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エルドアンは致命的な罠に陥ったのか? トルコ経済を支配するのは誰か?(抄訳)

ウィリアム・エングダール氏の記事の抄訳。エルドアンの低金利時代の終わりは、トルコ経済がウォール街とシティに支配される様になることを意味する。
Has Erdogan Fallen Into a Deadly Trap? Who Controls Turkey’s Economy?



 トルコのエルドアン大統領は再選を果たしたものの、その先行きには暗雲が垂れ込めている。バイデン政権が密かに支援する統一野党6党に対してキャンペーンを繰り広げる一方で、エルドアンはトルコ経済の短期的な崩壊を約束する内閣指名を行ってしまった。グローバルな地政学的舞台に於ける彼の役割は、これによって妨げられるだろう。

 エルドアンはBRICSへの加盟を目指しており、ウクライナで公然とロシアに反対することを拒否していることを考えれば、英米のアクター達が彼を無力化しようとしている理由は明らかだ。

 エルドアン新政権で最も重要な人事は、財務大臣と新中央銀行総裁の2人だ。ここに罠が仕掛けられている。

 ここ数年、ウォール街とシティは、リラに対する激しい投機攻撃を主導して来た。彼等はエルドアンの非正統的な低金利政策を採用した財務大臣と中央銀行総裁を標的にした。その結果、2022年後半にはインフレ率は80%を超えた。UAE、ロシア、中国が異例の短期融資を行った為、エルドアンは選挙前に状況を39%まで或る程度安定させることが出来た。

 5月末の選挙で勝利したエルドアンは、メフメト・シムセクを財務大臣に任命した。彼はエルドアン率いるAKPのメンバーで、2009〜15年にも財務大臣を務めている。彼は英国のエクセター大学で経済学の教育を受け、英国とトルコの二重国籍を有し、投資銀行メリル・リンチのロンドン支部の元最高幹部でもある。彼は低金利政策を公然と批判する立場だ。

 またシムセクの主張を受けて、エルドアンは41歳のトルコ系アメリカ人の銀行家でゴールドマン・サックス取締役のハフィゼ・ゲイ・エルカンをトルコ中央銀行総裁に指名した。トルコ中央銀行初の女性総裁となったエルカンは米国とトルコの二重国籍を持ち、2006年にプリンストン大学でオペレーションズ・リサーチと金融工学を学び、金融の博士号を取得している。

 彼女はその後ゴールドマン・サックスで9年間働き、2011年には常務取締役に就任している。2014年にはサンフランシスコの第一共和国銀行の幹部になり、そこで銀行の運用資産を何と10倍に増やし、2021年には共同CEOの座に収まっている。彼女は2023年5月の銀行破綻を齎した、重大な欠陥の有るリスク・モデルの立役者だったのだ。彼女は自分の仕出かしたことに気が付いていたのか、銀行が破綻する数ヶ月前に辞任している。2023/05/01には第一共和銀行はJPモルガン・チェースに乗っ取られ、彼女は現在この大失敗について集団訴訟で訴えられている。

 これらの経歴にも関わらず、トルコの金利の今後を決定するのはエルカンの役目になった。彼女は現在8.5%の基本金利を、今後数カ月以内に25%に引き上げると云う、ポール・ヴォルカーが穏健派に見える様な金利ショック療法に同意したそうだ。

 2023/06月22日の就任初行動で、エルカンはトルコ中央銀行の主要金利を6.5%も引き上げ、15%にして、これはエルドアンの低金利時代からの大逆転の始まりに過ぎないと約束した。だが「市場」はこれに満足せず、25%に上昇すると「予測」した。金利ニュースを受けてリラは下落し、金融の「正統性」を守る為にトルコの実体経済を破壊する準備が整った。リラは現在、米ドルに対して20%以上下落しており、これは2013年以降90%下落したことになる。ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースのような世界的な金融投機家が現在、トルコ経済を支配している。

 エルドアンは明らかに、再選を確実にする為にファウスト的取引を行ったのだ。

 JPモルガンは、年末までに中央銀行金利は30%になると「予測」している。シムセクとエルカンがトルコ経済と信用を掌握している限り、エルドアンは経済成長戦略を追求することも、野心的な石油・ガス開発計画を追求することも出来ないだろう。

 ヘンリー・キッシンジャー御大が昔言ったと伝えられる様に、「カネをコントロールする者が世界をコントロールする。」現時点では、エルドアンのトルコを支配しているのはウォール街とシティの銀行家達だ。これはエルドアンにとってもトルコの将来の地政学的役割にとっても、非常に決定的な分岐点だ。
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エルドアンは独裁権が欲しいだけ。

 支配者が本気で自国の利益を優先しているなら、そして賢明ならば、アメリカ白人の勢力が弱体化している現在の流れを理解し、少なくともアメリカの支配から離れようとするでしょう。
 けれども、もしも、支配者が自分の権力維持を優先するなら、そして長期的なヴィジョンと判断力に欠けるなら、アメリカの白人に自国を売国する事になります。
 トルコにもアメリカ白人のスパイが存在し、情報を操作し続けている以上、エルドアンを攻撃する風潮が誘導され、再選出来ないようにされるでしょう。
 世論によって選挙の勝敗が決定される以上、エルドアンがアメリカのスパイ以上に世論が自分を支持するように情報操作できなければ、アメリカへの売国を支持するより他なくなります。
 エルドアンが売国を選んだ以上、この人物は長期的なヴィジョンに欠け、栗崎だけの愛国者であるに過ぎず、ただのエゴイストでしかないと考えられます。
 ブラジルのルラも同じですが、少なくとも現時点で露骨にアメリカを敵に回せば、最大限の妨害を受ける事になりますから、いかにつかず離れずを保つかが問われるでしょう。
 ロシアはウクライナに集中していますから、アメリカは安心して積極的にトルコやブラジルを侵略する事が出来ます。その点でも、アメリカ白人はウクライナ戦争の長期化を望んでいると言えるでしょう。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
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