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西パプア独立運動は自分達の声に耳を傾けさせる(要点)

西パプア独立運動の現状についての解説記事の要点。
The West Papua Independence Movement is Making Itself Heard



 2023/02/08、インドネシアの航空会社 Susi Air の飛行機が、ニューギニア島のインドネシア側に位置する山岳パプア州に着陸。乗客6人とパイロットは、西パプアのインドネシアからの独立を主張する過激派組織「西パプア民族解放軍」のメンバーによって人質に取られ、飛行機は燃やされた。乗客は直ぐに解放されたが、パイロットだけは人質で、反政府組織はインドネシア当局が西パプア全体、つまりニューギニア島のインドネシア部分全体の独立を認めた場合にのみ人質を釈放すると声明を出した。


 平和的な方法で独立を求める西パプア統一解放運動はこの人質事件に抗議したが、パプア人の間では民族解放軍の方が人気が有る(パプア社会では力と武力を重んじる)。

 植民地時代以前、パプア人はニューギニア島で他の文明と接触せずに生活し、伝統的な生活様式を送っていた。他方、、脱植民地化の一環として1945年に独立したインドネシアは、オランダからニューギニア島の西部を受け継いだ。歴史的に、パプア人とインドネシア人を結び付けるものは存在せず、パプア人は1963年から独立運動を始めたが、団結した組織を作って国際社会に訴えることは出来なかった。

 西パプアの多くの先住民はインドネシア人を侵略者であり占領者と見做している。また西パプアはインドネシアの他の地域と比べて非常に貧しい。但しその土壌には非常に豊富な鉱物資源が眠っている為、インドネシア政府は撤退したくない。だが先住民の方でも過激な手段によって外国人を追い出す用意が出来ているので、エネルギー企業も迂闊には開発を進められない。

 多民族・多宗教国家であるインドネシアは領土の一体性を保つ為に苦労しているが、インドネシア語は国内で唯一の公用語に留まっている。政府は地元勢力の力を殺ぐ為に、同じ民族の代表者が集中して住んでいる地域を分割したが、特に「西パプア」と総称されるインドネシアに属するニューギニアの一部は、実際には5つの州に分かれている。

 米国や中国の様な大国はこの点について強い声明を出さず、インドネシアの領土保全を擁護しようとしている。これはひとつにはインドネシアが経済大国であり有利な貿易相手国であるからで、分離独立問題でジャカルタの機嫌を損ねるのが怖いのだ。もうひとつの理由は西パプアが貧しい為に、仮に独立したとしても、国を機能させ市民の生活水準を維持し天然資源を抽出する為には、外部から多大な補助金と投資が必要になるからだ。

 ニューギニア島の東半分はパプアニューギニアとして独立した国家を形成しているが、隣の西パプアのパプア人達が自分達の国を作ろうとする動きを支援していない。これは西パプアの犯罪率が高く、外交的にどう転ぶか解らない為だ。パプアニューギニア当局にとっては、不安定な独立した西パプアよりも、比較的繁栄しているインドネシアと共通の国境を持つ方が有益だ。

 以上のことから、西パプアの独立は近い将来には起こりそうにない。国際社会の関心も薄く、独立運動の指導者達の間にも必要な団結が見られない。武力による権力奪取の可能性も無い訳ではないが、外国から政治的・物質的支援を得られれば別かも知れないが、現状では彼等には十分に武装し、よく訓練されたインドネシア正規軍に対して独立を守る能力はない。
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川流桃桜

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