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国際戦犯法廷が公平って本当?(要点と補足)

イラク、シリア、リビア、ウクライナ等、直接間接に数多くの戦争犯罪に関与し、何百万人もの死亡・負傷・難民化に対して責任を負っている世界最悪の犯罪者の一人であるジョー・バイデンが、自分達が引き起こしたウクライナ紛争に於て、軍事的な威嚇に対して対応したに過ぎないロシアのプーチン大統領を「戦争犯罪人」と呼んだ。これは「お前が言うな」案件の最たるものだが、「ルールに基付く秩序」とやらを主張する連中に戦争犯罪やら人道犯罪やらを扱わせると、国際司法の基本原則が悉く破られて法が私物化されて政治的に利用されことを物語る事例として、1990年代のユーゴスラヴィア紛争での戦争犯罪を裁く旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷(ICTY。1993〜2017年)の舞台裏について、国際弁護士であるクリストファー・ブラック氏の著書から該当箇所を抜き出してみた。




 ミロシェヴィッチに対する法廷はNATO諸国(米英仏独)の主導で作られた。国際法廷の設置には通常は関係諸国の間で条約が結ばれねばならないが、米国はこうした国際司法の確立によって自国が裁かれることになることを恐れて、これに反対し続けて来た。だがNATO諸国は1991年のイラク攻撃(湾岸戦争)で決議688を採択させて、人道への懸念は国内問題ではなく国際安全保障に関わる問題であると云う風に定義し直した。国連憲章には元々国内問題としての人道問題についてどう対処すべきかの規定は無い。

 「人権」を口実に安保理決議を迂回する前例を作ったNATO諸国はこれに味を占め、1991〜93年の間に似た様なトリックを使って、自らの政治的目的の為に国際戦犯法廷を利用した。ボスニアでの紛争は内戦であって、これを「国際平和に対する脅威」と見做すべき根拠は皆無だったが、主権国家に対する内政干渉を正当化する為に「人権問題」が捏造された。ユーゴスラヴィアは、主権の原則を侵害する為に擬似司法国際組織を利用した最初の事例だった。当時弱かったロシアと中国は、経済的譲歩の見返りとして、この不法なリンチ裁判を黙認した。



 独立性を保つ為に、法廷の予算は国連の一般財源から組まなければならないと定められているにも関わらず、資金の多くは米国や企業等が出した。1994〜95年には、米国政府は現金で70万ドルと、230万ドル相当の機器を提供した。1999年にアウトリーチ・プロジェクトが発足すると、米国政府は米国平和研究所を通じて、これに50万ドルを提供した。94〜95年にはロックフェラー財団は5万ドル、ジョージ・ソロスのオープン・ソサイエティ財団は15万ドルを提供し、他にはタイム-ワーナーやディスカバリー等の大企業も資金提供した。ソロスの財団は米国が支援する武装犯罪組織であるコソボ解放軍の新聞にも資金提供しているので、歴とした利害関係者だった。

 法廷はまた国際司法連合からも支援を受けているが、これに資金提供しているのはまたしてもソロスのオープン・ソサイエティ財団と、米国の法律家グループが作った CEELI と云う組織で、これは社会主義体制を自由市場で置き換えることを目的としている。ガブリエル・カーク・マクドナルド判事は、この2つの組織から来た多くのスタッフが法廷で働いていることを認めたが、彼女はこの発言を行った時、CEELI とアメリカ法曹協会から賞を受けた。またカーネギー協会はハーグの平和宮図書館の4つの部屋の内3つまでを法廷に貸し出した。

 独立性を保つ為に、法廷はどの国の政府からも距離を置かなくてはならない。だが法廷の高官達は度々米国政府の当局者達や関係者達と並んで記者会見を行い、調査にはNATO諸国を頼っていることを公然と認めた。特にマクドナルド判事は公の場で米国務省長官マデリーン・オルブライトを「法廷の母」と呼んだ。ミロシェヴィッチに対する起訴の決定は、全世界に発表される2日前に、ビル・クリントン米大統領に伝えられた。

 1996年、検察局は欧州連合軍最高司令部(SHAPE)との覚書を交わし、これによりNATOが法廷の支援と被告の移送に責任を持つことになった。つまり法廷の憲兵役を務めたのは国連軍ではなくNATO軍だった。これらの諸事実は、この法廷が国際裁判と言うよりNATOの私的裁判であった性格を浮き彫りにしている。



 他にも、この茶番法廷は実質的にあらゆる通常の法的手続きを破っており、法の支配を真っ向から愚弄する様な違反行為が常態化していた。

 ・判事と検察官が分離されていなかった。判事はあからさまに検察官側に立っていた。
 ・保釈や迅速な裁判を要求する権利が認められなかった(ミロシェヴィッチは病身だったが、そうした事情も考慮されなかった)。
 ・独立した上訴組織が存在しなかった。
 ・被告は同じ犯罪で二度裁かれてはならないと云う司法の原則が無視された。
 ・容疑者は令状無しでも90日間の拘束が可能とされた。
 ・囚人が反証するまでは、自白は全て自由で自発的なものだと見做された(通常は逆。90日間も不当拘束を受けていた間の自白など、普通は有効だと認められない)。
 ・推定無罪の原則が無視され、容疑者は有罪判決を受けた者と同等の扱いで拘禁された。
 ・極秘起訴が度々使用され、容疑者は軍警察が拘束しに来るまで起訴の事実を知らされなかった。
 ・ミロシェヴィッチの拘束に際しては通常の手続きが執られず、彼を騙して国外へ移送した(つまりは拉致誘拐だ)。
 ・収監は外国で行われた為、拘束は同時に国外追放を意味した。
 ・匿名での証言が有効とされた。法廷に出廷しなくても証言出来た。
 ・伝聞に基付く証拠が有効とされた。
 ・ソロスのNGOの様な利害関係者から提出された証拠も有効とされた。
 ・陪審員制度が存在しなかった。
 ・被告は弁護団を選べることになっていたが、実際には記録担当者があれこれ理由を付けて却下することが出来た。
 ・法廷侮辱罪が弁護団を脅迫する為に濫用された。
 ・非公開の聴聞会を定めた曖昧な規則が存在した。つまりこの秘密裁判が可能だった。

