ロシア、イラン、中国はペルシャ湾の安全保障の再起動を目指している(抄訳と補足)
西アジアの安全保障上の地殻変動について、フセイン ・アスカリー氏の記事。西洋の卑劣な分断統治策に対する、和解と協力による反撃が始まっている。
Russia, Iran, China aim to reboot Persian Gulf security
2023年3月のイランとサウジの衝撃的な和解は氷山の一角だ。ロシア、イラン、中国(RIC)の三大プレイヤーは、ペルシャ湾の集団的安全保障を、従来の様に西洋諸国の軍隊ではなく沿岸諸国によって確立することを目指している。これにより、この地域は大西洋主義者のパラダイムから根本的にシフトすることになる。
西洋諸国は20世紀初頭から、戦略的な水路ルートと石油とガス資源について、この地域で排他的な影響力を行使して来た。だがその状況はここ数年で劇的に変化しつつある。
分断統治の脅威
非常に多様な民族構成を持つ比較的大きな地域から成るロシア、イラン、中国は共に、西洋が操作する紛争や分離主義の脅威についての安全保障上の懸念を共有している:
・ロシア:チェチェンの分離主義者による反乱には勝利したが、多大な犠牲を払った。
・中国:西洋が支援するウイグル分離主義グループのテロ攻撃によって、西部地域が不安定化された。
・イラン;ペルシャ、アゼリ、クルド、ルール、アラブ、バロチの民族グループは、分離主義の要素を孕んでおり、中央政府を不安定化させる為に利用されている。
宗教や民族の分離主義者グループを支援することで、中国やソ連との国境に位置する殆どの国を分断するこの戦略は、1980年代に米国の元国家安全保障担当補佐官ズビグニュー・ブレジンスキーによって、「危機の孤(The Arc of Crisis)」として定式化されたものだ。
また分離主義の脅威に加えて、マラッカ、ホルムズ、バブ・アル・マンダブ等の重要な狭い海峡は、中国とペルシャ湾地域間のエネルギー供給と貿易を遮断する為に悪用出来る為、経済的安全保障上の懸念も存在する。RICはこの
脅威に対処する為、定期的に海軍演習を実施している。
米国と西洋諸国による支配
現在、西アジアには60以上の西洋の軍事基地または施設が存在し、約50,000人の米軍人が駐留している。ワシントンはこの地域に「安全と繁栄」を提供する為にこの巨大な軍事的プレゼンスが必要だと主張している訳だが、最近の歴史を見れば判る通り、彼等がそこに居るのは、主に西洋の覇権を維持する為に他ならない。

米国はまた何十年にも亘ってペルシャ湾で「海上安全保障」とやらを提供している。NATO主導の連合海事軍(Combined Maritime Forces/CMF)は1983年以来西アジアの水域に居続け、一方的に貨物を取り締まったり、イラクやソマリアの様な標的国に対して敵対行為を開始することさえ有る。CMF同盟は、西アジアの紅海、ペルシャ湾、アラビア海、アデン湾の4つの水域の安全に対して責任を負っていると主張している。

中国は正直なブローカー
中国の一帯一路構想(BRI)は西洋の執拗な中傷にも関わらずグローバルサウス全体で大成功を収めているが、この地域での成功も一朝一夕に成った訳ではない。2003年の米軍のイラク侵略以来、エジプト、サウジアラビア、イランは敵対して来たが、2016年1月、中国の習近平国家主席はこれらの国々との間で外交関係を強化して来た。

この訪問時の直前、サウジはシーア派の聖職者ニムル・バキル・アル=ニムルを見せしめ的に処刑していたので、サウジとイランとの関係は当時どん底だった。イランでは抗議行動が起こり、サウジのイラン大使館は略奪され、最終的に両国は外交関係を断絶した。
だが中国は3ヵ国全てと友好的な関係と緊密な経済関係を結ぶことで信頼出来るブローカーとなり、それぞれと個別に調整して包括的な戦略的協定を徐々に締結することを成功させた。
2022年4月、中国は国連憲章の精神に則った「グローバル安全保障構想(Global Security Initiative/GSI)」を立ち上げた。中国は最初はこれやその他の構想に関して西洋に融和的な態度を示していたが、やがて西アジアの危機解決に際して西洋を関与させることは、大西洋主義者の罠に嵌ることが明らかになって来ると、より強硬なトーンに切り替えた。
