パリとヴォルノヴァハ:NATOテロリズムの野蛮な顔(要点と補足)
国際弁護士クリストファー・ブラック氏の著書より、シャルリ・エブド襲撃事件の地政学的な意味について書かれた部分の要点を纏めてみた(細かい間違いは修正した)。
2015/01/07、イスラム教徒に対する差別的な「風刺」で知られていたフランスの週間新聞、シャルリ・エブドが武装グループに襲撃され、12人が死亡した。普段は米軍やNATO軍が肌の黒いイスラム教徒を何十万、何百万と死に追いやっても全く気にしない西欧の政治指導者達が何十人もパリに集まってこれ見よがしに横断幕を掲げて行進し、何百万人もの市民がこの「表現の自由」の侵害に対して抗議の声を上げた。このテロに対しては後にアル=カイダが犯行声明を出した。
襲撃事件から数日後、2015/01/13、ウクライナのドネツク南西に位置するヴォルノヴァハ市の検問所で、民間のバスが爆発して12人が死亡した。だが西洋メディアは連日シャルリの事件を一面で大騒ぎするばかりで、こちらの事件の方には全く反応はなかった。
バスの運転手の証言では、バスの下で地雷が爆発したことが原因だった。キエフ政府は例によって地元の分離主義の武装グループの犯行だと断定し、爆発はグラッド・ミサイルによるものだと主張した。だがOSCE(欧州安全保障協力機構)が調査を行ったところ、爆発と同時に検問所に撃ち込まれたミサイルは、反ファシスト民兵が居た東ではなく、北から発射されたものだと判明した。
パリでの殺人は世界中を震撼させたが、ウクライナでの殺人に対してはキエフ政府の国家テロを非難する声は上がらず、真相究明を求める大規模デモも起こらなかった。西洋諸国が支援するキエフ政府が、ドンバスの民間人、病院、学校、発電所や各種インフラに文字通り毎日砲撃を加えている現実は、西洋では全く無視された。
ここで引っ掛かるのが、そもそもイスラム過激派は西洋の産物だと云うことだ。西洋の諜報部は自分達の次の標的が「道徳的に」劣った存在であることを示す為に、これら過激派を利用して来た歴史が有る。NATO軍や米軍に攻撃される標的は、予め必ず悪者としてプロパガンダ攻撃を受ける。手口は毎回同じで、騙される人は何度でも騙される。そうすることで「邪悪な敵」に対する攻撃は正当化されるか、黙認される。少なくとも市民からの抵抗は無力化される。
シャルリの事件ではイスラム教徒がテロリストとして描かれた。ヴォルノヴァハの事件ではウクライナの分離主義者達がテロリストとして描かれた。構図は同じで、攻撃を正当化する為に、「標的を攻撃しなければならない道徳的な理由が存在する」と云うメッセージが人々の頭に叩き込まれるのだ。
パリでのテロ事件を契機に、テロリストたるイスラム過激派の掃討を名目とした「対テロ作戦」が声高に叫ばれ始めたが、最も過激なイスラム過激派であるISISIが、主にシリアとイラクに展開していたことを考えると、ここから地政学的には非常に興味深い点が浮かび上がって来る。「対テロ作戦」を名目とした西洋諸国の軍事展開は、実質的には無法なシリア侵略に他ならない。そうなるとシリアはロシアの重要な同盟国なので、ロシアはシリアを守る為にアクションを起こさなければならなくなる。それと同時に、ロシアはNATOの東方拡大に対して自国の国境を守らなくてはならないし、それと連動してキエフ政権の国家テロの脅威に対して、隣接するドンバス地域の人々の安全をも確保しなければならない。偶然にも、パリとヴォルノヴァハでの2つのテロ事件は、ロシアに対して二正面作戦を迫ることになったのだ。
この前年にはマイダン・クーデターやMH17便墜落事件、ソチ・オリンピックでのロシア・バッシング等、西洋でのロシア悪魔化キャンペーンが激化したことも思い起こしておくべきだろう。
当時の西洋諸国の軍事状況を振り返ってみると、以下の様になる。
・シリアに展開するイスラム武装グループに関するプロパガンダが増加していた。
・NATO加盟国であるカナダと同盟国であるオーストラリアでも、イスラム教徒によるテロ事件が起こっていた。
・米議会は米帝自らの産物に他ならないISISと戦うと云う口実で、8万人の米兵をイラクに送るよう要求していた(本当の理由は東からシリアを侵略する為だ)。
・カナダの戦闘爆撃機部隊が中東に配備されていた。
・シャルリ襲撃事件の丁度前日、フランスの空母が中東に到着していた。
