プリゴジン暗殺を計画しているのはロシアのFSBではなくキエフのGURである可能性が高い(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。プリゴジンを暗殺したところでロシアにとっては何ひとつ良いことは無いが、キエフにとっては良いことだらけだ。
It’s Kiev’s GUR, Not Russia’s FSB, That’s Likely Plotting To Assassinate Prigozhin
2023/06/30、ウクライナの軍事諜報機関(GUR)のキリル・ブダノフ長官は、クーデター失敗後に追放された民間軍事会社ワグナーのトップ、エフゲニー・プリゴジンに対するロシア連邦保安庁(FSB)の暗殺計画を、彼のスパイが知っていると主張した。
だが、この主張はナンセンスだ。プーチン大統領はその気になれば、プリゴジンに最後のチャンスを与えるのではなく、既に彼を排除出来ていただろうからだ。
プーチンは賢明にもこの決定によって内戦を回避し、プリゴジンが殉教者になるシナリオを回避した。しかもプリゴジンがベラルーシに追放されたことによって、近隣のNATO諸国はパニックに陥っており、ルカシェンコ大統領が警告した様なNATOの挑発からベラルーシを守る役にも立っているので、これはロシアの利益にも適っている。
こうした理由から、GURがプリゴジン暗殺を計画し、その後FSBに責任をなすりつけようとすることは、完全に理に適っている。これが成功すれば、
1)ロシア国内で内戦の恐怖が再燃する。
2)プリゴジンは殉教者になって国内の過激派が集結する。
3)NATOにとって国境の脅威となり得るワグナーが排除される。
4)ベラルーシがNATOの侵略から自衛する能力を弱める。
5)ロシアがベラルーシの主権を侵害したと信じる人が出て来れば、両国の間で問題が引き起こされる可能性が有る。
この様にプリゴジンを暗殺したところでロシアにとっては何ひとつ良いことは無いが、キエフにとっては良いことだらけだ。5)に関しては実現の可能性は低いが、それ以外の目標だけでも、GURがプリゴジンの暗殺計画を実行しようと全力を尽くす理由になる。
ブダノフの警告は、セルゲイ・スロビキン陸軍大将の逮捕に関する以前の報道と同じで、ロシアの最もデリケートな国内政治問題に干渉することが目的だ。キエフのオリガルヒの寡頭政治家ミハイル・ホドルコフスキーとマイク・ペンス元米副大統領はそれぞれ、プーチンはクーデターの再発防止の為に軍の粛清を必要としていると主張しているが、これもまた同様だ。
これら4つの報道は何れも、プーチン大統領に警告を発し、それによって対応を促すと云う無邪気な理由で発せられたものではなく、視聴者の認識を操作するのが目的だった。
こうした情報戦の挑発に引っ掛かった人は、次のクーデターが可能かも知れないとか、プリゴジンに危害は加えないと約束したプーチン大統領をFSBが蔑ろにしているとか云った印象を抱くかも知れない。
だが、これらは全てハイブリッド戦争の最新フェーズに過ぎないし、どれも成功の見込みは無い。しかし公衆がこれらの挑発に惑わされ、これらの嘘やそれが暗示するあらゆることを当然視してしまい、徐々に現実から乖離してしまうことのないよう、この点に気が付いておくことが大切だ。
It’s Kiev’s GUR, Not Russia’s FSB, That’s Likely Plotting To Assassinate Prigozhin
2023/06/30、ウクライナの軍事諜報機関(GUR)のキリル・ブダノフ長官は、クーデター失敗後に追放された民間軍事会社ワグナーのトップ、エフゲニー・プリゴジンに対するロシア連邦保安庁(FSB)の暗殺計画を、彼のスパイが知っていると主張した。
だが、この主張はナンセンスだ。プーチン大統領はその気になれば、プリゴジンに最後のチャンスを与えるのではなく、既に彼を排除出来ていただろうからだ。
プーチンは賢明にもこの決定によって内戦を回避し、プリゴジンが殉教者になるシナリオを回避した。しかもプリゴジンがベラルーシに追放されたことによって、近隣のNATO諸国はパニックに陥っており、ルカシェンコ大統領が警告した様なNATOの挑発からベラルーシを守る役にも立っているので、これはロシアの利益にも適っている。
こうした理由から、GURがプリゴジン暗殺を計画し、その後FSBに責任をなすりつけようとすることは、完全に理に適っている。これが成功すれば、
1)ロシア国内で内戦の恐怖が再燃する。
2)プリゴジンは殉教者になって国内の過激派が集結する。
3)NATOにとって国境の脅威となり得るワグナーが排除される。
4)ベラルーシがNATOの侵略から自衛する能力を弱める。
5)ロシアがベラルーシの主権を侵害したと信じる人が出て来れば、両国の間で問題が引き起こされる可能性が有る。
この様にプリゴジンを暗殺したところでロシアにとっては何ひとつ良いことは無いが、キエフにとっては良いことだらけだ。5)に関しては実現の可能性は低いが、それ以外の目標だけでも、GURがプリゴジンの暗殺計画を実行しようと全力を尽くす理由になる。
ブダノフの警告は、セルゲイ・スロビキン陸軍大将の逮捕に関する以前の報道と同じで、ロシアの最もデリケートな国内政治問題に干渉することが目的だ。キエフのオリガルヒの寡頭政治家ミハイル・ホドルコフスキーとマイク・ペンス元米副大統領はそれぞれ、プーチンはクーデターの再発防止の為に軍の粛清を必要としていると主張しているが、これもまた同様だ。
これら4つの報道は何れも、プーチン大統領に警告を発し、それによって対応を促すと云う無邪気な理由で発せられたものではなく、視聴者の認識を操作するのが目的だった。
こうした情報戦の挑発に引っ掛かった人は、次のクーデターが可能かも知れないとか、プリゴジンに危害は加えないと約束したプーチン大統領をFSBが蔑ろにしているとか云った印象を抱くかも知れない。
だが、これらは全てハイブリッド戦争の最新フェーズに過ぎないし、どれも成功の見込みは無い。しかし公衆がこれらの挑発に惑わされ、これらの嘘やそれが暗示するあらゆることを当然視してしまい、徐々に現実から乖離してしまうことのないよう、この点に気が付いておくことが大切だ。
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