2022年9月の第2回中東安全保障フォーラムで中国の王毅外相は、「中東の人々は自らの運命の主人であり、地域の安全保障問題で主導権を握るべきです」と語った。
この立場は、12月にサウジで開催された中国・アラブ首脳会議の席上で、習近平主席によって再確認された。習主席は盛大なファンファーレで熱烈に歓迎されたが、これは7月にサウジを訪れたバイデン米大統領とは対照的な対応だった。
Xi Jinping and Joe Biden's visits to Saudi Arabia compared
原油需要の2/3以上を輸入に頼っている中国にとって、エネルギーが豊富なペルシャ湾に自由にアクセス出来ることは重大な安全保障上の利益を意味する。
ロシアの調停
対シリア・ハイブリッド戦争に於いてロシアはシリアを防衛する側に立ち、多くの湾岸諸国とは敵対する関係に有るが、にも関わらずペルシャ湾地域に於て、紛争の信頼出来る調停者としての地位を確立することに成功して来た。
2019年7月、ロシアは安保理のメンバー諸国に「ペルシャ湾岸地域の集団安全保障構想」を提示し、その後より詳細な提案がアラブ諸国、イラン、トルコ、安保理常任理事国、EU、アラブ連盟、BRICSの各代表に対して提示された。これはイランを含めることを記していた為、イランを孤立させることを望んでいた西洋とその同盟諸国からは完全な支持を得られなかった。
こうした後退にも関わらず、シリア紛争解決の為のアスタナ合意への参加等を通じて、この地域で積極的に外交を追求し続けて来た。
イランの構想
トランプ米政権は反イランの「アラブ版NATO」を作ろうとして無様に失敗した。同時期ロシアはルシャ湾での新しい安全保障体制を推進していた。
イランは近隣の湾岸諸国、特にサウジとは、共同の安全保障体制を構築する為に長年苦労して来た。1997に結ばれたイランとサウジとの安全保障・協力協定は本来は2005年まで有効である筈だったのだが、2003年のイラク侵略が地域全体に超えることの出来ない分断を齎した。イランとサウジはそれぞれ「シーア派の三日月」対「スンニ派の三角地帯」の構図に取り込まれた。外交関係は2016年に崩壊したが、イランは諦めずに正常化と共同安全保障構想を推進して来た。
2019年9月、イランのハッサン・ロウハニ大統領は、国連総会でホルムズ和平事努力(Hormuz Peace Endeavor/HOPE)を提案した。これは従来の湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council/GCC)にイランとイラクを統合し、安全保障、航行の自由、経済協力の共通枠組みを作ることを目的としていた。だが米国がイランの孤立を望んでいる為、この構想も実行不能だった。
2020/01/03にイランのイスラム革命防衛隊のクッズ部隊司令官カセム・ソレイマニが、イラクのバグダッドで米国によって暗殺されたのは、この文脈に於てだった。その時彼はイランの最高指導者アリ・ハメネイからイラクの首相アディル・アブドゥル-マフディに宛てたメッセージをを運ぶミッションの途中だった。当時、イラクの仲介でイランとサウジは合意交渉を行っていたのだ。西アジアの和平と安定に向けた努力を、米国はまたしても妨害したのだ。
だが現イラン大統領エブラヒム・ライシはHOPEを支持し続けており、2021年8月の就任直後、大使レヴェルでUAEとの外交関係回復に成功した。これは2016年の外交崩壊以来のブレイクスルーだった。
サウジの態度変更の理由
サウジとUAEはそれまでの外交方針を変更し、米国と距離を置き始めたが、これはいきなり始まった訳ではない。
湾岸諸国は、2011年の「アラブの春」(米国の一連のレジームチェンジ工作による地域の不安定化)が、地域の分断を生み出し、重要な国家資源を枯渇させるだけであることに気が付き始めた。カタール、トルコ、イラン、シリア、UAE、エジプト等、2011年以前の地域のインフルエンサー達は互いに敵対させられただけで、結局何のメリットも無かった。