・2015/01/16、数々の国際戦犯法廷で「独裁者の戦争犯罪」を捏造した功績を買われて米国の戦争犯罪問題担当大使に任命されていたスティーブン・ラップが辞任した。彼はその後のインタビューで、アサド大統領を追放しない限り、シリアに平和は訪れないと発言した。
・2015/01/18、イスラエルはイラン革命防衛隊の将軍とヒズボラの戦闘員達を暗殺した。
・2015/01/20、バラク・オバマ米大統領は議会演説で、シリアのISIS掃討と、この取り組みの助けとなる「穏健な反体制派(moderate opposition。実際には中身はISISと地続き)」の支援について発言した。実質的にシリアに対して改めて宣戦布告した訳だ。
これらの全ての展開は、シリアを指し示していた。他方ドンバスでは、ミンスク合意についての新たな話し合いの場が01/21に設けられる予定だった。だが、
・キエフ政権は60歳までの男性の動員を発表した。
・2015/01/07、キエフ政権のアルセニー・ヤツェニュク首相は、ソ連赤軍によるナチスドイツからのウクライナと欧州の解放は、「ロシアの侵略」だと発言した。
・NATOはキエフに武器とアドヴァイザーを送り続けた。
・2015/01/19、ロシアのグリゴリー・カラーシン外相は、ウクライナに問題に対して軍事的解決を図るのは大きな間違い、戦略的に見ても間違いであって、国家としてのウクライナにとって取り返しの付かない結果を齎すことになると警告した。
・2015/01/20、パリ警察はチェチェン出身の5人のロシア男性達を、テロ攻撃を計画していた容疑で逮捕した。
・NATOのファシスト達はロシアと交渉するフリをしながら、ロシア本国への攻撃に備える為の時間稼ぎを行なっていた。
シャルリ襲撃事件が西洋の諜報部によって仕組まれたことを証明する直接的な証拠は無い。だが全てが偶然だと考えるには、NATOにとって余りにも都合の良い状況が揃っていた。事件は西洋の戦争屋共にとって実に恰好のタイミングで起こった。2001年の9.11後、ブッシュ政権(実質的には既にフセイン排除を決定していたPNACのメンバー)が事件を自分達の戦略的目標の為に最大限利用した様に、西洋諸国の指導者達は、襲撃事件を自分達の戦略的目標の為に最大限利用した。
2015/01/07、イスラム教徒に対する差別的な「風刺」で知られていたフランスの週間新聞、シャルリ・エブドが武装グループに襲撃され、12人が死亡した。普段は米軍やNATO軍が肌の黒いイスラム教徒を何十万、何百万と死に追いやっても全く気にしない西欧の政治指導者達が何十人もパリに集まってこれ見よがしに横断幕を掲げて行進し、何百万人もの市民がこの「表現の自由」の侵害に対して抗議の声を上げた。このテロに対しては後にアル=カイダが犯行声明を出した。
襲撃事件から数日後、2015/01/13、ウクライナのドネツク南西に位置するヴォルノヴァハ市の検問所で、民間のバスが爆発して12人が死亡した。だが西洋メディアは連日シャルリの事件を一面で大騒ぎするばかりで、こちらの事件の方には全く反応はなかった。
バスの運転手の証言では、バスの下で地雷が爆発したことが原因だった。キエフ政府は例によって地元の分離主義の武装グループの犯行だと断定し、爆発はグラッド・ミサイルによるものだと主張した。だがOSCE(欧州安全保障協力機構)が調査を行ったところ、爆発と同時に検問所に撃ち込まれたミサイルは、反ファシスト民兵が居た東ではなく、北から発射されたものだと判明した。
パリでの殺人は世界中を震撼させたが、ウクライナでの殺人に対してはキエフ政府の国家テロを非難する声は上がらず、真相究明を求める大規模デモも起こらなかった。西洋諸国が支援するキエフ政府が、ドンバスの民間人、病院、学校、発電所や各種インフラに文字通り毎日砲撃を加えている現実は、西洋では全く無視された。
ここで引っ掛かるのが、そもそもイスラム過激派は西洋の産物だと云うことだ。西洋の諜報部は自分達の次の標的が「道徳的に」劣った存在であることを示す為に、これら過激派を利用して来た歴史が有る。NATO軍や米軍に攻撃される標的は、予め必ず悪者としてプロパガンダ攻撃を受ける。手口は毎回同じで、騙される人は何度でも騙される。そうすることで「邪悪な敵」に対する攻撃は正当化されるか、黙認される。少なくとも市民からの抵抗は無力化される。
