平然とグローバルサウスを裏切るでしょうが、もしBRICSが目先の利益に飛びつけば、それこそ欧米の支配がさらに続く事になりかねません。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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