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カンボジアの歪められた歴史。「クメール・ルージュのジェノサイド」に関するワシントンの解釈を促進する(要点)

故アンドレ・ヴルチェク氏の2017年の記事。
Cambodia’s Twisted History. Promoting Washington’s Interpretation of the “Khmer Rouge Genocide”



 カンボジアでは米軍の爆撃によって公式には170万人が殺害されたと云うことになっている。にも関わらず、カンボジアの書店には、公式の西洋のプロパガンダの物語(クメール・ルージュのジェノサイド等)を支持する反共主義の本が溢れている。他方、田園地帯への米軍の絨毯爆撃や不発弾の被害、難民や餓死者についての本は置いていない。書店員はあからさまにその話をしたがらなかった。

 ヴルチェク氏を典型的な西洋人だと思って、「中国やロシアの地雷」が埋められた地雷原を案内した運転手は、「クメール・ルージュは駄目だ」と言った。シェリムアップの街には大した産業は無く、「中国やヴェトナムから輸入した方が安い」と彼は言った。2010年の時点では、仕事の50%以上が観光産業関連だ。街は完全に西洋に依存しており、アンコール・ワット目当ての何百万人もの観光客もそうだが、西洋の「専門家」達は地元の人々にコミュニティの運営方法・考え方・現在と過去の認識方法を伝えている。そして教師・ジャーナリスト・アーティストの殆どは、言えと言われたことを繰り返しているだけだ。


 ヴルチェク氏はに20年以上、カンボジアの略全土をカヴァーしてあらゆる隅々を訪れ、犠牲者達や元クメール・ルージュの兵士達、更にはポル・ポトの個人的な護衛達とも話をしたことが有る。だからカンボジアについて西洋で語られていることが全くの捏造であると解っている。

 2014年、彼の同僚で著名な国際弁護士であるクリストファー・ブラック氏はこう語った。「国連が支援するクメール・ルージュ指導者達の戦争犯罪裁判は、またしても共産主義者を悪魔化し、彼等を米国のカンボジア爆撃によって殺害された数百万人の為にスケープゴートとすることを目的とした見せ物裁判です。」

 タ・モク(ポル・ポト派の元右腕で、後にクメール・ルージュ運動を分裂させた)の護衛だった男性は、クメール・ルージュによる「共産主義者の虐殺」に関するプロパガンダが全くナンセンスであると証言した。彼はイデオロギーについては大して知らなかったが、アメリカ人に対しては非常に怒っていた。彼やその友人達はアメリカ人、特にプノンペンでの傀儡独裁者ロン・ノルの腐敗と戦う為に、クメール・ルージュに参加した。クメール・ルージュ治世時代に殺害が行われたのは事実で、所謂「キリング・フィールド」では20,000の墓が発見されている。だが米軍の爆撃と飢餓による死者数は桁が違う。B-52爆撃機の方が遙かに多くの人々の命を奪った。

 1978 年末にヴェトナムがクメール・ルージュをプノンペンから追放した後、「S-21」拷問センターは、ヴェトナム人と東ドイツ人(アウシュヴィッツ博物館設立経験を持つ)によって「ジェノサイド博物館」に変えられた。そこの元囚人で画家でもあったヴァン・ナスは、そこに展示されている悍ましい拷問の様子を描いた絵画の幾つかを提供しているが、その彼さえ、クメール・ルージュが統治中に殺害したのは約20万人を殺害したと主張している(この主張は彼の著書でも繰り返されている)。

 クメール人の生存者の殆どは、殺害の原因が共産主義やプノンペンからの直接の殺害命令ではないことに同意している。地方の将校達や地元の幹部達が暴走し、米軍の爆撃と、ロン・ノルの腐敗して野蛮な親西洋独裁政権を支持したことに関して、強制送還された都市居住者と「エリート」層への報復を行ったのが原因だ。

 犠牲者と加害者、双方の証言が、西洋の公式の説明が完全に誤っていることを裏付けている。が、ヴルチェク氏は、公式の物語が一般大衆のみを対象としていることに気が付いた。匿名の或るEU高官は、クメール・ルージュが100万人以上のカンボジア人を殺したと云う主張を「不可能だ!」と断じた。確かに、1969〜1978年に100万〜200万人が死亡したが、それには米国の絨毯爆撃による50万人以上が含まれており、殆どの人は飢餓と病気が原因で亡くなった。虐殺の動機は共産主義イデオロギーではなく復讐心だ。米軍の爆撃と独裁傀儡政権は人々を分断させていた。爆撃は地方に行われたが、その不幸と恐怖を耐え忍んだ地方人は、外国人に協力した都会人を憎んでいた。そしてクメール・ルージュの兵士達や幹部達の殆どは地方出身者だった。

 ヴェトナムがカンボジアをクメール・ルージュから解放した後、西洋諸国、特に米国はポル・ポトとその一派を支持し続け、国連に対して「正当な政府の即時返還」を要求した。米国は共産主義且つ親ソ連のヴェトナムが地域の大国になるのを防ぐ為なら、残忍で腐敗したファシスト政府をも平然と支持した。この結果、少なくとも150万人のカンボジア人が死亡したが、これは共産主義などではなく、本物の左翼が権力を握るのを阻止する為の米国の反共十字軍の結果だ。このテロ政策は世界中、特にアジアとラテンアメリカで、既に数千万人を殺している。


 「クメール・ルージュのジェノサイド」に対するワシントンの解釈を広めることは素晴らしいビジネスだが、米国とその同盟諸国がカンボジアや東南アジアや北アジア全体で犯した真のジェノサイドを暴露することは、一文にもならない。それどころかキャリアを台無しにしたり、失業したりするかも知れない。

 西洋向けの大衆ツーリズムは、身の毛がよだつような話やジェノサイド記念碑を用意して観光客を待っている。何千人もの意欲的な「ガイド」達が、有料で事前に承認された物語の詳細を提供してくれる。だが真実は、記念機や博物館からは遠く離れた所に、密林やつつましやかな村、ヴェトナムとの国境近くに隠れている。そこでは、人々は知っていて、覚えていて、喜んで話をする。だが最近は、彼等に耳を傾けたがる人は誰も居ない様だ。
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川流桃桜

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