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イラクの計画された破壊と政治的分裂。オバマが始めた「米国の第三次対イラク戦争」(要点と補足)

チョスドフスキー教授の記事の要点を、多少補足しつつ纏めてみた。第二次イラク戦争がどれだけの被害を齎したのか正確に知ることは不可能だが、反戦団体コードピンクは2018年までで240万人(最小150万から最大340万まで)が死亡したと推定している。お忘れの方も多い様だが、ジョー・バイデンはこの残虐非道な大量殺戮を熱心に唱導した一人であり、紛れも無く戦犯の一人。そして彼は違法な米占領軍が表向きイラクから撤退した後でも、イラクの人々に対する新たな戦争の準備を進めている。第一次イラク戦争(湾岸戦争)と第二次イラク戦争については知っている人も多いだろうが、この記事ではチョスドフスキー氏が「第三次イラク戦争」と位置付ける「対テロ作戦」の展開について解説している。
The Engineered Destruction and Political Fragmentation of Iraq. “America’s Third War against Iraq” initiated by Obama
 



 2014年6月、米国諜報機関の資産であるISIS(イスラム国)が、トヨタのコンボイに乗って、人口100万を超えるイラク第2の都市、モスルに派遣された。ISISが本当に米国の敵であるなら、このコンボイに対して爆撃を行えば簡単に全滅させられた筈だが、米軍は手を出さずに静観した。


 ISISはたった1,000人で、対してモスルのイラク正規軍は30,000人も居たにも関わらず、2011年に米軍か指揮を引き継いでいたメフディ・サビ・アル=ガラウィ将軍は米軍から指示を受け、指揮を放棄して街を去った。その他の将軍達もまた、御丁寧にISISにモスルを「引き渡した」。その結果、「たった一発の銃弾すら発射されずに」モスルはISISの手に落ちた(西洋大手メディアでは自発的な大量脱走が原因だと主張されたが、その主張の根拠は提示されなかった)。

 2ヶ月後、2014年8月、オバマ米大統領はモスルを占領するISISに対して「対テロ作戦」を開始した。この「テロリスト」なるものは、米、英、トルコ、サウジ、UAE、イスラエル等から資金提供を受けている。つまりこれは自作自演による偽装した侵略戦争だったのだ。


 米国の最終目標は国民国家としてのイラクを破壊し、不安定化すると共に、イラク国内の抵抗勢力を一掃することだった。この目的は概ね達成された。

 ISISは米国と西洋諸国の「敵」ではない。ISISは西洋の諜報機関によって作られ、CIAとモサドから武器・物流・資金の支援を受け、サウジやカタール、UAE等から資金提供されている。

 所謂「イスラム過激派テロ組織」なるものは、アフガニスタンでのサイクロン作戦以降、ずっとCIAの重要な資産であって、地元で自然発生的に形成されたものではない。アル=カイダの反乱軍は、イラクには2003年の侵攻以前には存在していなかった。同様にシリアでも、2011年に米国・NATO・イスラエルが支援する反乱が起こるまでは存在していなかった。

 彼等が罪の無い民間人を残虐に殺害するのは、それによって米軍の軍事介入を正当化する為だ。イラン=イラク戦争に於てイランとイラク双方を支援し、且つイラクとの武器取引で得た金をニカラグアの武装勢力コントラに流していた様に、米国政府はイラク政府軍とISIS反政府勢力、双方を支援している。これによって、イラクで介入が必要な「内戦」が起きているので政府を支援しなければならないと云う口実を作り出しているのだ。

 プロパガンダによって西洋の人々はイラクの問題はシーア派とスンニ派の対立だと信じ込まされているが、シーア派のイラク政府も、スンニ派のISISも、両方が米国とNATOから支援を受けている。

 イラク正規軍には、民間警備会社の工作員を含む米軍顧問と特殊部隊が協力していたが、ISIS内部にも(CIAか米国防総省との契約に基付いて)西洋の特殊部隊や傭兵が居て、米-NATOと連絡を取り合っている。

 ISISは「イラクとシリアのイスラム国」の略称だが、同じ組織がシリアの不安定化工作でも使われて来た。だが2015年にロシア軍がシリア政府の正式な要請を受けて合法的にシリア軍を支援し、ISISとアル=ヌスラ戦線を撃退することに成功すると、新たな戦略が採用された。弱体化したシリアのテロ組織を、イラクからの新たなテロ組織によって「置き換える」のだ。これが所謂「モスルの解放(2017年6〜7月)」の舞台裏だ。

 元々は2016年に予定されていた作戦だったが、これは翌年に延期された。ワシントンはISIS(この時点で9,000人)がシリアに行くことを条件に、彼等の脱出と「移送」を保証すると約束した。つまりイラクでの「対テロ作戦」が終わる代わりに、シリアでの侵略作戦が強化されたのだ。

 ISISの存在は、イラクとシリア両国を、スンニ派イスラム教カリフ制、アラブ・シーア共和国、クルディスタン共和国の3つの領域に分割すると云う米国の長年の構想と一致している。中東に於ける宗派対立は、この野望に基付いて意図的に助長されている。
The Project for the New Middle East

 イラクとシリアの再分割構想には似た様な前例が有る。ユーゴスラヴィア連邦は同じくイスラム過激派を利用したハイブリッド不安定化工作の対象となり、NATOの違法な爆撃を受けた挙句、7つの「独立国家」(セルビア、クロアチア、ボスニア・ ヘルツェゴビナ、マケドニア、スロベニア、モンテネグロ、コソボ)に分割された。コソボには欧州最大の米軍基地が建設された。

 皮肉なことに、スンニ派の抵抗勢力は、シーア派のイラク政府に軍事支援を行なっているイランを、米国と並ぶ侵略者として見ている。

 イラクとシリア、そしてイランを標的とするこの米国の侵略構想は、中東でより広範な紛争を引き起こす可能性が有る。
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川流桃桜

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