中国は米国の主権侵害に対してソロモン諸島を助けている(要点)
ソロモン諸島に対する内政干渉の現状について、ブライアン・バーレティック氏の解説。
How China is Helping the Solomon Islands Fight Against US Encroachment
2023/02/07、ソロモン諸島のマライタ州内での中国企業の活動を禁止し、ソロモン諸島との曾ての同盟相手であった台湾と緊密な関係を結んでいた州の首相ダニエル・スイダニ首相が、同国の中国との関係強化を批判したと云う理由で議会から追放された。
ソロモン諸島は曾ては台湾の中華民国を承認していた数少ない国のひとつだったが、2019年からは中韓人民共和国こそが中国の正当な政府であると方針を切り替えている。その理由は経済的なもので、同国は中国がやがては米国を抜いて世界一の経済大国になると見ている。
ソロモン諸島の最大の取引相手は中国。中国への輸出は65%で、米国は1%にも満たない。他方、中国からの輸入は32%。ソロモン諸島は中国との取引で多大な利益を上げている。

米国は中国がソロモン諸島を侵害していると主張しているが、実際にはソロモン諸島の国益を無視して自らの中国包囲網に取り込もうと同国に圧力を掛けているのは米国の方だ。
2022年、政府は総選挙を延期したが、野党側はこれを批判。マナセ・ソガヴァレ首相が、選挙に資金を提供すると云うオーストラリアからの申し出を断ったことを取り上げ、これを外国の干渉によるものだと批判した。だがこれは全く矛盾した話で、他国が選挙に資金提供することが「外国の干渉」でなかったとしたら何だと云うのだろう?
ソロモン諸島政府は公共放送であるソロモン諸島放送公社を国有企業から外して商業的自由を与える代わりに、政府が完全に所有し資金提供することにして、メディアに対する権限を強化した。また政府は外国メディアが「反中国感情を広めている」と非難し、中国との関係を巡って政府が「不当に標的にされ」「中傷された」と訴えた。これは米国が同国の国益に反して、メディアを通じて台湾政府を承認するよう圧力を掛け続けていることに対応した措置だ。
西洋諸国は2022年4月に中国がソロモン諸島と安全保障協定を結んだことを非難し、これにより野党が弾圧される、民主主義の危機だ、中国がこの地域に軍事的な足場を作ろうとしている、などと主張している。が、この非難からは文脈が抜け落ちている。
首都ホニアラでは、「民主主義の為のマライタ(Malaita for Democracy/M4D)」と云う米国が支援する組織が暴力的な抗議行動を繰り返し、破壊活動や中国企業の焼き討ち等を行なっているので、治安を強化する必要が有るのだ。M4Dの要求は、台湾政府の再承認だが、M4Dはそのメンバーが最近の暴動で重要な役割を果たしたと云う理由で、違法組織に指定されている。ダニエル・スイダニもまた米国から支援され、資金提供を受けている。
西洋諸国政府は「民主主義を破壊している」としてソロモン諸島政府を非難しているが、実際には非難されている中身は、外国の影響から自国の主権を守ろうとすることだ。
米国は2020年に、分離を求めるマライタ州に2,500万ドルを提供することを約束した。この支援は内閣の承認を素っ飛ばして州に直接送られる為、当然ながら中央政府はこれに抗議し、支援を政治化しないよう求めている。これは2018年に州があらゆる国から受け取った支援額の50倍以上で、ソロモン諸島政府が台湾政府から中華人民共和国政府へ乗り換えてから支援が急増したことは、当然ながらワシントンが中国に対抗する為に、地政学的利益からやっていることなのではないかと云う懸念を生んでいる。M4Dが引き起こしている暴動はマライタ州の分離独立を巡って内戦に発展する可能性が有るので、米国はソロモン諸島に戦争を引き起こすことを躊躇ってはいないと云うことだ。
暴動の後でスイダニは「ソロモン諸島は民主的な価値観を共有している為、台湾と提携すべきだ」とお決まりの文句を述べたが、AP通信が伝えた彼の写真を見ると、堂々と米国務省のフロント組織であるUSAIDのシャツを着ている。彼はUSAIDと行動を共にしている米国のNGO、ワールド・ヴィジョンからも資金提供を受けている。