 ジョン・ローランドのタイムズの記事の引用では、主任検察官ルイーズ・アルブールはこれらの司法原則の違反に関して、「法は私にとってはクリエイティヴなものでなければならず、物事を正しく行う為に使われなければならないのです」と説明している。

 アルブールは、組織的な犯罪を行った証拠が存在していないにも関わらず、旧ユーゴスラヴィアのスロボダン・ミロシェヴィッチ大統領を起訴した見返りとして、カナダの最高裁判所判事、国連人権高等弁務官、CIAと繋がる国際危機グループのCEOと云う非常に儲かる地位を与えられた。彼女はそれ以前のルワンダの国際戦犯法廷でも主任検察官を務めたが、この時ルワンダのジュベナール・ハビャリマナ大統領とブルンジのシプリアン・ンタリャミラ大統領を暗殺したのは、公式の物語が主張する様にフツ族の「過激派」ではなく、米国が支援するツチ族のルワンダ愛国戦線(RPF)であることを示す証拠を握り潰した。



 法廷は戦争犯罪と人道に対する罪にだけ焦点を当てたが、ニュルンベルク法に於て最も重要な「平和に対する罪」は不問に付された。これを言い出すとNATO諸国の方が被告席に着かねばならないからだ。

 1999年のNATOによるユーゴスラヴィア爆撃は、国連安保理の承認無しに行われた国際法違反行為であり、他国の主権の侵害だ。それは他国には関係の無い内戦についての「人道的懸念」を理由に行われたものだが、それは人道問題を解決するどころか、それ自体が人道的災害を引き起こした。そしてNATOは紛争を解決する為に和解策を交渉するのではなく、爆撃と云う暴力的な解決法を選択した。これもまた国連憲章違反だ。

 NATOは軍事目標の攻撃だけでは効果的ではなかったので、ビル・クリントン米大統領の言葉を借りれば「(セルビア軍を)支えている経済的装置を破壊すること」に方針を転換した。つまり、あらゆる種類の工場、発電所、水道や下水処理上、あらゆる輸送機関、公的機関の建物、学校や病院を爆撃した。言うまでもなくこれは戦争犯罪だ。「軍を支える税金を払っている」とか「放っておけば何時か兵士になるかも知れない」と云う理由を持ち出し始めたら、あらゆる民間目標をも攻撃しても良いことになってしまうが、民間人を攻撃することは、ニュルンベルクの原則によって厳に禁じられている。

 1995年8月の嵐作戦についての150ページに及ぶ報告書は、セルビアの民間人に対するクロアチア武装勢力の「広範囲で組織的な」殺害や非人道的犯罪の数々を指摘していたが、米国はクロアチアを擁護したのみならず、この犯罪を更に裏付ける衛星写真等の情報の提出を拒否した。法廷はクロアチアの将軍達を一人も起訴せず、セルビア側の指導者達だけを起訴した。

 カルラ・デル・ポンテ検事は、「検察局の主たる焦点は、既に起訴されたユーゴスラヴィア連邦共和国とセルビアの5人の指導者達の調査と起訴でなくてはならない」と発言した。何故NATOの犯罪は除外せねばならないのか、また既に起訴されているのであれば立件するに足るだけの十分な調査が行われていなければならない筈だが、何故今更調査が必要とされるのかについては、一切説明は無かった。

 ブラック氏を含むカナダ、中南米、スペイン、ノルウェー、ギリシャ、英国、米国の弁護士グループは、NATOの戦争犯罪を取り上げることを要求したが、これは実質的に黙殺された。米国のクリントン大統領、英国のブレア首相、ドイツのシュレーダー首相、フランスのシラク大統領、カナダのクレティエン首相を被告席に着かせる試みは全く実を結ばなかった。



 国際司法組織がこの様に私物化され、政治的目的の為に加害者が被害者を告発すると云う転倒した異常な状況が発生した事例は他にも幾つも有る。ユーゴスラヴィアのミロシェヴィッチ大統領以外の無実の罪を着せられた犠牲者達は以下の通り:
 
 ・リビアのカダフィ大佐(人権侵害を捏造されNATO軍による爆撃の最中にリンチで殺害される)。
 ・リベリアのチャールズ・テイラー大統領(犯罪行為の証拠無し)。
 ・ルワンダのジャン・カンバンダ首相(裁判無しで終身刑を言い渡される)。
 ・コートジボワールのローラン・バグボ大統領(証拠無しで3年間も拘束される)。
 ・スーダンのオマール・アル=バシール大統領(ICCは逮捕状を発行したが、スーダンはICCの締約国ではない)。
 ・ケニアのウフル・ケニヤッタ大統領(彼を訴える証拠が無いことをICCが認めているので保留中)。
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