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大韓民国はウクライナに不吉な軍事支援を送るだろうか?(要点と補足)

キエフに対するROKの軍事支援の可能性について、アンドリュー・コリブコ氏の分析。この展開は日本にとっても非常に重要だと思うので、多少補足しつつ纏めてみた。
Will The Republic Of Korea Dispatch Lethal Aid To Ukraine?



 2023/04/18、大韓民国(ROK)の尹淑烈大統領はロイターのインタビューで、所謂ロシアの戦争犯罪によって人道状況がより深刻な危機に陥った場合に備え、同国はウクライナへの殺傷兵器の輸送を検討していると語った。「民間人に対する大規模な攻撃、虐殺、重大な戦争法違反等、国際社会が容認出来ない状況が発生した場合、人道的または財政的支援のみを主張することは難しいかも知れません。」

 これに対して、ロシアのペシュコフ報道官は、「武器を供給することは、この紛争にはっきりと関与することを意味します」と警告した。

 また、元ロシア大統領で国家安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長は、「この国の住民は、彼等の最も近い隣国であり我々のパートナーであるDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)がロシアの武器を所有している新事例を見せられた時、何と言うだろうか?」と警告した。つまり立場を置き換えることでロシアから見たこの展開を説明すると共に、ROKがキエフを武装させれば、ロシアがDPRKを武装させる可能性を仄めかした訳だ。

 04/20になるとROK大統領府の匿名の高官の言葉が報じられた:「ウクライナへの軍事支援に関する決定は、ロシアの行動に掛かっています。」「我々が自発的にこの様な行動を取らないのは、ROKとロシアの関係を安定的に維持・管理すると同時に、ウクライナ人の自由を守る為に国際社会の仲間入りを積極的に果たすと云う任務をバランス良く遂行したいからです。」

 これは尹大統領が04/24〜29に米国を訪問する予定だと云う文脈の中で理解する必要が有る。バイデン米大統領は恐らくそこでキエフへの軍事支援への参加を要求する筈だ。

 これに先立ち02/13に、NATOのストルテンベルグ事務総長は、NATOはクライナでロシアと所謂「兵站競争(消耗戦)」を行っていることを宣言し、助けが無ければなければ勝利するのは難しいだろうと白状している。



 ここで少し状況をお浚いしておくと、軍事的にはNATOがキエフを幾ら武装させようと、ロシア軍に勝てる見込みは先ず無い。キエフ軍の勝利の可能性を信じているのは、大本営報道を疑うことを知らない人達だけだろう。ロシアは最新鋭の兵器と訓練された人員を十分に持っているが、キエフ軍は2014年以降NATOによって大幅にテコ入れされたとは云え、兵器も人員も、そして予算も、ロシア軍には遠く及ばない。西洋のマスコミはロシア軍が今にも負けそうなことを度々言っているが、これは戦場では愈々行き詰まって来ているので、情報戦争でその分をカヴァーしようとしているだけだ。他方、ロシア軍は被害を最小限にする為に最初から長期戦の構えで、別に焦ってはいない(民間人の被害は心配だろうが)。ウクライナ全土を焦土にしたいなら最初からそうしている。ロシア軍にはその能力は有る(クリミアのケルチ橋爆破事件の後のミサイル攻撃に際し、キエフ軍が手も足も出なかったことを思い出そう。あの程度のことは最初からやろうと思えば何時でも出来ただろうが、やっていない。NATOの侵略戦争と比べてみれば、ロシア軍が如何に抑制的に振舞っているかは一目瞭然だ)。ロシア軍が力押しでキエフを一気に壊滅させないのは、ロシア軍が弱いからではなく、ロシア軍が強いからだ。

 戦争の終結をロシアに要求する人は完全にピントがずれている。ロシアは一貫して対立や緊張を望んで来なかった。NATOの東方拡大問題に関してはプーチンは2000年以降、ドンバス戦争に関しては2014年以降、一貫して外交交渉による平和的な解決を望んで来た。核軍縮に向けた努力もしたし警告もした。それら全てを、米国とNATO諸国は黙殺するか裏切するかした。ロシアのNATO加盟の申し出をクリントンは相手にしなかったし、ミンスク合意に至ってはポロシェンコ、メルケル、オランド、ゼレンスキーが揃いも揃って、キエフを武装させる時間稼ぎでしかなかったことを公然と認めている。そしてロシアに対して狂った様に軍事的挑発を続けて来たが、ロシアは辛抱強く対話の努力を続けた。ロシアがようやっと重い腰を上げてドンバスへの軍事介入を開始(2022/02/24)したのだって、キエフ軍がドンバスへの砲撃を再び激化させ(02/16)、ゼレンスキーが核保有の可能性をちらつかせ(02/19)た後になってからに過ぎない。ロシアは特別軍事作戦の開始直前まで外交的解決に向けた努力をしたが、NATOは全く相手にしなかった。ドンバスのジェノサイドを止めさせ、キューバ危機以上の核衝突危機の到来を防ぐには、軍事介入以外の方法は残されていなかった。第三次世界大戦を防ぎロシアの独立と主権を守る為には、実力行使によってドンバス戦争を終わらせ、キエフのナチを排除するしか無かったのだ。

