エチオピアの軍再編は、別の悲劇を先制的に回避することが目的だ（要点と補足）

エチオピアの軍再編に関するアンドリュー・コリブコ氏の解説の要点と補足。
Ethiopia’s Military Reorganization Is Aimed At Preemptively Averting Another Tragedy



　TPLF（ティグレ人民解放戦線）との内戦（または代理戦争）が終結し、2023/04/06、エチオピア政府は、全地域の特殊部隊を国軍または連邦警察または地域警察の何れか統合する計画を表した。これは軍縮ではなく再編であり、各州はそれぞれ独自の治安部隊を維持することが引き続き許可される（エチオピアは或る程度の自治権を持つ10の州から成り立っている）。

　この件についてはフェイクニュースが出回っており、またアビィ・アハメド首相が憲法上の権利を侵食する計画を立てているとの憶測も流れている。これらを放置すれば、また内戦の危機が訪れるかも知れない。今回の軍事作戦はその様な展開を予防する為の措置だ。

　今回の戦争では、地域の特殊部隊はTPLFを阻止する上で重要な役割を果たしたが、一部が利己的なデマゴーグによって悪用され、反政府側に回って別の紛争を引き起こす可能性も有った。

　エチオピアの最大の課題は山積する地域間紛争だ。今回の戦争の余波で、アムハラとティグライ間の紛争のリスクが高まっている。アムハラの西部と南部は、TPLFが政権を握っていた時に、分割統治策に利用する為にティグライに併合されたが、アムハラの人々の多くは、この地域は歴史的に自分達にものだと思っている。

　歴史的正義を実現する為にはこれらの地域をアムハラに返還しなければならないが、一方的にこれを実行してしまうと、アビィ首相がアムハラ民族主義者と同盟を結んでいるのではないかと云う懸念を深めるリスクを冒すことになる。

　同様に地域間紛争を抱えるオロモ州の一部の人々がこうした不安を抱いているが、ひとつの紛争を解決する為に領土再編を強行すれば、別の紛争を引き起こしかねない。

　地域間紛争を解決する為に何かをしなければならないのは確かだが、それぞれの立場は相反している為、全当事者を満足させることは不可能だ。

　今回の軍の再編も、中央当局がアムハラ地域問題を一方的に解決する為の動きなのでは、との推測が出回っているが、軍の再編はアムハラだけではなく全ての地域で行われていることに注意する必要が有る。詳細は明らかにされていないが、今回の措置は、地域間紛争に対する取り組みを改善し、自国の安定性を高める為のものだ。

　この政策の成功は、各地域の社会がアビィ首相に寄せる信頼に懸かっている。首相は可能な限り公正な方法で問題を解決する為に誠実に最善を尽くしている。

　エチオピアの社会政治的状況は非常にデリケートである為、特に兵器化された抗議行動（カラー革命）には注意する必要が有る。エチオピアはコスモポリタンな文明国家だが、それ故にソーシャルメディアを通じて人々を分裂させる物語が社会全体に急速に広まる可能性も有るのだ。先ずは国の安全と安定が確保されていなければ、どんな改革も困難になる。