特別作戦についてどんな意見を持っていようとも、プリゴジンの反乱は容認出来ない(抄訳)
プリゴジンの反乱未遂事件について、アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。これまで何度も指摘して来たが、ロシアはウクライナ戦争を自ら望んだ訳でもなく、ウクライナ全土を軍事的に征服しようとしている訳でもない。外交交渉が全て徒労に終わってしまった為、ドンバス戦争を終わらせ、第三次世界大戦の勃発を未然に防ぐには、軍事介入以外に方法が無くなってしまったので、仕方無く軍を進めただけだ。プーチンは大統領就任当初から西洋との平和的共存の為に努力して来たので、特別軍事作戦開始以降もその可能性を開いた儘にしているのだが、ロシアの愛国者の中には、軍事的決着を望んでいる者も少なくない。プリゴジンの反乱は、そうした人々の不満に付け込んで行われたものだろうが、ロシアの国益には反する行為だ。
Prigozhin’s Treason Is Unacceptable No Matter One’s Opinion Of The Special Operation
事件の背景
プリゴジンは、自分はウクライナ戦争に関してロシアの国益の為に行動していると主張しているが、彼の大義は精査に耐えるものではない。
ワグナーとロシア国防省との対立は5月以来激化している。国防省は意図的にワグナーに弾薬を出し惜しみしているとプリゴジンは主張しているが、アルチョモフスクの戦いでの勝利は、彼の主張の信憑性に疑問を投げ掛けるものだ。
その後、国防省はワグナーを含む全ての民間軍事会社に国防省と契約を結ぶよう義務付けたが、プリゴジンは断固としてこれを拒否した。彼が公然とプーチン大統領に反対するのはこれが初めてだった。
プーチン大統領この件について6月初めに、「国防省との契約が無ければ、国家から社会保障を受ける法的根拠は無い」と警告を発している。
プリゴジンとプーチンの関係についての下らない憶測
その時点まで、プリゴジンとプーチンの関係についての憶測が出回っていた。国防省に対するプリゴジンの激しい暴言は、軍への名誉毀損を厳しく禁じる法律に違反するのではないか、それについて実はプーチンの承認を事前に得ていたのではないか、と云うものだ。少なくとも、何故プリゴジンは逮捕されなかったのか、少なくとも起訴されなかったのかについて、多くの人が疑問に思っていた為、プーチンがプリゴジンを通じて、軍幹部等に改善の圧力を掛けているのではないかと云う憶測が出回っていた。
が、こうした憶測は、ロシアが正に国家としての存亡を賭けて戦っている真っ最中にプリゴジンが国家反逆罪を犯し、これをプーチンが祖国の統一に脅威を与えていると非難したことで、完全に信憑性を失った。プリゴジンの武装クーデター未遂は、国防省が説明した通り、正に「背後から刺す」所業であり、キエフはこの機会を利用して、反攻を再起動させる危険性が有る。
逆張り意見と反ロシア・プロパガンダの違い
代替メディア・コミュニティの非ロシアの親ロシア派(NRPR)は、ロシアの特別軍事作戦に対するプリゴジンの厳しい批判に共感したかも知れない。だが、それは彼がしたことの言い訳にはならない。彼はメディア・キャンペーンを通じて、法の定める範囲内で自らの構想する改革を推進することも出来た筈なのに、そうしなかった。
今年のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、プリゴジンが今年のトレンドセッターに選ばれたことからも解る様に、エリート層の一部は、長年の懸念であったロシアの包括的の改革を支持しつつあった。若しプリゴジンがロシア憲法に忠実であり続けていたら、最終的には十分な支持を集めて、彼の提案の幾つかが政策として公布された可能性は非常に高い。
だが残念なことに、彼は不正行為に走った。これは以下の2つの出来事が引き金になったものと思われる。
1)前述した、全民間軍事会社は国防省と契約せよと云う義務。
2)ロシアの安全が確保されれば、プーチン大統領はウクライナでの代理戦争を政治的に解決することに関心が有ると明言したこと。
2)については、ラヴロフ外相もまた戦争の凍結に関心が有ると示唆している。プリゴジンやその仲間達は特別作戦をエスカレートさせようと繰り返し扇動しているが、この目的の為に国家に対して武器を取ることは反逆罪だ。
人口に膾炙した代替メディア記事の心の痛むファクトチェック
これに関連して、ロシア情勢について、無数のNRPRが誤解を招く一因となった記事が、5月に出回った。無謀な推測が満載されたペペ・エスコバルの記事だ。
Cries and Whispers Along the Russian Watchtowers
Escobar: What's Behind Prighozin's Sound & Fury?
