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プリゴジンとその協力者達をベラルーシに追放することはロシアの利益に適っている(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。プリゴジンに対する処罰が甘いのではないかと云う疑問から、多くの人がクーデター未遂は偽旗作戦だったのではないかと疑っているが、プーチン大統領が下した処分は、実際にはロシアの利益に適うものだ。
Exiling Prigozhin & His Collaborators To Belarus Serves Russian Interests



 2023/06/23〜25のクーデター未遂を受けて、首謀者のプリゴジンと彼に協力した者達がベラルーシに追放された件は、代替メディア・コミュニティの間で、これは実はレジームチェンジの試みではなく偽旗作戦ではなかったのかとの憶測を呼んでいる。

 彼等は何故プーチン大統領が、モスクワに進軍する反逆者達を容赦無く殺害するのではなく、慈悲深く彼等に最後のチャンスを与えたのか、理解出来ずに苦しんでいる。その為、彼等は秘密の秘密の計画が有ったのではないかと疑っている。

 有力な陰謀論に拠れば、これは北部戦線の開始に備えてNATOを警戒させずに大量の人員と装備をベラルーシに移送する為に仕組まれたものだ、と云うことになっているが、これは有りそうにない。その為にプーチン大統領が1993年以来最悪の政治危機を画策したと云うのは考え難い。この事件は世界的な注目を集めてしまったし、一部のパイロット達が死亡する結果まで引き起こしている。

 2023/06/26の国民へ向けたプーチンの演説を読めば、ロシアの敵が望んでいた様な大規模な流血沙汰を阻止する為に、彼が如何に真剣に取り組んでいたかが理解出来る筈だ。

 プーチン大統領が実際に行ったプラグマティックな緊張緩和取引は、既に始まり掛けていた内戦の芽を摘むだけでなく、よりロシアの利益に適ったものだった。それに続く結果は即興で作られたものであって、一部で想像されている様に事前に計画されたものではなかった。



1)内戦や不安定化のリスクを回避出来た。

 先ず、プーチン大統領は06/26に次の様に述べた:

 「ワグナー・グループの兵士と指揮官の大多数はロシアの愛国者であって、国民と国家に忠実です。ドンバスとノヴォロシアを解放した時の戦場での彼等の勇気がこれを証明しています。彼等が祖国とその未来の為に肩を並べて戦っている戦友達に対して、彼等の知らない内に彼等を利用しようとする試みが行われたのです。」

 この評価を踏まえてみると、ワグナーのメンバー達がロシア国防省との契約に署名したくない、或いは家族の許に戻りたくないのであれば、ベラルーシに亡命する機会を与えると彼が提案するのは理に適っている。中には、自分がしたことを恥じて祖国に留まることが出来ない人も居るかも知れないので、同盟国であるベラルーシに移住して新しい生活を始める為のきちんとした脱出プランを提供することが重要なのだ。ここで恨みを拵えてしまうと、有害なナショナリスト勢力が、彼等や社会を過激化する為にそれを利用するかも知れない。

 これはプリゴジンにも当て嵌まることだ。彼が殉教者になってしまえば、そこに国内が過激派が集結するかも知れなかった。だが彼は実際には牙を抜かれた後、国家の監視下で恥ずべき生活に耐えることになった。彼は賢明にも、自分と、自分が騙した部下達の命を救う選択をしたが、それによって、自分が主張する大義の為に究極の犠牲を払うつもりが無いことを示した。以前は彼を支持していた人々に対する彼の魅力は、これによって減じたことだろう。



2)近隣のNATO諸国に警戒感を植え付けた。

 また、この取引のニュースが流れた後、NATO加盟国であるリトアニアポーランドは国境警備を強化すると宣言した。ベラルーシのNATO隣国に恐怖を引き起こすことに成功したのだ。

 ワグナー・グループアルチョモフスクの戦いで主導的な役割を果たし、その武勇を讃えられることになったが、これにより、仮令ワグナーがベラルーシで活動している訳ではないとしても、ベラルーシにワグナーが居ること自体が、近隣の国民に強力な心理的影響を及ぼすことになる。