 ロシア軍はNATOの様に民間人を狙った無差別爆撃等で時間を無駄にすること無く、精確に軍事目標のみを狙って攻撃したので、勝負は僅か1ヶ月で決まった。3月の時点でキエフ軍は略壊滅した(ロシア国防省ウクライナ大統領府の双方がこの事実を認めている)ので、キエフにはロシアとの交渉に応じる以外に選択肢は残されていなかった。だが、イスラエルの仲介で進められていたロシアとキエフとの停戦交渉を、NATOはまたしても妨害した。ロシアは停戦に応じるつもりで、その為の譲歩もする気だった。だがNATOは軍事支援を拡大させて、停戦を許さなかった。つまり2022年4月以降の戦闘は、実質的には既にキエフ軍対ロシア軍ではなく、NATO軍対ロシア軍なのだ。ロシア側にしてみればこれは完全に自衛の為の戦争なので、被害が出たからもう止めろと言われてハイそうですかと止められる訳が無い(それについてTVの前でNATOのプロパガンダを鵜呑みにしている西洋諸国の人々がどう思うかはこの際どうでも良い。現実の戦場で命懸けで同胞を守ろうと血を流しているのはロシア人であって、彼等がどう思っているかこそがこの状況では意味を持つ)。戦争を続けさせているのはロシアではない、NATOだ。ウクライナ人はNATOがロシアを侵略する為の捨て駒にされている。



 元の話題に戻って、NATOは早急に軍事支援を必要としている訳だが、米軍が朝鮮半島征服の為に作った傀儡国家、ROKには、何時でもDPRKに対する侵略を再開出来るよう、膨大な軍事備蓄が用意されているので、ワシントンがソウルを当てにするのは理に適っている。DPRKは他国を侵略したことなど一度も無いが、ROKは朝鮮半島を征服しようとして朝鮮戦争を開始した件を除いたとしても、ヴェトナム、アフガニスタン、イラクと、既に米軍による3つの大規模な侵略戦争に加担して多数の死傷者も出している(ROKと同じく米帝の属国である日本はこれらの戦争に直接軍事支援を送った訳ではないが、世界最悪の侵略軍である米軍に侵略の拠点と資金援助を提供し続けている)。ソウルは今回もワシントンの意向に唯々諾々と従うのだろうか?

 最近リークされたペンタゴンの文書は、ROKの当局者がこの件について意見が分かれていることを示している。だが、何かしない訳には行かない。ROKには次の2つの選択肢が提示されている。
 1)ロシアがDPRKを武装させるリスクを冒して、米国の意向に従ってウクライナを直接武装させる。
 2)ワシントンからの支持を失うリスクを冒して、キエフへの軍事援助を拒否する。

 ROKの国益に沿った選択肢は2)の方だ。「国際社会の仲間入り」とやらを果たす為に、軍事的緊張を自国にまで飛び火させるリスクを負う必要が有るだろうか? だが尹大統領は米国の強い圧力の下で「妥協」に到達しようとする可能性が有る。

 ポーランドのモラヴィエツキ首相は2023/04/12、バイデンがソウルを説得して、ROKがポーランド経由で砲弾をキエフに輸送すると云う案を提案している。

 実は2022/08/27のロイターの報道では、この時既にROKの2社はポーランドとROK史上最大の武器取引を成立させ、戦車と榴弾砲の輸出について57億6,000万ドルの契約を交わしている。ワンクッション置くことでキエフを武装させる動きに、ソウルは既に加担しているのだ。

 この件は2023/03/08のロイターの報道でも確認されている。ソウルは昨年、ポーランドがROKの部品で作られたクラブ榴弾砲をキエフに提供する輸出許可を承認した。つまり間接的にキエフに兵器部品を提供することを公式に黙認したのだ。

 現状では戦略的に重要なのは榴弾砲よりもROKに備蓄された膨大な砲弾の輸出だが、前例が既に有るとしても、これをポーランド経由でキエフに輸出するには、関連するライセンスを事前に承認する必要が有る。これについてはバイデンとの会談で議論される可能性が高い。その場合、ロシアの反発は必至だ。

 繰り返すが幾らキエフにドーピングを続けたところで、軍事的にはロシア軍には勝利出来ない。消耗戦が長引いて犠牲が増えるだけで、無論一般のウクライナ人には全く何の益も無い。ワシントンはソウルにこちらの選択肢を取るよう要求するだろう。
 
 だがソウルがこの計画を拒否すれば、無益な争いはそれだけ長続きしなくなる。そしてそれは時間の経過と共に、停戦に向けた条件を作り出す可能性が有る。この意味で、尹大統領の決断はウクライナでのゲームチェンジャーに成り得る。そしてこの決定が為された場合、それはROK自身の戦略的自立性を印象付けることになるだろう。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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