M4Dは2020年に、米国のカラー革命組織のひとつである国際共和党研究所(IRI)を訪れている。この組織はCIAのフロント組織であるNEDを通じて米国政府から資金提供を受けており、世界中の標的とされた国々の反体制派メディアや野党政治家に資金提供を行なって、情報空間を支配することで選挙を乗っ取って、ワシントンの望む様な結果を導き出すことを仕事としている。この報道はIRIがマライタ州内で学校の指導者の育成、コミュニティ・ガヴァナンス、市民社会のネットワーキングに関連するプログラムに関与しており、住民投票をも支援していことを認めたと伝えている。これが他国による違法な内政干渉でなかったとしたら何なのだろう。
2021年11月にマライタ州で起こった抗議行動は、大抵の抗議行動の様に自分達の生活に関わることについてではなく、ソロモン諸島中央政府がそれまでの台湾承認を翻して中華人民共和国に乗り換えたことに対してのものだった。ロイターの報道は、この暴動がM4Dによって引き起こされたものであることを伝えているが、この暴動によってチャイナタウン区域が破壊され、中国人の民間人達が殺害された。スイダニ首相は中国企業の立ち入りを禁止し、米国からの開発援助を受け入れているので、これはマライタ地方政府の方針とも一致する動きだった。
IRIは暴動の後でマライタを訪れ、2022年に中国の影響力の拡大を警告する報告書にその成果を纏めているが、実際にはソロモン諸島の主権を侵害しているのは米国の方で、中国は寧ろエンパワーメントを行なっている。報告書は州に住む中国人少数派の腐敗について警告しているが、彼等は何世代も前からそこに住んでいる人々であって、別に最近になって中国から移住して来た訳ではないので、これは欧州で「ユダヤ人が全てを操っている!」と主張する様なものだ。米国は少数派差別を煽ってもいる訳だ。
スイダニは公然とマライタ州の独立自治を呼び掛けているが、IRIはこれを支援していることを認めている。この明らかな内政干渉を「民主主義」とか謳っているのだから、彼等の考えに付き合うには、新しい辞書が必要になる。
もうひとつ、この分離主義を煽り立てている偽人権団体 CIVICUS を見てみると、その2021/22年の年次報告書には、西洋諸国政府機関やカラー革命NGOから資金提供を受けていることがはっきりと記載されている。

ソロモン諸島政府はこうした主権侵害の動きに対して抵抗しているのであって、中国が脅かしているのは米国の領土ではなく、米国のこうした他国に対する内政干渉工作だ。他のアジア諸国も多かれ少なかれ同様の選択肢を迫られており、それに応じて中国は益々近隣諸国の主権を守る為に活動することを求められることになるだろう。
米国が他国を政治的に乗っ取る手口の基本パターンは大体決まっているので、例えば冷戦末期から特にこの20年近く、米国がウクライナで何をして来たかを理解しておくことは、今後アジア諸国や世界中で何が起こるかを予測する手助けになる。
How China is Helping the Solomon Islands Fight Against US Encroachment
2023/02/07、ソロモン諸島のマライタ州内での中国企業の活動を禁止し、ソロモン諸島との曾ての同盟相手であった台湾と緊密な関係を結んでいた州の首相ダニエル・スイダニ首相が、同国の中国との関係強化を批判したと云う理由で議会から追放された。
ソロモン諸島は曾ては台湾の中華民国を承認していた数少ない国のひとつだったが、2019年からは中韓人民共和国こそが中国の正当な政府であると方針を切り替えている。その理由は経済的なもので、同国は中国がやがては米国を抜いて世界一の経済大国になると見ている。
ソロモン諸島の最大の取引相手は中国。中国への輸出は65%で、米国は1%にも満たない。他方、中国からの輸入は32%。ソロモン諸島は中国との取引で多大な利益を上げている。