サウジとUAEは米国に協力したが、ワシントンは両国の政治的・経済的利益に関心を払わなかった。シリア危機はロシアの介入と調停のお陰で次第に沈静化し始めたが、サウジとUAEはイエメンで費用の掛かる泥沼に嵌った儘、8年目を迎えている。
2022年2月にウクライナ戦争が始まると、ワシントンの経済的利益は明らかに湾岸諸国と乖離して行った。OPEC+の加盟国は西洋の意向に逆らい、高い石油価格を維持する為に生産を抑制することを決定した。
西アジアへのエネルギー依存度を下げるべく国内のシェール産業を発展させて来た米国は、湾岸諸国とのエネルギー相乗効果を殆ど持っていない。後者の利害は、石油やガスの分野で、寧ろロシアや中国と交わる様になって来ている。
アナリストのモハマド・スウェイダンはこう書いている:「今日、米国は最早サウジアラビアのエネルギー・パートナーではなく、寧ろ競争相手だ。代わりに、北京とモスクワはリヤドにとって不可欠なパートナーとして台頭して来た。」
西洋抜きの西アジア
ロシア、イラン、中国の様々な外交・安全保障構想は、ウクライナ戦争によって国際関係が根本的に形を変え始め、西洋の一極権力群がその脆弱性を露呈させた時に到頭実を結び始めた。
米国はこの地域での長年の同盟諸国の信頼を失ってその影響力は急速に弱まり、世界の準備通貨であるドルは現在攻撃を受けている。
ユーラシアの新勢力がペルシャ湾の安全保障の未来をどの様に作り上げるかはまだ判らないが、幾つかのことは明らかだ。地域の紛争は新たな調停者を得て沈静化しつつある。彼等の焦点は経済と開発だが、その為には全当事者の和解が不可欠だ。そしてこれらの課題には、従来の天文学的な軍事費や西洋の軍隊/基地は必要無い。
湾岸諸国が新たな友好関係を試し相互の信頼を築き上げて行く中で、互いの理解のギャップを埋め、事件が発生した場合の解決を図ることは、ロシアや中国の様な裏表が無く公平な調停者に委ねられるだろう。それらは戦場ではなくテーブルで行われるだろう。それにらは相互の富の創造と発展を促進する貿易協定が伴い、ペルシャ湾の安全保障の曾ての「保証人」を、完全に時代遅れにするだろう。
Russia, Iran, China aim to reboot Persian Gulf security
2023年3月のイランとサウジの衝撃的な和解は氷山の一角だ。ロシア、イラン、中国(RIC)の三大プレイヤーは、ペルシャ湾の集団的安全保障を、従来の様に西洋諸国の軍隊ではなく沿岸諸国によって確立することを目指している。これにより、この地域は大西洋主義者のパラダイムから根本的にシフトすることになる。
西洋諸国は20世紀初頭から、戦略的な水路ルートと石油とガス資源について、この地域で排他的な影響力を行使して来た。だがその状況はここ数年で劇的に変化しつつある。
分断統治の脅威
非常に多様な民族構成を持つ比較的大きな地域から成るロシア、イラン、中国は共に、西洋が操作する紛争や分離主義の脅威についての安全保障上の懸念を共有している:
・ロシア:チェチェンの分離主義者による反乱には勝利したが、多大な犠牲を払った。
・中国:西洋が支援するウイグル分離主義グループのテロ攻撃によって、西部地域が不安定化された。
・イラン;ペルシャ、アゼリ、クルド、ルール、アラブ、バロチの民族グループは、分離主義の要素を孕んでおり、中央政府を不安定化させる為に利用されている。
宗教や民族の分離主義者グループを支援することで、中国やソ連との国境に位置する殆どの国を分断するこの戦略は、1980年代に米国の元国家安全保障担当補佐官ズビグニュー・ブレジンスキーによって、「危機の孤(The Arc of Crisis)」として定式化されたものだ。
また分離主義の脅威に加えて、マラッカ、ホルムズ、バブ・アル・マンダブ等の重要な狭い海峡は、中国とペルシャ湾地域間のエネルギー供給と貿易を遮断する為に悪用出来る為、経済的安全保障上の懸念も存在する。RICはこの
脅威に対処する為、定期的に海軍演習を実施している。
米国と西洋諸国による支配