 ベラルーシのルカシェンコ大統領は06/01の時点で、西洋が彼に対する新たなクーデターを準備していると警告し、ロシアのベルゴロドで起こった様な代理侵攻の可能性も有ると示唆した。

 他方プリゴジンは、クーデター失敗後に発表した最初の音声メッセージで、ルカシェンコはワグナーの活動を合法化するだろうと述べている。

 若しワグナーがベラルーシで合法的に活動することを許可されれば、NATOがカラー革命を起こして「反政府勢力」の支援を口実にベラルーシに侵攻するシナリオが現実のものとなった場合、ワグナーがベラルーシ防衛の為に動く可能性が出て来る。
 
 そうなれば、大恥を掻いたワグナーのメンバー達は自分達の愛国心を証明することが出来るし、「彼等は指導者に状況を誤解させられて反逆罪を犯したのだ」と云うプーチン大統領の主張に信憑性を加えることが出来る。少なくとも彼等は世論の法廷で、名誉挽回のチャンスを得ることになるかも知れない。真の愛国者達はこの点でロシア世界に奉仕することで、自分達の評判を回復したいと思うかも知れないし、そうなれば全ての関係者にとって有益な結果が導き出される。




結論

 プリゴジンとその協力者達をベラルーシに追放すると云うプーチン大統領の決定は、レジームチェンジ危機の幕引きとしては実に見事なものだった。この決定は、

 ・プリゴジンに騙された祖国防衛の英雄達に、恥ずかしくて自国に留まることが出来ない場合、同盟国ベラルーシで新たな生活を始める機会を与えた。

 ・プリゴジンを、国内過激派が持ち上げる様な殉教者にさせなかった。

 ・NATOの差し迫ったハイブリッド戦争計画からベラルーシを守る上で、恐らくは決定的な役割を果たすことになる。

 この結果は事前に計画されたものではなく、プラグマティックな即興によって生まれたものだ。ロシアを誠実に支持する代替メディア・コミュニティの住人達は、これが偽旗作戦のマスキロフカだったと云う信頼性の低い陰謀論を捨て、このことを受け入れなければならない。
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ベラルーシのクーデターが巧妙に防止される

 ロシア本国ですらクーデターが勃発していますから、圧倒的に国力が劣るベラルーシでもウクライナとNATOがクーデターを画策しているのは事実でしょう。
 この状況でワグナーの優秀な兵士たちがベラルーシ入りしたという事は、クーデター画策者には驚愕の事実です。
 もし、ワグナーがロシアと事を構えたいのなら、クーデターの協力者になってくれる。ところがもし、ワグナーが名誉を回復したいなら、クーデター画策者が接触してきた段階で間違いなくベラルーシとロシアに情報提供し、完全に排除する方向で尽力するでしょう。
 さらに、実際にテロを実行しようとしても、ワグナーに妨害される事が目に見えています。
 嘘と情報操作しかないNATOとしては、ワグナーを全面的に手駒として信用する事は出来ません。従って万が一、プリゴジンやワグナーの兵士がロシアに反感を持っていたとしても、NATO側がそれを信頼する事は不可能です。
 さらに、プリゴジンの反乱は、ロシアが十分な武器を提供しないからでした。つまりいくらワグナーが優秀な兵士集団であろうとも、ロシアの提供する武器なしでは戦えない事を意味します。
 プリゴジン自身、ロシアの兵力は知っているはずですから、ワグナーがほとんど解体に近い状況になり、自らの命令が届かず、報酬も得られない状況である以上、ベラルーシで反旗を翻すのは不可能だと悟っているでしょう。
 ベラルーシに核兵器はあっても、通常兵器は不充分ですから。
 この状況でロシアに反旗を翻してクーデターを起こせば、ワグナーはNATOの暗躍者もろとも崩壊させられます。
 ワグナーにもロシアよりと反ロシア派がいるでしょうが、プーチン大統領は巧妙にワグナーを内部分裂させ、反撃力を完全に奪った上、ベラルーシでのクーデター防止のかかしとして利用する事に成功したわけです。優秀ですね。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
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