米国は中国がソロモン諸島を侵害していると主張しているが、実際にはソロモン諸島の国益を無視して自らの中国包囲網に取り込もうと同国に圧力を掛けているのは米国の方だ。
2022年、政府は総選挙を延期したが、野党側はこれを批判。マナセ・ソガヴァレ首相が、選挙に資金を提供すると云うオーストラリアからの申し出を断ったことを取り上げ、これを外国の干渉によるものだと批判した。だがこれは全く矛盾した話で、他国が選挙に資金提供することが「外国の干渉」でなかったとしたら何だと云うのだろう?
ソロモン諸島政府は公共放送であるソロモン諸島放送公社を国有企業から外して商業的自由を与える代わりに、政府が完全に所有し資金提供することにして、メディアに対する権限を強化した。また政府は外国メディアが「反中国感情を広めている」と非難し、中国との関係を巡って政府が「不当に標的にされ」「中傷された」と訴えた。これは米国が同国の国益に反して、メディアを通じて台湾政府を承認するよう圧力を掛け続けていることに対応した措置だ。
西洋諸国は2022年4月に中国がソロモン諸島と安全保障協定を結んだことを非難し、これにより野党が弾圧される、民主主義の危機だ、中国がこの地域に軍事的な足場を作ろうとしている、などと主張している。が、この非難からは文脈が抜け落ちている。
首都ホニアラでは、「民主主義の為のマライタ(Malaita for Democracy/M4D)」と云う米国が支援する組織が暴力的な抗議行動を繰り返し、破壊活動や中国企業の焼き討ち等を行なっているので、治安を強化する必要が有るのだ。M4Dの要求は、台湾政府の再承認だが、M4Dはそのメンバーが最近の暴動で重要な役割を果たしたと云う理由で、違法組織に指定されている。ダニエル・スイダニもまた米国から支援され、資金提供を受けている。
西洋諸国政府は「民主主義を破壊している」としてソロモン諸島政府を非難しているが、実際には非難されている中身は、外国の影響から自国の主権を守ろうとすることだ。
米国は2020年に、分離を求めるマライタ州に2,500万ドルを提供することを約束した。この支援は内閣の承認を素っ飛ばして州に直接送られる為、当然ながら中央政府はこれに抗議し、支援を政治化しないよう求めている。これは2018年に州があらゆる国から受け取った支援額の50倍以上で、ソロモン諸島政府が台湾政府から中華人民共和国政府へ乗り換えてから支援が急増したことは、当然ながらワシントンが中国に対抗する為に、地政学的利益からやっていることなのではないかと云う懸念を生んでいる。M4Dが引き起こしている暴動はマライタ州の分離独立を巡って内戦に発展する可能性が有るので、米国はソロモン諸島に戦争を引き起こすことを躊躇ってはいないと云うことだ。
暴動の後でスイダニは「ソロモン諸島は民主的な価値観を共有している為、台湾と提携すべきだ」とお決まりの文句を述べたが、AP通信が伝えた彼の写真を見ると、堂々と米国務省のフロント組織であるUSAIDのシャツを着ている。彼はUSAIDと行動を共にしている米国のNGO、ワールド・ヴィジョンからも資金提供を受けている。

M4Dは2020年に、米国のカラー革命組織のひとつである国際共和党研究所(IRI)を訪れている。この組織はCIAのフロント組織であるNEDを通じて米国政府から資金提供を受けており、世界中の標的とされた国々の反体制派メディアや野党政治家に資金提供を行なって、情報空間を支配することで選挙を乗っ取って、ワシントンの望む様な結果を導き出すことを仕事としている。この報道はIRIがマライタ州内で学校の指導者の育成、コミュニティ・ガヴァナンス、市民社会のネットワーキングに関連するプログラムに関与しており、住民投票をも支援していことを認めたと伝えている。これが他国による違法な内政干渉でなかったとしたら何なのだろう。
2021年11月にマライタ州で起こった抗議行動は、大抵の抗議行動の様に自分達の生活に関わることについてではなく、ソロモン諸島中央政府がそれまでの台湾承認を翻して中華人民共和国に乗り換えたことに対してのものだった。ロイターの報道は、この暴動がM4Dによって引き起こされたものであることを伝えているが、この暴動によってチャイナタウン区域が破壊され、中国人の民間人達が殺害された。スイダニ首相は中国企業の立ち入りを禁止し、米国からの開発援助を受け入れているので、これはマライタ地方政府の方針とも一致する動きだった。
IRIは暴動の後でマライタを訪れ、2022年に中国の影響力の拡大を警告する報告書にその成果を纏めているが、実際にはソロモン諸島の主権を侵害しているのは米国の方で、中国は寧ろエンパワーメントを行なっている。報告書は州に住む中国人少数派の腐敗について警告しているが、彼等は何世代も前からそこに住んでいる人々であって、別に最近になって中国から移住して来た訳ではないので、これは欧州で「ユダヤ人が全てを操っている!」と主張する様なものだ。米国は少数派差別を煽ってもいる訳だ。
スイダニは公然とマライタ州の独立自治を呼び掛けているが、IRIはこれを支援していることを認めている。この明らかな内政干渉を「民主主義」とか謳っているのだから、彼等の考えに付き合うには、新しい辞書が必要になる。
もうひとつ、この分離主義を煽り立てている偽人権団体 CIVICUS を見てみると、その2021/22年の年次報告書には、西洋諸国政府機関やカラー革命NGOから資金提供を受けていることがはっきりと記載されている。

ソロモン諸島政府はこうした主権侵害の動きに対して抵抗しているのであって、中国が脅かしているのは米国の領土ではなく、米国のこうした他国に対する内政干渉工作だ。他のアジア諸国も多かれ少なかれ同様の選択肢を迫られており、それに応じて中国は益々近隣諸国の主権を守る為に活動することを求められることになるだろう。
米国が他国を政治的に乗っ取る手口の基本パターンは大体決まっているので、例えば冷戦末期から特にこの20年近く、米国がウクライナで何をして来たかを理解しておくことは、今後アジア諸国や世界中で何が起こるかを予測する手助けになる。
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