エスコバル氏はモスクワのエリート層を3つに分類した。勝利党、平和党(勝利党なら降伏党と呼ぶだろう)、そして中立/未定。これではまるで、平和を望む者は、ロシアが西洋に降伏することを望んでいると仄めかしている様なものだ。この場合、プーチンやラヴロフやその他多くの政府高官が、この「平和党」に分類されてしまうことになる。
エスコバル氏は過去2回のロシア訪問中にロシアのエリート達から称賛され、「ロシアの内部関係者の代弁者」だと思われているので、彼の影響力は絶大だ。善意ではあるが世間知らずな多くの人々が、「情報筋」の言葉を引用する彼の意見を信頼している。
当時彼はボルトニコフFSB(ロシア連邦保安庁)長官を「中立/未定」に分類したが、FSBがプリゴジンがロシアの背中を刺したと告発し、プーチンがプリゴジンの行為を反逆罪と呼んだ事実は、ボルトニコフとプーチンが同じ側に立っていることを証明している。エスコバル氏の分析は誤っていたと言わざるを得ない。彼等の愛国心に疑いを投げ掛けたことは、結果的に多くのNRPRを誤解させることになった。プーチンやラヴロフがやろうとしていることは、ロシアを西洋に対して降伏させようとすることとは程遠いものだ。
まとめ
エスコバル氏かプリゴジン氏かに惑わされて、プリゴジンのクーデター計画を支持すべきではない。ロシア国家は団結しており、それを分断しようとするあらゆる試みは、武力であれ、無謀な憶測であれ、失敗するだろう。 プリゴジンの命運は最早定まったが、エスコバルの評判は、彼が悔い改めて償えば、まだ回復出来るだろう。
Prigozhin’s Treason Is Unacceptable No Matter One’s Opinion Of The Special Operation
事件の背景
プリゴジンは、自分はウクライナ戦争に関してロシアの国益の為に行動していると主張しているが、彼の大義は精査に耐えるものではない。
ワグナーとロシア国防省との対立は5月以来激化している。国防省は意図的にワグナーに弾薬を出し惜しみしているとプリゴジンは主張しているが、アルチョモフスクの戦いでの勝利は、彼の主張の信憑性に疑問を投げ掛けるものだ。
その後、国防省はワグナーを含む全ての民間軍事会社に国防省と契約を結ぶよう義務付けたが、プリゴジンは断固としてこれを拒否した。彼が公然とプーチン大統領に反対するのはこれが初めてだった。
プーチン大統領この件について6月初めに、「国防省との契約が無ければ、国家から社会保障を受ける法的根拠は無い」と警告を発している。
プリゴジンとプーチンの関係についての下らない憶測
その時点まで、プリゴジンとプーチンの関係についての憶測が出回っていた。国防省に対するプリゴジンの激しい暴言は、軍への名誉毀損を厳しく禁じる法律に違反するのではないか、それについて実はプーチンの承認を事前に得ていたのではないか、と云うものだ。少なくとも、何故プリゴジンは逮捕されなかったのか、少なくとも起訴されなかったのかについて、多くの人が疑問に思っていた為、プーチンがプリゴジンを通じて、軍幹部等に改善の圧力を掛けているのではないかと云う憶測が出回っていた。
が、こうした憶測は、ロシアが正に国家としての存亡を賭けて戦っている真っ最中にプリゴジンが国家反逆罪を犯し、これをプーチンが祖国の統一に脅威を与えていると非難したことで、完全に信憑性を失った。プリゴジンの武装クーデター未遂は、国防省が説明した通り、正に「背後から刺す」所業であり、キエフはこの機会を利用して、反攻を再起動させる危険性が有る。
逆張り意見と反ロシア・プロパガンダの違い
