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スーダンの「ディープステート」戦争は、長引けば広範囲に地政学的な影響を与える可能性が有る(要点)

スーダンの紛争を巡る地政学的状況についてのアンドリュー・コリブコ氏の分析の要点。
Sudan’s “Deep State” War Could Have Far-Reaching Geostrategic Consequences If It Continues



 
 2023年4月中旬、スーダン国軍(Sudanese Armed Forces/SAF)と迅速支援部隊(Rapid Support Forces/RSF)との間で武力衝突が勃発した。この紛争は現時点では軍事派閥同士の間のものなので、南スーダンの独立を齎した内戦の様なものではなく、スーダン内部での「ディープステート」戦争だと見做すことが出来る。
 
 2019年のスーダン軍のクーデターによってオマール・アル=バシール大統領が追放されて以来、民主主義への移行は遅れており、この「ディープステート」戦争は避けられなかった。SAFはアブドゥル・ファッタハ・アル=ブルハーン最高司令官が、RSFはモハメド・ハムダン・ダガロ将軍(通称ヘメディ Hemedti)がそれぞれ率いており、両者はそれぞれ暫定主権評議会の大統領と副議長を務めている。

 そもそもの予定では、2023/04/11に民政への移行が発表されることになっていたが、そうはならなかった。恐らく両当事者が「民主主義を守る」と云う名目で他陣営を「民主主義の敵」として排除しようとしたのだ。

 現状では不確実な情報が多いので、「戦争の霧」が晴れるまでは、何が起こっているのかを見極めるのかは困難だが、取り敢えず押さえておくべきなのは、軍内にふたつの競合する権力の中心地が出現出来たことは、軍が何年にも亘って深く分裂して来たことを示している点だ。

 戦争がどれだけ続くかにもよるが、長引けば周辺地域に分離勢力が出現して、スーダンの領土一体性を脅かす可能性が有る。そうなればスーダンはユーゴスラヴィアの様に分割されることになるかも知れない。アル=バシール前大統領は2017年にロシアに対して、「米国はスーダンを5つの国に分割したがっている」と警告し、支援を要請した。



 このシナリオはまだ現実のものとはなってはいないが、派閥戦争が長引けば、外国が介入する可能性も高くなる。具体的には、エジプトがブルハーンを支援し、UAE(アラブ首長国連邦)がヘメディを支援する可能性が有る。両国の大統領はカイロで会談したばかりだが、紛争が長引けば両者はそれぞれのパートナーを支援し、互いに対して優位に立とうとするだろう。

 既にRSFは04/15に、スーダンでエジプト兵を捕えたと発表している。エジプトの方ではこれは合同訓練の為だったと主張したが、そもそもRSFが発表するまで、エジプト兵がスーダン居たことは誰も知らなかった。そしてSNSでは、エジプトのAFミグ29戦闘機がマラウィ空軍基地でRSFによって押収された画像が出回っている。

 スーダン、エジプト、そしてエチオピアは、グランド・エチオピア・ルネッサンス・ダム(GERD)を巡って何年も論争を繰り広げて来ている。エジプトは、ダムを満たせば下流の水が干上がると主張しているが、それを防ぐ為にエチオピアに対して「先制攻撃」を計画しているのではないかと云う懸念が何年も前から有る。現在の展開は、その話の信憑性を高めている。
 
 またスーダンとエチオピアはアル=ファシャガ地域を巡って論争を繰り広げて来ているが、2022年6月には軍事衝突に発展している。ハルツーム(スーダンの首都)が余りにも分断されていて脆弱であると感じた場合、エチオピアがその空白を埋める為に軍事介入を行う可能性も考えられる。

 米国、エジプト、UAE、エチオピアに続く第5の外国当事者として、ロシアが挙げられる。2017年にアル=バシール前大統領がモスクワを訪問して以来、モスクワは両方の軍事派閥と非常に親密な関係を築いている。ロシアは近々スーダン港に海軍基地を開設する予定であり、両国は鉱業と安全保障で協力していると報道されている。ロシアは戦略的結び付きが維持出来れば、どちらの派閥が勝とうと気にしないが、ロシアはスーダンを通れば、隣の中央アフリカ共和国(CAR)へのアクセスがより容易になる点が重要だ。CARの治安回復に関して、モスクワは軍事会社ワグナーの助けを借りて支援している。

 ロシアはアフリカ諸国では非常に人気が高いが、その理由は単純で、ロシアはアフリカ諸国に民主的安全保障を提供し、彼等が新植民地主義と構造的人種差別の鎖から自国を解放する為の戦いを支援しているからだ。ロシアはアフリカ諸国が主権を強化するのを助け、多極的世界観を広めることで支持を得ている。だがスーダンの戦争がCARまで波及すれば、それはアフリカ大陸に於けるロシアの民主的安全保障政策の最初の失敗事例になるかも知れない。

 これらの状況尾を踏まえると、現在の軍事衝突が長引いて内戦にまで発展した場合、非常に広範囲な影響を齎す可能性が有る。アフリカ大陸は新冷戦の新たな重要な戦場となり、制御不能なプロセスによって大陸全体が不安定化するかも知れない。
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川流桃桜

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一介の反帝国主義者。
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