「世界は益々多極化」し、西洋の覇権は衰退すると、欧州中央銀行が認める(抄訳)
ベン・ノートン氏の記事の抄訳。ドルの覇権に関する後半1/3程度は割愛した。
ECONOMY‘World becoming more multipolar’, Western hegemony declining, admits European Central Bank
欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、2023/04/17のNYでの講演「断片化する世界に於ける中央銀行」に於て、米ドル覇権の衰退やウクライナ戦争、中国の台頭等により、「地政学の地殻変動が加速している」ことと、「世界は益々多極化する可能性が有る」との認識を述べた。
C. Peter McColough Series on International Economics With Christine Lagarde
氏はまた、「世界経済が(米国と中国がそれぞれ主導する)競合する2つのブロックに分断されている」と指摘しつつ、「欧州に於ける戦略的自治アジェンダ」について触れ、欧州連合が独自の道を追求する可能性について示唆した。
これは明らかに、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の路線のことを指していた。2023/04/05〜07、マクロン大統領は中国を訪問した際、米国の欧州支配を公然と批判し、欧州の指導者達は単にワシントンの「属国」や「追随者」であることは出来ないと主張した。
ラガルド氏は欧州で最も権力を持つ人物の一人だ。彼女はフランスの元財務大臣で、元IMF理事。NYで行った今回の講演も、米国政府と密接な関係を持つ強力なシンクタンクであり、本質的に国務省とウォール街の間の橋渡し役として機能する外交問題評議会(CFR)の為に行ったものだ。曾てロックフェラー系のオリガルヒ達はCRFの戦争と平和研究プロジェクトに資金を提供し、ソ連に対する第一次冷戦計画を支援した。
この講演の丁度前日の04/16、元FRBの理事会議長で現米財務長官ジャネット・イエレンはCNNのインタビューで、次の様に認めている:
「我々がドルの役割に関連した金融制裁を発動すれば、時間の経過と共にドルの覇権が損なわれると云うリスクが有ります。(略)勿論それによって中国、ロシア、イランの方では、代替案を見付けたいと思う様になるでしょう。」
Zakaria asks Yellen if sanctions on Russia are actually working. Hear her response
マニトバ大学政治学部教授で地政学経済研究グループ所長のラディカ・デサイ氏の指摘では、ラガルド氏の講演の多くはインフレに関するものだった。「インフレに関するこの点は、多極化の問題の核心に関わります。結局のところ、多極化とは帝国主義の力が縮小することでないとしたら何なのでしょうか?」
ラガルド氏は、第一次冷戦終結後、西洋社会の「長期に亘る比較的低い安定したインフレ」は、西洋企業が低賃金の中国人労働者を搾取していたお陰であることをはっきりと認めている。
この発言は2022/10/10のEU大使年次会議での、EU外交政策責任者のジョゼップ・ボレルの、「我々の繁栄は中国とロシア———つまりエネルギーと市場に基付いていたのです」と云う発言を彷彿とさせる。彼は欧州の繁栄は、ロシアから来る安価なエネルギーと、低賃金の中国人労働者のお陰であることを認めたのだ。
デサイ氏は、米国の「覇権的リーダーシップ」の下で「世界は著しく有利な地政学的環境の恩恵を受けた」と云うラガルド氏の主張に反論し、「いいえ、恩恵を受けたのは第一世界です」と述べた。
ECONOMY‘World becoming more multipolar’, Western hegemony declining, admits European Central Bank
欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、2023/04/17のNYでの講演「断片化する世界に於ける中央銀行」に於て、米ドル覇権の衰退やウクライナ戦争、中国の台頭等により、「地政学の地殻変動が加速している」ことと、「世界は益々多極化する可能性が有る」との認識を述べた。
C. Peter McColough Series on International Economics With Christine Lagarde
氏はまた、「世界経済が(米国と中国がそれぞれ主導する)競合する2つのブロックに分断されている」と指摘しつつ、「欧州に於ける戦略的自治アジェンダ」について触れ、欧州連合が独自の道を追求する可能性について示唆した。
これは明らかに、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の路線のことを指していた。2023/04/05〜07、マクロン大統領は中国を訪問した際、米国の欧州支配を公然と批判し、欧州の指導者達は単にワシントンの「属国」や「追随者」であることは出来ないと主張した。
ラガルド氏は欧州で最も権力を持つ人物の一人だ。彼女はフランスの元財務大臣で、元IMF理事。NYで行った今回の講演も、米国政府と密接な関係を持つ強力なシンクタンクであり、本質的に国務省とウォール街の間の橋渡し役として機能する外交問題評議会(CFR)の為に行ったものだ。曾てロックフェラー系のオリガルヒ達はCRFの戦争と平和研究プロジェクトに資金を提供し、ソ連に対する第一次冷戦計画を支援した。
この講演の丁度前日の04/16、元FRBの理事会議長で現米財務長官ジャネット・イエレンはCNNのインタビューで、次の様に認めている:
「我々がドルの役割に関連した金融制裁を発動すれば、時間の経過と共にドルの覇権が損なわれると云うリスクが有ります。(略)勿論それによって中国、ロシア、イランの方では、代替案を見付けたいと思う様になるでしょう。」
Zakaria asks Yellen if sanctions on Russia are actually working. Hear her response
マニトバ大学政治学部教授で地政学経済研究グループ所長のラディカ・デサイ氏の指摘では、ラガルド氏の講演の多くはインフレに関するものだった。「インフレに関するこの点は、多極化の問題の核心に関わります。結局のところ、多極化とは帝国主義の力が縮小することでないとしたら何なのでしょうか?」
ラガルド氏は、第一次冷戦終結後、西洋社会の「長期に亘る比較的低い安定したインフレ」は、西洋企業が低賃金の中国人労働者を搾取していたお陰であることをはっきりと認めている。
この発言は2022/10/10のEU大使年次会議での、EU外交政策責任者のジョゼップ・ボレルの、「我々の繁栄は中国とロシア———つまりエネルギーと市場に基付いていたのです」と云う発言を彷彿とさせる。彼は欧州の繁栄は、ロシアから来る安価なエネルギーと、低賃金の中国人労働者のお陰であることを認めたのだ。
デサイ氏は、米国の「覇権的リーダーシップ」の下で「世界は著しく有利な地政学的環境の恩恵を受けた」と云うラガルド氏の主張に反論し、「いいえ、恩恵を受けたのは第一世界です」と述べた。
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