代替メディア・コミュニティの非ロシアの親ロシア派(NRPR)は、ロシアの特別軍事作戦に対するプリゴジンの厳しい批判に共感したかも知れない。だが、それは彼がしたことの言い訳にはならない。彼はメディア・キャンペーンを通じて、法の定める範囲内で自らの構想する改革を推進することも出来た筈なのに、そうしなかった。
今年のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、プリゴジンが今年のトレンドセッターに選ばれたことからも解る様に、エリート層の一部は、長年の懸念であったロシアの包括的の改革を支持しつつあった。若しプリゴジンがロシア憲法に忠実であり続けていたら、最終的には十分な支持を集めて、彼の提案の幾つかが政策として公布された可能性は非常に高い。
だが残念なことに、彼は不正行為に走った。これは以下の2つの出来事が引き金になったものと思われる。
1)前述した、全民間軍事会社は国防省と契約せよと云う義務。
2)ロシアの安全が確保されれば、プーチン大統領はウクライナでの代理戦争を政治的に解決することに関心が有ると明言したこと。
2)については、ラヴロフ外相もまた戦争の凍結に関心が有ると示唆している。プリゴジンやその仲間達は特別作戦をエスカレートさせようと繰り返し扇動しているが、この目的の為に国家に対して武器を取ることは反逆罪だ。
人口に膾炙した代替メディア記事の心の痛むファクトチェック
これに関連して、ロシア情勢について、無数のNRPRが誤解を招く一因となった記事が、5月に出回った。無謀な推測が満載されたペペ・エスコバルの記事だ。
Cries and Whispers Along the Russian Watchtowers
Escobar: What's Behind Prighozin's Sound & Fury?
エスコバル氏はモスクワのエリート層を3つに分類した。勝利党、平和党(勝利党なら降伏党と呼ぶだろう)、そして中立/未定。これではまるで、平和を望む者は、ロシアが西洋に降伏することを望んでいると仄めかしている様なものだ。この場合、プーチンやラヴロフやその他多くの政府高官が、この「平和党」に分類されてしまうことになる。
エスコバル氏は過去2回のロシア訪問中にロシアのエリート達から称賛され、「ロシアの内部関係者の代弁者」だと思われているので、彼の影響力は絶大だ。善意ではあるが世間知らずな多くの人々が、「情報筋」の言葉を引用する彼の意見を信頼している。
当時彼はボルトニコフFSB(ロシア連邦保安庁)長官を「中立/未定」に分類したが、FSBがプリゴジンがロシアの背中を刺したと告発し、プーチンがプリゴジンの行為を反逆罪と呼んだ事実は、ボルトニコフとプーチンが同じ側に立っていることを証明している。エスコバル氏の分析は誤っていたと言わざるを得ない。彼等の愛国心に疑いを投げ掛けたことは、結果的に多くのNRPRを誤解させることになった。プーチンやラヴロフがやろうとしていることは、ロシアを西洋に対して降伏させようとすることとは程遠いものだ。
まとめ
エスコバル氏かプリゴジン氏かに惑わされて、プリゴジンのクーデター計画を支持すべきではない。ロシア国家は団結しており、それを分断しようとするあらゆる試みは、武力であれ、無謀な憶測であれ、失敗するだろう。 プリゴジンの命運は最早定まったが、エスコバルの評判は、彼が悔い改めて償えば、まだ回復出来るだろう。
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