現在、西アジアには60以上の西洋の軍事基地または施設が存在し、約50,000人の米軍人が駐留している。ワシントンはこの地域に「安全と繁栄」を提供する為にこの巨大な軍事的プレゼンスが必要だと主張している訳だが、最近の歴史を見れば判る通り、彼等がそこに居るのは、主に西洋の覇権を維持する為に他ならない。

米国はまた何十年にも亘ってペルシャ湾で「海上安全保障」とやらを提供している。NATO主導の連合海事軍(Combined Maritime Forces/CMF)は1983年以来西アジアの水域に居続け、一方的に貨物を取り締まったり、イラクやソマリアの様な標的国に対して敵対行為を開始することさえ有る。CMF同盟は、西アジアの紅海、ペルシャ湾、アラビア海、アデン湾の4つの水域の安全に対して責任を負っていると主張している。

中国は正直なブローカー
中国の一帯一路構想(BRI)は西洋の執拗な中傷にも関わらずグローバルサウス全体で大成功を収めているが、この地域での成功も一朝一夕に成った訳ではない。2003年の米軍のイラク侵略以来、エジプト、サウジアラビア、イランは敵対して来たが、2016年1月、中国の習近平国家主席はこれらの国々との間で外交関係を強化して来た。

この訪問時の直前、サウジはシーア派の聖職者ニムル・バキル・アル=ニムルを見せしめ的に処刑していたので、サウジとイランとの関係は当時どん底だった。イランでは抗議行動が起こり、サウジのイラン大使館は略奪され、最終的に両国は外交関係を断絶した。
だが中国は3ヵ国全てと友好的な関係と緊密な経済関係を結ぶことで信頼出来るブローカーとなり、それぞれと個別に調整して包括的な戦略的協定を徐々に締結することを成功させた。
2022年4月、中国は国連憲章の精神に則った「グローバル安全保障構想(Global Security Initiative/GSI)」を立ち上げた。中国は最初はこれやその他の構想に関して西洋に融和的な態度を示していたが、やがて西アジアの危機解決に際して西洋を関与させることは、大西洋主義者の罠に嵌ることが明らかになって来ると、より強硬なトーンに切り替えた。
2022年9月の第2回中東安全保障フォーラムで中国の王毅外相は、「中東の人々は自らの運命の主人であり、地域の安全保障問題で主導権を握るべきです」と語った。
この立場は、12月にサウジで開催された中国・アラブ首脳会議の席上で、習近平主席によって再確認された。習主席は盛大なファンファーレで熱烈に歓迎されたが、これは7月にサウジを訪れたバイデン米大統領とは対照的な対応だった。
Xi Jinping and Joe Biden's visits to Saudi Arabia compared
原油需要の2/3以上を輸入に頼っている中国にとって、エネルギーが豊富なペルシャ湾に自由にアクセス出来ることは重大な安全保障上の利益を意味する。
ロシアの調停
対シリア・ハイブリッド戦争に於いてロシアはシリアを防衛する側に立ち、多くの湾岸諸国とは敵対する関係に有るが、にも関わらずペルシャ湾地域に於て、紛争の信頼出来る調停者としての地位を確立することに成功して来た。
2019年7月、ロシアは安保理のメンバー諸国に「ペルシャ湾岸地域の集団安全保障構想」を提示し、その後より詳細な提案がアラブ諸国、イラン、トルコ、安保理常任理事国、EU、アラブ連盟、BRICSの各代表に対して提示された。これはイランを含めることを記していた為、イランを孤立させることを望んでいた西洋とその同盟諸国からは完全な支持を得られなかった。
こうした後退にも関わらず、シリア紛争解決の為のアスタナ合意への参加等を通じて、この地域で積極的に外交を追求し続けて来た。
イランの構想
トランプ米政権は反イランの「アラブ版NATO」を作ろうとして無様に失敗した。同時期ロシアはルシャ湾での新しい安全保障体制を推進していた。
イランは近隣の湾岸諸国、特にサウジとは、共同の安全保障体制を構築する為に長年苦労して来た。1997に結ばれたイランとサウジとの安全保障・協力協定は本来は2005年まで有効である筈だったのだが、2003年のイラク侵略が地域全体に超えることの出来ない分断を齎した。イランとサウジはそれぞれ「シーア派の三日月」対「スンニ派の三角地帯」の構図に取り込まれた。外交関係は2016年に崩壊したが、イランは諦めずに正常化と共同安全保障構想を推進して来た。
