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セルビアの反政府デモはカラー革命家と愛国者の混在だ(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。多少補足した。セルビアの反政府抗議活動には2つの勢力が有り、それぞれ全く正反対のことを政府に望んでいる。
Serbia’s Anti-Government Protesters Are A Mix Of Color Revolutionaries & Patriots




セルビアでカラー革命?

 2023/05/28、セルビアの首都ベオグラードで、大規模な反政府集会が開催された。

 同05/30、ロシアのアレクサンダー・ボツァン=ハルチェンコ駐セルビア大使は、これをハイブリッド戦争の一部と位置付け、「マイダン・クーデターの試み」であると発言した。

 06/06、スルプスカ共和国(連邦国家ボスニア・ヘルツェゴビナの構成体のひとつで、主要3民族のうち、セルビア人を主体とする共和国)のミロラド・ドディク大統領は、セルビアで起こっている反政府抗議活動は、英国の諜報部とセルビアの協力者によって引き起こされたものであるとの見解を明らかにした。

 これらはつまり5月初めに起きた2つの銃乱射事件を利用して、西洋諸国がカラー革命を仕掛けていると云う説明だ。



カラー革命を起こされる理由

 そもそもNATOがユーゴスラヴィアを分裂させ侵略した為に誕生した国、セルビア共和国は、既に西洋諸国の数々の命令に従って来た。ヴチッチ政権は何年も前にNATOのパートナーになることに同意し、NATOの対ロシア代理戦争に於ても、一貫して国連総会での反ロシア決議を支持する投票を行って来た。

 だが、西洋諸国にとってはそれだけでは十分ではないのだ。彼等は命令が完全に、且つ即時に遂行されることを望んでいる。

 セルビアはまだ反ロシア制裁に加担していないし、NATOの傀儡であるコソボ・メトヒヤ自治州が自己宣言した「独立」を承認していない。ヴチッチ大統領はそのどちらも自分の政治生命に終止符を打つ可能性が高いと恐れているので、消極的なのだ。



カラー革命とは正反対の要素

 これらの背景は、西洋諸国が銃乱射事件を利用してカラー革命の圧力を掛けようとした、と云う説明に説得力を持たせている。

 だが、ヴチッチ氏に対する抗議者の中には愛国者も含まれているので、状況はそれ程白黒はっきりしている訳ではない。

 彼等はヴチッチ大統領顔、自国を親西洋路線に持って行こうとしていることを嫌っており、最終的にEUに加盟する為にコソボを見捨てるのではないかと恐れている。

 ヴチッチ氏が送った幾つかのシグナルがそうした意思を示唆しているのではないかと解釈した為、彼等は抗議に参加したのだ。

 また06/06に掲載されたフィナンシャル・タイムズのインタビューで、ヴチッチ氏は自国がキエフに弾薬を送る仲介業者に弾薬を販売することに「反対してはいない」と云う、極めて無頓着な態度を取った。これもまたセルビアの愛国者達を激怒させたことだろう。

 愛国者達もカラー革命家達も、それぞれ独自の思惑を持ってはいるが、ヴチッチ政権に圧力を掛けたいと云う目標は同じだ。だから愛国者達はカラー革命家達と肩を並べて抗議に参加し続けることだろう。

 

それぞれの思惑

 だが、両者の思惑ははっきり異なっている。

 カラー革命家達は、ヴチッチの首を挿げ替え、あらゆる点で疑問を持たずに西洋の言いなりになる筋金入りのリベラル・グローバリストを後釜に据えたいと思っている。

 他方愛国者達は、彼が政策をより保守的でナショナリスト的な方向へ根本的に再調整することを望んでいる。

 ヴチッチ氏は所謂「バランス調整」を不器用にこなして来た訳だが、その過程で政治的スペクトルの両端を怒らせてしまった。気が付けば彼は完全に自分自身が引き起こしたジレンマに陥っていた訳だ。

 彼は以下のことを同時に出来ると考えていた:

 ・対ロシア制裁発動を拒否する。
 ・キエフに武器を供与する。
 ・国連総会でロシアに反対票を投じる。
 ・セルビアを「欧州・大西洋統合」路線に持って行く。
 ・コソボの自己宣言した「独立」を認める。
 ・保守・ナショナリスト的見解に時々リップ・サーヴィスを行う。

 ヴチッチ氏はどちらの陣営につくか選択を迫られている訳だが、どちらを選択したとしても、彼の政治生命はそこで終わる可能性が有る。彼が今までのらくらとどっちつかずの態度を取って来たのはそれが理由だ。

 全体的に見れば、彼は親ロシアと云うより明らかに親西洋の指導者だが、西洋の新冷戦ブロックは、彼の「欧州・大西洋統合」政策のペースが遅いことに不満を抱いている。だからこそ彼等はカラー革命に頼った訳だが、皮肉なことに、これは同時に愛国者達にも、彼等のアジェンダを推進する機会を与えてしまった。



結論

 ヴチッチに対する以前の抗議の前例を考えれば、今回もまた事態が彼の解任にまで至る可能性は低い。

 とは言っても、西洋諸国にこの圧力を和らげて欲しいとの願いから、彼がロシアに対して正式に制裁を発動する可能性は有るし、同時にコソボの独立を承認すると云う賭けに出る可能性も排除出来ない。

 ロシアに対する制裁を発動しても、愛国者達の怒りは今更な話だが、コソボを犠牲にするとなると話は別だ。前例の無い激しい抗議活動が引き起こされ、暴力沙汰に発展する可能性も有るだおる。

 そんなことになればヴチッチ政権最大の危機となる為、彼はそのシナリオを嫌がるだろう。だが暴動鎮圧の為に彼がどんな手段を用いても全面的に支援する、と西洋諸国が約束すれば、そのシナリオも起こり得る。

 ヴチッチはまだどうするか決めていない。だが決着の時はは刻一刻と近付いている。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
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