スーダン:東と西の間の新たな地政学的戦場?(抜粋と補足)
スーダンとその周辺の地政学的状況についてのマシュー・エレット氏の解説から、一部の要点を抜き出して補足してみた。地域全体が西洋の軛から脱し、統合と開発に向けて動いている。
Sudan: The new geopolitical battlefield between east and west?
2023年4月にスーダンで勃発した軍事衝突については判っていないことも多いが、スーダンが多極化に向けて進んでいたことを示す、従って一極覇権主義者の警戒を誘発する様々な兆候が有ったことは事実だ。近年のスーダンでは2019年と2021年に2度のクーデターが起こっているが、その結果権力を二分することになった2人将軍、ブルハーンとダガロが率いるスーダンは、多極化へ向けた展開を幾つも見せていた。
地域全体の状況
過去10年で、中国とロシアの戦略的パートナーシップは、グローバルサウスの国々の間で急速に支持を集めて来た。両国は主要なインフラ、水、エネルギーのプロジェクトに財政支援を行う一方、不安定化に直面している国々の軍事的ニーズを支援して来た。
エチオピアは2018年に隣国エリトリアとの20年に及ぶ紛争を終結させ、2022年11月には米国が支援するTPLF(ティグレ人民解放戦線)との間の内戦の可能性を潰すことにも成功した。
2022年3月には中国の外交努力によってイランとサウジが和解した。
2011年以来戦乱に苦しんでいるシリアにも、中国の一帯一路構想(BRI)の西アジアに於ける重要拠点として希望が生まれている。
また、イランとサウジが協定を結び、2015年以来戦争が続いて来たイエメンに平和が訪れるなら、2010年に提案されてから凍結されていた「アフリカの角の橋」プロジェクトが復活するかも知れないと指摘されている。

スーダン国内での動き
2021年4月、エジプト-スーダン鉄道建設の契約が調印された。これはエジプトのアスワンと、スーダンのワディ・ハルファ及びハルツームを結ぶ、長さ900kmの長距離鉄道だ。
2022年1月、中国はケニアの578kmのモンバサ-ナイロビ鉄道の延長計画に対する財政的・技術的支援を約束した。これはウガンダ、南スーダン、コンゴ民主共和国、更にはエチオピア(中国は2017年にアディスアベバ-ジブチ鉄道を完成させている)まで延長される予定で、エリトリアも候補に入っている。
2022年6月、エチオピア-スーダン鉄道の概要が発表された。これはエチオピアのアディスアベバとハルツーム及びスーダン港を結ぶ1,522kmの標準軌鉄道だ。

2021年、アフリカ開発銀行は、アディスアベバ〜ハルツーム〜ポート・スーダンを結ぶ鉄道建設の実現可能性調査に資金を提供した。
2022年、中国はポート・スーダン〜ダルフール〜チャドを結ぶ鉄道建設に関心を寄せた。