2019年9月、イランのハッサン・ロウハニ大統領は、国連総会でホルムズ和平事努力(Hormuz Peace Endeavor/HOPE)を提案した。これは従来の湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council/GCC)にイランとイラクを統合し、安全保障、航行の自由、経済協力の共通枠組みを作ることを目的としていた。だが米国がイランの孤立を望んでいる為、この構想も実行不能だった。
2020/01/03にイランのイスラム革命防衛隊のクッズ部隊司令官カセム・ソレイマニが、イラクのバグダッドで米国によって暗殺されたのは、この文脈に於てだった。その時彼はイランの最高指導者アリ・ハメネイからイラクの首相アディル・アブドゥル-マフディに宛てたメッセージをを運ぶミッションの途中だった。当時、イラクの仲介でイランとサウジは合意交渉を行っていたのだ。西アジアの和平と安定に向けた努力を、米国はまたしても妨害したのだ。
だが現イラン大統領エブラヒム・ライシはHOPEを支持し続けており、2021年8月の就任直後、大使レヴェルでUAEとの外交関係回復に成功した。これは2016年の外交崩壊以来のブレイクスルーだった。
サウジの態度変更の理由
サウジとUAEはそれまでの外交方針を変更し、米国と距離を置き始めたが、これはいきなり始まった訳ではない。
湾岸諸国は、2011年の「アラブの春」(米国の一連のレジームチェンジ工作による地域の不安定化)が、地域の分断を生み出し、重要な国家資源を枯渇させるだけであることに気が付き始めた。カタール、トルコ、イラン、シリア、UAE、エジプト等、2011年以前の地域のインフルエンサー達は互いに敵対させられただけで、結局何のメリットも無かった。
サウジとUAEは米国に協力したが、ワシントンは両国の政治的・経済的利益に関心を払わなかった。シリア危機はロシアの介入と調停のお陰で次第に沈静化し始めたが、サウジとUAEはイエメンで費用の掛かる泥沼に嵌った儘、8年目を迎えている。
2022年2月にウクライナ戦争が始まると、ワシントンの経済的利益は明らかに湾岸諸国と乖離して行った。OPEC+の加盟国は西洋の意向に逆らい、高い石油価格を維持する為に生産を抑制することを決定した。
西アジアへのエネルギー依存度を下げるべく国内のシェール産業を発展させて来た米国は、湾岸諸国とのエネルギー相乗効果を殆ど持っていない。後者の利害は、石油やガスの分野で、寧ろロシアや中国と交わる様になって来ている。
アナリストのモハマド・スウェイダンはこう書いている:「今日、米国は最早サウジアラビアのエネルギー・パートナーではなく、寧ろ競争相手だ。代わりに、北京とモスクワはリヤドにとって不可欠なパートナーとして台頭して来た。」
西洋抜きの西アジア
ロシア、イラン、中国の様々な外交・安全保障構想は、ウクライナ戦争によって国際関係が根本的に形を変え始め、西洋の一極権力群がその脆弱性を露呈させた時に到頭実を結び始めた。
米国はこの地域での長年の同盟諸国の信頼を失ってその影響力は急速に弱まり、世界の準備通貨であるドルは現在攻撃を受けている。
ユーラシアの新勢力がペルシャ湾の安全保障の未来をどの様に作り上げるかはまだ判らないが、幾つかのことは明らかだ。地域の紛争は新たな調停者を得て沈静化しつつある。彼等の焦点は経済と開発だが、その為には全当事者の和解が不可欠だ。そしてこれらの課題には、従来の天文学的な軍事費や西洋の軍隊/基地は必要無い。
湾岸諸国が新たな友好関係を試し相互の信頼を築き上げて行く中で、互いの理解のギャップを埋め、事件が発生した場合の解決を図ることは、ロシアや中国の様な裏表が無く公平な調停者に委ねられるだろう。それらは戦場ではなくテーブルで行われるだろう。それにらは相互の富の創造と発展を促進する貿易協定が伴い、ペルシャ湾の安全保障の曾ての「保証人」を、完全に時代遅れにするだろう。
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