シャルリの事件ではイスラム教徒がテロリストとして描かれた。ヴォルノヴァハの事件ではウクライナの分離主義者達がテロリストとして描かれた。構図は同じで、攻撃を正当化する為に、「標的を攻撃しなければならない道徳的な理由が存在する」と云うメッセージが人々の頭に叩き込まれるのだ。
パリでのテロ事件を契機に、テロリストたるイスラム過激派の掃討を名目とした「対テロ作戦」が声高に叫ばれ始めたが、最も過激なイスラム過激派であるISISIが、主にシリアとイラクに展開していたことを考えると、ここから地政学的には非常に興味深い点が浮かび上がって来る。「対テロ作戦」を名目とした西洋諸国の軍事展開は、実質的には無法なシリア侵略に他ならない。そうなるとシリアはロシアの重要な同盟国なので、ロシアはシリアを守る為にアクションを起こさなければならなくなる。それと同時に、ロシアはNATOの東方拡大に対して自国の国境を守らなくてはならないし、それと連動してキエフ政権の国家テロの脅威に対して、隣接するドンバス地域の人々の安全をも確保しなければならない。偶然にも、パリとヴォルノヴァハでの2つのテロ事件は、ロシアに対して二正面作戦を迫ることになったのだ。
この前年にはマイダン・クーデターやMH17便墜落事件、ソチ・オリンピックでのロシア・バッシング等、西洋でのロシア悪魔化キャンペーンが激化したことも思い起こしておくべきだろう。
当時の西洋諸国の軍事状況を振り返ってみると、以下の様になる。
・シリアに展開するイスラム武装グループに関するプロパガンダが増加していた。
・NATO加盟国であるカナダと同盟国であるオーストラリアでも、イスラム教徒によるテロ事件が起こっていた。
・米議会は米帝自らの産物に他ならないISISと戦うと云う口実で、8万人の米兵をイラクに送るよう要求していた(本当の理由は東からシリアを侵略する為だ)。
・カナダの戦闘爆撃機部隊が中東に配備されていた。
・シャルリ襲撃事件の丁度前日、フランスの空母が中東に到着していた。
・2015/01/16、数々の国際戦犯法廷で「独裁者の戦争犯罪」を捏造した功績を買われて米国の戦争犯罪問題担当大使に任命されていたスティーブン・ラップが辞任した。彼はその後のインタビューで、アサド大統領を追放しない限り、シリアに平和は訪れないと発言した。
・2015/01/18、イスラエルはイラン革命防衛隊の将軍とヒズボラの戦闘員達を暗殺した。
・2015/01/20、バラク・オバマ米大統領は議会演説で、シリアのISIS掃討と、この取り組みの助けとなる「穏健な反体制派(moderate opposition。実際には中身はISISと地続き)」の支援について発言した。実質的にシリアに対して改めて宣戦布告した訳だ。
これらの全ての展開は、シリアを指し示していた。他方ドンバスでは、ミンスク合意についての新たな話し合いの場が01/21に設けられる予定だった。だが、
・キエフ政権は60歳までの男性の動員を発表した。
・2015/01/07、キエフ政権のアルセニー・ヤツェニュク首相は、ソ連赤軍によるナチスドイツからのウクライナと欧州の解放は、「ロシアの侵略」だと発言した。
・NATOはキエフに武器とアドヴァイザーを送り続けた。
・2015/01/19、ロシアのグリゴリー・カラーシン外相は、ウクライナに問題に対して軍事的解決を図るのは大きな間違い、戦略的に見ても間違いであって、国家としてのウクライナにとって取り返しの付かない結果を齎すことになると警告した。
・2015/01/20、パリ警察はチェチェン出身の5人のロシア男性達を、テロ攻撃を計画していた容疑で逮捕した。
・NATOのファシスト達はロシアと交渉するフリをしながら、ロシア本国への攻撃に備える為の時間稼ぎを行なっていた。
シャルリ襲撃事件が西洋の諜報部によって仕組まれたことを証明する直接的な証拠は無い。だが全てが偶然だと考えるには、NATOにとって余りにも都合の良い状況が揃っていた。事件は西洋の戦争屋共にとって実に恰好のタイミングで起こった。2001年の9.11後、ブッシュ政権(実質的には既にフセイン排除を決定していたPNACのメンバー)が事件を自分達の戦略的目標の為に最大限利用した様に、西洋諸国の指導者達は、襲撃事件を自分達の戦略的目標の為に最大限利用した。
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