・2023/02/11、スーダンはロシアと合意し、紅海の港をロシア軍が完全に使えるようにした(この展開に対して米国からは警告が発せられた)。
・2023/04/25の報道では、スーダンはアフリカ諸国を含む他の18ヵ国と共に、BRICS+への加盟を申請した。
南スーダンの状況
1978年、ジョングレイ運河の建設が計画された。これは南スーダンの白ナイル川と青ナイル川を接続し、上白ナイル川からの水を逸らせる360kmの運河で、エジプトとスーダン北部の砂漠地帯に花を咲かせ、サヘルをアフリカの穀倉地帯に変えることが期待されていた。
が、1983年、西洋で教育を受けたジョン・ガラン・デ=マビオルが率いる分離主義の南部のスーダン人民解放軍(Sudanese Peoples’ Liberation Army/SPLA)が内戦を始め、プロジェクトは中止になった。彼が1981年に米国で書いた博士論文は、この運河が適切に管理されない場合に引き起こすであろう環境被害に焦点を当てていた。
1989〜2011年、オマル・アル=バシール前大統がこのプロジェクトを復活させようとしたが、絶え間無い不安定化によって失敗した。
だが2022/02/28、2011年にスーダンから分離した南スーダンのインフラ担当副大統領がジョングレイ運河計画の再開を呼び掛けた。彼は2021年にサッド湿地の洪水により38万人の民間人が避難したことに触れている。
南スーダンは2020年9月にエジプト政府と共同水道プロジェクトに合意していたが、この成果として、2021年12月に南スーダン暫定評議会に提案が提出された。
Sudan: The new geopolitical battlefield between east and west?
2023年4月にスーダンで勃発した軍事衝突については判っていないことも多いが、スーダンが多極化に向けて進んでいたことを示す、従って一極覇権主義者の警戒を誘発する様々な兆候が有ったことは事実だ。近年のスーダンでは2019年と2021年に2度のクーデターが起こっているが、その結果権力を二分することになった2人将軍、ブルハーンとダガロが率いるスーダンは、多極化へ向けた展開を幾つも見せていた。
地域全体の状況
過去10年で、中国とロシアの戦略的パートナーシップは、グローバルサウスの国々の間で急速に支持を集めて来た。両国は主要なインフラ、水、エネルギーのプロジェクトに財政支援を行う一方、不安定化に直面している国々の軍事的ニーズを支援して来た。
エチオピアは2018年に隣国エリトリアとの20年に及ぶ紛争を終結させ、2022年11月には米国が支援するTPLF(ティグレ人民解放戦線)との間の内戦の可能性を潰すことにも成功した。
2022年3月には中国の外交努力によってイランとサウジが和解した。
2011年以来戦乱に苦しんでいるシリアにも、中国の一帯一路構想(BRI)の西アジアに於ける重要拠点として希望が生まれている。
また、イランとサウジが協定を結び、2015年以来戦争が続いて来たイエメンに平和が訪れるなら、2010年に提案されてから凍結されていた「アフリカの角の橋」プロジェクトが復活するかも知れないと指摘されている。

スーダン国内での動き
2021年4月、エジプト-スーダン鉄道建設の契約が調印された。これはエジプトのアスワンと、スーダンのワディ・ハルファ及びハルツームを結ぶ、長さ900kmの長距離鉄道だ。
2022年1月、中国はケニアの578kmのモンバサ-ナイロビ鉄道の延長計画に対する財政的・技術的支援を約束した。これはウガンダ、南スーダン、コンゴ民主共和国、更にはエチオピア(中国は2017年にアディスアベバ-ジブチ鉄道を完成させている)まで延長される予定で、エリトリアも候補に入っている。
2022年6月、エチオピア-スーダン鉄道の概要が発表された。これはエチオピアのアディスアベバとハルツーム及びスーダン港を結ぶ1,522kmの標準軌鉄道だ。

2021年、アフリカ開発銀行は、アディスアベバ〜ハルツーム〜ポート・スーダンを結ぶ鉄道建設の実現可能性調査に資金を提供した。
2022年、中国はポート・スーダン〜ダルフール〜チャドを結ぶ鉄道建設に関心を寄せた。

・2023/02/11、スーダンはロシアと合意し、紅海の港をロシア軍が完全に使えるようにした(この展開に対して米国からは警告が発せられた)。
・2023/04/25の報道では、スーダンはアフリカ諸国を含む他の18ヵ国と共に、BRICS+への加盟を申請した。
南スーダンの状況
1978年、ジョングレイ運河の建設が計画された。これは南スーダンの白ナイル川と青ナイル川を接続し、上白ナイル川からの水を逸らせる360kmの運河で、エジプトとスーダン北部の砂漠地帯に花を咲かせ、サヘルをアフリカの穀倉地帯に変えることが期待されていた。
が、1983年、西洋で教育を受けたジョン・ガラン・デ=マビオルが率いる分離主義の南部のスーダン人民解放軍(Sudanese Peoples’ Liberation Army/SPLA)が内戦を始め、プロジェクトは中止になった。彼が1981年に米国で書いた博士論文は、この運河が適切に管理されない場合に引き起こすであろう環境被害に焦点を当てていた。
1989〜2011年、オマル・アル=バシール前大統がこのプロジェクトを復活させようとしたが、絶え間無い不安定化によって失敗した。
だが2022/02/28、2011年にスーダンから分離した南スーダンのインフラ担当副大統領がジョングレイ運河計画の再開を呼び掛けた。彼は2021年にサッド湿地の洪水により38万人の民間人が避難したことに触れている。
南スーダンは2020年9月にエジプト政府と共同水道プロジェクトに合意していたが、この成果として、2021年12月に南スーダン暫定評議会に提案が提出された。

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